女性が働きつづけることのメリットとは

白河桃子さん

安倍内閣が掲げる成長戦略の中核である“女性の活躍支援”。「女性が輝く日本をつくる」というスローガンのもと、女性管理職の増加、待機児童の解消、復職支援などにまつわる取り組みが展開されており、出産後も女性が仕事を続けられる社会にしていこうという動きが加速しています。

一方で、結婚や出産を機に家庭に入ることを希望する女性も、まだまだ少なくありません。そうした志向の女性たちに「これからの時代、専業主婦という選択にはリスクしかない」と警鐘を鳴らすのは、ジャーナリストの白河桃子さん。『専業主婦になりたい女たち』 (ポプラ新書)の著者である白河さんに、現代日本を生きる女性の結婚観や子育て観、仕事観などについて伺いました。

核家族、古い家族観が働きたい女性を縛っている

――いま日本でも、仕事で活躍している女性が増えていて、育児中のママだけど、バリキャリ(バリバリのキャリアウーマンの略)という例も少なくありません。

白河桃子さん(以下、白河):じつは、女性の活躍と出生率の高さは相関関係にあるんです。仕事と子育ての両立度が高いと出生率も高まるというデータもあります。日本は先進国のなかでも両方とも低く危機的状況ですよね。そのため、女性が働くことは社会にますます望まれていくと思います。

ちなみに、日本で共働きが多く出生率もいいのが福井県。しかも女性の正社員率も高いんです。福井は昔から共働きをすることが当たり前で、3世代同居率も高く、家事をやるのはおばあちゃんで、お嫁さんは外で働くという風潮があります。ただ、男性は家事育児にあまり積極的ではないので、男性が育児をしない福井スタイルが、核家族のあり方としてこれからメジャーになるかというと難しいかもしれません。

――サポートしてくれる人が周りに夫以外いない場合、仕事と子育ての両立をしんどく感じると出産を機に仕事をやめる選択をせざるをえないという女性も多いような気がします。

白河:日本人女性の場合、“仕事が何よりも大事”という価値観、それから“子育ては尊いものですべてを犠牲にしなくてはいけない”という価値観、この両極端な価値観のどちらかに寄ってしまいがちですよね。どちらも“滅私奉公”の考え方で、「お母さん」であれば子供のために、「キャリアウーマン」であれば会社のために自分をなくして尽くす。そうした極端な価値観に縛られてしまい、結局出産して思うように働けなくて、会社に貢献できない、いままでのようなパフォーマンスができないというストレスが生じてしまいます。

ママ向きとされるような、のんびりした雰囲気の部署に異動しても、それまでの仕事内容と比べると全然つまらないという不満も生まれる。「やりがいのない仕事をするために、子供を保育園に預けてまで私は何をしているのだろう」という思考にはまってしまいます。やりがいを感じながらバリバリ仕事をしていた人ほど、そうした思考に陥りがちで、仕事を諦めるケースが多いですね。

やりがい主義が0か100の選択を生む

――やりがいが感じられなくなったとき、子育てと天秤にかけて仕事をやめることが多いということでしょうか?

白河:そうだと思います。ただ、はっきりいって楽しくてやりがいのある仕事についている人はそんなにいないんですよね。だからといって専業主婦になりたいとみんなが思うわけではない。でもそうした、ゼロか100かの選択をしがちなのは、バリバリ仕事をしていた女性かもしれません。

根底には“やりがい主義”みたいなのがあるんですね。大学でキャリア教育というのがスタートしてだいぶ経つんですけど、「自分の適性を見極めて好きなことを仕事にしよう」と教育されているんです。だけど、生まれてから20年くらいの人間が、その選択をできるのかというと疑問なんですよね。

個人的には、学生のうちに見つからなくても良いし、自己分析とかやりすぎと思うんですが、やっぱり仕事における“やりがい主義”が蔓延しているのは事実ですよね。自分の食い扶持を自分で稼ぐことが尊いという価値観もあっていいと思います。

働くために「選択的未婚」「寿転職」という選択肢

――最近は大学でもキャリア形成や結婚にまつわる教育を授業に取り入れるケースが増えているようですが、どんな意識の学生が多いでしょうか?

