『女たちの21世紀』編集部・濱田すみれさんインタビュー

好きな人の「プロ彼女」なって楽しい? 『女たちの21世紀』編集者が語る、NOと言える重要性

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好きな人の「プロ彼女」なって楽しい? 『女たちの21世紀』編集者が語る、NOと言える重要性

『女たちの21世紀』編集者が語る女性論

濱田すみれさん


>>【前編はこちら】「女性が輝ける社会」に女性はイラッとしている 日本の”男女平等”への違和感

フェミニズムに吹く逆風 国際会議は「開けないし、開かない」

――1995年に「北京会議」が大々的に開催され、女性の人権について何か良い方向に変わっていきそうな空気があったというのに、20年経った今の日本で、それが実行力を持っているのかと考えると無力感もおぼえてしまいそうですが……。

濱田すみれさん(以下、濱田):世界的にもフェミニズムは現在、新自由主義や歴史修正主義などの台頭によって激しい「バックラッシュ」(※)にさらされています。北京会議以降20年間にわたり、この規模の世界的な女性会議は開催されていません。というのも、この状況下で仮に開いたとしても、北京宣言で採択されたものよりもずっと後退したものに更新される危険性があるからです。世界各国からたくさんの女性が集まり、人権について語り合ったということへの憧憬はありますが、現実的には「開けないし、開かない」という状況があるのです。

(※)フェミニズムへの反対運動・勢力を意味する。スーザン・ファルーディの著書『バックラッシュ/逆襲される女たち(原著:”Backlash: The Undeclared War Against American Women”)』(1992年)で用いられたことにより一般に広まる。

20年前はバブルの余韻もいくらかあったのかもしれません。女性も今より時間とお金の余裕があった部分もあるでしょう。現在、女性運動が少なくなってきているのは世界的なバックラッシュの影響もありますが、日本国内の女性たちの置かれている状況がかなり切実なものになってきている面も多いと思います。精神的にも疲れている女性たちが増えている中で、女性運動をするような元気はなかなか出てこないのかもしれません。

体制はガラッとは変わらない だからその都度「NO」を唱えて

――日常生活で「これって女性差別じゃないかな?」と感じることがあっても、それに真っ向から異議を唱えるというよりも、呆れてものが言えないというような態度をとってやり過ごしているような気がします。

濱田:フェミニズムの視点から、その気持ちを言語化していかなければと強く思っています。ただ、体制というのはガラッと変わるということはないんです。じわじわと慣れさせながら変わっていくんですね。派遣法もそうですが、気づけば正社員になる道がなくなっていたり、気づけばずっと低賃金で給料が上がらないループに陥っていたり。

だから、何か違和感を持った場合、それをそのままにしていたらすでに手遅れになってしまっていたりする。ジェンダーの問題においても気づいたときにすぐに声をあげることがすごく重要です。

――自宅に帰って、あのときなんで不快な気持ちを伝えられなかったのだろうと「モヤモヤ」していたのでは遅いのですね。

濱田:諦めずに、その場でどんどん言った方がいいと思います。瞬発力は本当に大事ですね。私はフェミニズムを学び始めてから瞬発力がついたという実感があります。セクハラもそうですが、目の前で誰かがセクハラ発言をしたらすぐ「それおかしいよ」ってすぐ言わなきゃ気づいてもらえない。その伝え方はいろいろですが、黙っていては何も変わらないと思うのです。「NO」と言うことはとても勇気がいることですし、慣れないとなかなか難しいかも知れません。でも日常の中で「おかしい」と感じたことがあれば、その気持ちを口にしていくこと。そんなことが私たち自身のエンパワーメントに繋がる気がします。

「モテテク」や「プロ彼女」に対する違和感を大事に

――濱田さんもフェミニズムと出会う前は、モヤモヤすることがありましたか?

濱田:10代の頃とかって恋愛についてすごく考えたりしますよね。男性を立てなきゃいけないのかな、女はいつでも笑顔でいなきゃいけないのかな、と思うようなときもあったけれど、自分は嫌だな、違うなと感じて悩む時期がありました。それがフェミニズムと出会って、「嫌なものは嫌」って言っていいんだということに気づいたんです。本当に嫌だったら「さよなら」でいいんだって、性別は関係なく1人の人間として柔軟に生きることの自由を知りました。

ティーン向けの雑誌に、女の子は「天然っぽい方がモテる」とか「聞き上手がいい」などと書かれていたのを覚えています。今思えばすごく嫌だったのに、やっぱりこういうことしないといけないのかなという葛藤がありました。こういう「モテテク」ってきっといまだにありますよね?

――最近だと、人気男性芸能人を射止めた彼女を指して「プロ彼女」という言葉があります。

濱田:その報道後にファッション雑誌で目にした「プロ彼女」と「普通の彼女」を比較した記事にはびっくりしたのと同時に、おかしくて笑ってしまいました。デートのとき普通の彼女は一緒に歩くけど、プロ彼女は一歩下がって歩くとか。ホームパーティをしたときに、普通の彼女はみんなと乾杯して一緒にお酒を楽しむけれど、プロ彼女はずっとキッチンにいるんですって。

――素敵な恋人をゲットするにはここまでするというようなユーモアもあるのでしょうが、ひと昔前に戻ってしまったというような印象がありますね。

濱田:プロ彼女と言われている女性たちが実際にそういう風にしているとは決して思いませんが、やっぱり仲の良い人とは一緒に並んでおしゃべりしながら歩いたり、友達とも一緒にお酒を飲んだりした方が交友関係も広がるし、人との関係性がもっと良いものになると思います。「プロ彼女」的に行動して好みの人と仲良くなれたとしても、それから楽しい時間が過ごせるのか疑問です。もっともっと自分を大事にしてほしいと思うんです。

フェミニズムを「嫌なことを嫌だと言っていい思想」と表現した濱田さん。この考え方を知って、すごく心が軽くなったという。また、日常生活に潜むジェンダーの問題について違和感を持つ、「隠れフェミニスト」は潜在的にたくさんいるのではないかとも指摘した。


締めくくりとして、北京会議を象徴したとされる言葉「エンパワーメント」について、同会議に参加したことを契機にフェアトレードショップを起業した長谷川輝美さんの言葉を引用する。

“エンパワーメントとは、自分にない力を外側からつけるものではなくて、さまざまな人とのかかわりのなかで、自分の内なる力を認識して発揮していくことだと思うようになりました(2015年3月発行『女たちの21世紀』、「女性のエンパワーメントのためにできること―私の生き方を変えた北京会議」より)”

世界的な観点から、まだまだジェンダー意識が高いとはいえない日本。日々の多くの人との関わりのなかで、「男女不平等」と感じる場面に出くわすこともあるだろう。それでも諦めることはなく「嫌なことは嫌」と伝えていくこと、また伝えやすい環境をつくっていくことから「女性が輝ける社会」は始まるのかもしれない。

(皆本類) 編集協力プレスラボ

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