「グッド・エイジング・エールズ」代表・松中権さんインタビュー(後編)

特別扱いしてほしいわけじゃない LGBT当事者がカミングアウトであなたに伝えたいこと

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特別扱いしてほしいわけじゃない LGBT当事者がカミングアウトであなたに伝えたいこと
同僚が性的少数者と告白したらどうする?

松中権さん

>>【前編はこちら】LGBTの割合は左利き人口と同じ いま企業が向き合うべき「7.6%」の重み

LGBTという語が一般的になり、「レズビアン・ゲイ・バイセクシュアル・トランスジェンダー」に代表されるセクシュアル・マイノリティの存在が知られるようになっても、その実態となるといまひとつわからない……。『LGBT初級講座 まずは、ゲイの友だちをつくりなさい』(講談社)は、そんな人たちに向けた1冊でです。著者である松中権さん自身の体験を織り交ぜながら、LGBTとはどういった人たちか、その取り巻く環境とは、社会が解決すべき問題点とは、などの内容がまるで友人に語りかけるような親しみある文体で、わかりやすくつづられています。

ウートピ読者にもいろんなセクシュアリティの方がいるはずですが、統計的にいってもおそらく大半は、シスジェンダー(カラダの性とココロの性が一致している人)で、ヘテロセクシャル(異性愛者)。松中さんによる「出張・LGBT初級講座」後編は、そんな性的マジョリティとLGBTの関わり方にクローズアップしました。

カミングアウトは信頼感を伝えること

――本書では松中さんがご家族にセクシュアリティをカミングアウトされた経緯について、たいへん詳しく書かれていました。LGBTの方にとってその告白がいかに重大なイベントであるかがひしひしと伝わってきましたが、一方でカミングアウトされる側の姿勢や心構えも問われるのではないかと考えました。

松中権さん(以下、松中)
:僕の場合は職場や両親にカミングアウトする前に、まずは兄弟に話しました。身近なところに自分のことを知ってくれている人がひとりでもいるのは、とても心強いことです。何かあったとき頼れるし、自分のなかだけで抱えていた荷物をちょっと預かってもらうという感覚もあって、気持ちが軽くなります。

――カミングアウトできる相手と、できない相手の違いはあるのでしょうか?

松中:前編でお話した、「うちの会社にはLGBTなんていない」といってはばからないような人には、よほどの理由がないかぎり、わざわざカミングアウトしようと思いませんよね。自分の人生において大事なことを打ち明けてネガティブな反応をされるのは、ほんとうにキツイです。

LGBT側からみて「絶対にカミングアウトできない」と思われているということは、その人にとって残念なことなんですよ。それは、信頼関係が築けていないということだからです。信頼していない相手に対して「自分のことをわかってほしい、ちゃんと伝えたい」と思えないのは、なにもセクシュアリティにかぎった話ではないですよね。

――カミングアウトはされる側も、突然のことだとどうしてもびっくりしてしまうと思いますが……。

松中:そうですね、特に親の立場だと、自分を責めてしまう人がいます。自分の育て方が悪かったから、あるいはもっとさかのぼって妊娠中に何かあったから、この子がLGBTになったのではないかと。カミングアウトする側は何度でも対話を重ねて、そうじゃないんだよってことをわかってもらわなければいけないでしょう。

カミングアウトするということはその人に向けて、「あなたに私のことを知ってほしい」「なぜなら私にとってあなたという存在が大事だから」というメッセージを送っていることでもあります。それを受け取ってほしいのであって、特別扱いしてほしいわけではないんです。ただし、トランスジェンダーの方で、社会生活を送るうえでフィジカルなハードルを抱えている人は、サポートしてほしいという意図もあるかもしれません。

――なかには、カミングアウトされた途端、必要以上に気を遣いはじめる人もいるのでは?

松中:自分の言動が相手を傷つけたらどうしよう、って思っちゃうんですよね。僕自身、以前はゲイの友人しかいなかったので、そのほかのLGBTについては勉強中です。当事者ひとりひとりが環境も意識も悩みの深さも違うがゆえに、「あ、いまの発言はマズかったかな」って思ったこともあるので、その心配もわかります。

でも、そうやって気を遣ってもらえること自体がありがたいんですよ。セクシュアリティの違いはあっても人間関係であることには変わりないのだから、「これはマズイかな」と思ったら率直に訊いてくれればいいし、こっちからも「いや、それは違うんじゃない」ということがあればどんどん指摘していけばいいんです。

――本書ではアライ(Ally=同盟、味方)についても触れられています。

松中:LGBTフレンドリーな、性的マジョリティの方をさしてそう呼びますね。LGBTを理解し、支援してくれて、特別扱いしない「サポーター」のような存在です。

――渋谷区の「パートナーシップ条例」も施行され、社会の理解が進めばアライも増えていくと期待されますね。その一方で、施行までの議論を見ると、当事者のなかにも反対派がいて、非当事者からすると戸惑いを感じました。

松中
:当事者同士でケンカしている場合じゃないでしょ、って思われちゃうんでしょうね。でも、反対派の意見も僕はわからなくはないです。LGBTに対する社会の理解がまだ追いついていないのに、唐突に新しいことをはじめても、マイノリティである自分たちが世間にさらされて偏見が強まるだけではないか、という不安が拭えないんですね。

パートナーシップ条例については、報道でもこれまでにない制度が新しくできるという点にばかり注目が集まりました。でも、実際には相談窓口での配慮や性教育の刷新など、意識改革にも力を入れています。人々の意識が変わってから制度を変えよう、というのが反対派の意見ですが、制度が動きだしたら人々の意識も変わっていくという見方もあります。僕としては、制度改革と意識改革が両輪となって同時に動かなければ何も変わらないという考えです。

それはつまり、LGBT当事者が社会を変えようと動き、提案しても、非当事者の意識が変わらなければ何も変わらず、それどころか当事者間の分断も進むということでもあります。当事者が「身近にいない」と思い込むことで、見えなくなっていることはたくさんある。そのうえ自分たちが変わるチャンスをも逃している……ということに気づいた人から、「出張・LGBT初級講座」修了です!

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