白河:女子学生にアンケートをとると非常にシビアな考え方の持ち主が多いことが分かります。少数派ではありますが、最近出てきたのが未婚という選択を現実的に考えているパターン。稼げない男性と協力して家庭を築くなら未婚でいいという、リスクを感じる女子学生ほどこういう発想になるようですね。

――経済的な事情がネックで、女性が家庭を築くことに前向きになれないというのは複雑な状況ですよね。

白河:私としては、ライフイベントにあわせて仕事や働き方を選べるような人材を目指して欲しいです。最近、結婚と同時に転職する「寿転職」を選択する女性が目立ちますが、やはりこの職場では自分が望むワークライフバランスは達成できないなと思うのでしょう。30歳過ぎに出産して働いている先輩とか見ていても、いいイメージを持てない。そういう人は理想の働き方をイメージできるところに転職していくんですよね。

子育ても仕事も頑張りたいという女性に人気なのは、労働時間はゆるくなくても実力さえあれば在宅勤務ができたりという企業ですね。

――結婚を機に専業主婦として新たな人生をスタートさせたいと思っている人も一定数いると思います。

白河:そういう人は仕事が嫌いな人がほとんどですね。「仕事」「今の職場」「働くこと」どれかが嫌いで早く辞めたいと思っていると、リセットしたくなるものです。そのリセットボタンを転職ではなくて、結婚で押せる気になってしまうわけです。

ただ、結婚すれば大丈夫というようなリセットはもう通用しない時代です。なので、とにかくなんらかの形でお金を稼いでいくことは、自分自身のリスクヘッジになるんです。

働く前提のもとに、選択肢が広がっていく時代

――専業主婦という選択ではなく、働きつづけることは女性にとってどんなメリットがあるのでしょうか?

白河:働くことによって、選択の幅が広がる、それが一番の魅力ではないでしょうか。よく「女性にはいろんな選択があっていいよね」といわれますが、それはちょっと間違いかなと思っています。これからの時代、働かないという選択はかなりのセレブな奥様以外はありえないだろうなと。ただ、働き方の選択は多様になっていくと思っています。とくに出産後の女性の働き方は、ますます多様な広がりをみせていくでしょう。

日本は男の人並みに女性がバリバリ働くということに、失敗したんですよね。そんなにバリバリ働かなくても、もっといろんな働き方があってもいいよねと、価値観が多様化したのが今の時代だと思います。

――さまざまな仕事があるのは都心部だけで、地方では仕事の幅が狭まってしまいそうなイメージがあるのですが、いかがでしょうか?

白河:地方に限らずですが、多様な働き方の用意がまだ不十分ではありますよね。先日、東京から1時間弱の田園風景が広がる郊外で開催された、男女参画フェアで講演させていただいたんですが、プチ起業しているママのたちのブースも出店されていました。最初18ブース募集したら、40通を超える出店希望がきたそうです。オーガニックの食べ物やママ向けコーチングまで内容も多岐に渡っていました。この熱気はすごいな~と感心しました。

しかし、そうなる背景には雇用環境の問題があると思います。彼女たちが東京に働きにいけるかというと、交通費なしの非正規雇用だとはっきり言って赤字。いまいるこのエリアのなかで何かやるしかない、雇用がなければやはり自分たちで何かはじめて稼いでいくしかないと考えるわけです。

正解がない時代は行動するしかない

――自ら仕事を創出するというのは簡単ではなさそうですが、たくましさを感じますね。

白河:最近よく思うんですけど、今はすべてにおいて「これが正しい」って言い切れない、正解がない時代なんですよね。だけど悩みは多い。しかも男性に比べると女性の方が、仕事のこともプライベートもしっかり考える傾向にあって、学生の頃から「いくつくらいで子どもを産みたくて、仕事はこうしたくて」と色々考えるだけに、悩みも深くなってしまうのだと思います。

いろいろな悩みを抱えたときに、そこで思考停止になるのではなく行動できるかどうかなんですよね。正解のない時代に前を向く、不安だからこそ行動できるという人はすごくいいなと思います。いろんな人に会って、つながって、悩みをシェアしながら自分なりの答えを見つけていく。正解のない時代に前を向くために動く強さを身につけてもらいたいですね。

●白河桃子(しらかわ・とうこ)
東京都生まれ。慶應大学文学部卒。少子化ジャーナリスト、作家、相模女子大学客員教授。内閣府「新たな少子化社会政策大綱」有識者委員。山田昌弘中央大教授とともに「婚活」を提唱。

末吉陽子

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