身近な誰かの心が折れそうなとき、あなた自身にできること 映画『きみはいい子』で考える

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身近な誰かの心が折れそうなとき、あなた自身にできること 映画『きみはいい子』で考える

子どもを虐待してしまう母親がすべきこと

はりきって仕事に取り組んでもうまくいかなくて空回り、上司のパワハラに怒り心頭! なんてこと、お仕事をしているアラサー女子なら経験あるでしょう。また子育て中のママの中には、外では良いママだけど、家では子供が言うことをきかないと手を上げてしまい、そんな自分に嫌気がさしてしまうこともあるかも。「なんでこんなにうまくいかないの?」「辛いのは私だけ?」と思ったりして。

映画『きみはいい子』は、中脇初枝さんの同名短編小説集を呉美保監督が映画化した作品です。この原作には5つの物語がありますが、その中から3つの短編をピックアップしたのがこの映画。そして、小説同様、映画にも現実の苦しみから解放されるために大切なことが描かれています。その大切なこととは?

    迷惑をかけない人間関係が孤独を招く

映画『きみはいい子』の主婦・雅美(尾野真千子)は、3歳の娘に常に苛立っています。子供が失敗をするたびに怒り、家ではアザができるまで叩きます。実は彼女自身も親に虐待された過去があり、娘をどう愛していいのかわからないのです。ママ友との関係も表向きだけ。本当に心を割って話せる人はいません。

最近は個人情報保護法などから、幼稚園、学校などでも住所録を作らないところもあるようです。そんな風に他者との距離を大きく取るようになり、人間関係が希薄になっていると原作者の中脇さんは語っています。

「都会は足の踏み場もないくらい家だらけなのに、お互いに知ろうとしない。子供たちも個人情報の保護なんて言われて、縁あって同じ学校の同じクラスになったのに、家も連絡先もわからない場合もあります。お互い迷惑をかけないように暮らすことが第一になり、何かあっても助けを求めないから、辛いところに追い込まれている人が近くにいてもわからないのです。でも私はできることならみんな救われてほしい。救ってあげられる存在でいてほしいと思うのです」(『asta*』2012年6月号)

雅美は他者に救いを求める方法を知らないように見えます。孤独やイライラが内面にこもり、その気持ちの矛先が娘に向かっているのかも。娘の体のアザが彼女の孤独の証のようです。そんな彼女の孤独をママ友のひとり陽子(池脇千鶴)が見抜き、手を差し伸べます。

「うちの子と同じ年くらいの子が亡くなった事件があって、なぜ同じ年の子が死んでしまうような目にあうことが起こるのだろうと心が痛みました。でも子供がかわいそうなときって、親も同じようにかわいそうな状況に追い込まれているのです。そんな子供や親を助けたい。家の中でどうにもできないなら、周りの人が助けるしかないのです」(『asta*』2012年6月号)

    抱きしめることが癒しに繋がる

小学校の新米教師の岡野(高良健吾)は、毎日、子供たちに振り回され、クラスは学級崩壊状態です。加えて保護者からもキツイ言葉をあびせられ、先輩教師は頼りにならず、毎日疲労困憊な様子。そんな彼を甥っ子が抱きしめます。そして「頑張って」と繰り返しささやくのです。

「何かがあって、どれだけ追い詰められてしまっても、同じ時間や空間にいる人たちが、ほんの少しでもかかわることで、救われる可能性があるのです」と中脇さん。

「しんどいな」と凹んでいるとき、周りの人から、やさしい声をかけられたり、手を差し伸べられたりすることで、フっと心が軽くなることってありますよね。それは同じ会社の人かもしれないし、家族かもしれないし、近所の人かもしれないし、行きつけの店のスタッフかもしれない。

血の繋がりのありなしに関わらず、人は人に救われることで気持ちが楽になり、そして救われたら、あなたも誰かを救ってあげる。そうすることで現代の疎遠な人間関係が少し緩和して、悲惨な事件を回避することができるかも。映画には、自閉症の子供とその母親が、認知症の老女に救われるエピソードも綴られています。

「今日もきっと、どこかで泣いているこどもがいます。でも私たちは無力ではありません。世界を救うことはできなくても、まわりのだれかを救うことは、きっと、だれにでもできると思うのです」と、中脇さんは映画『きみはいい子』に、このような言葉を寄せています。本当にその通りです。

仲のいいあの子が辛そうだったり、隣の誰かがしんどそうだったりしたら、思い切って声かけてみるだけでいいのです。「気にかけてくれている」「見てくれている」そう思うだけでも楽になったり、うれしくなったりしたこと、アラサーの皆さんなら経験あるはず。映画『きみはいい子』には、そんな小さな救いの手が描かれています。この映画で、心が折れそうな人たちと、その人たちの心を軽くする思いやりをぜひ感じてください。

●『きみはいい子』公開中
●原作:『きみはいい子』(ポプラ文庫)中脇初枝・著

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