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2015/06/18

SNSからの情報漏えいは誰の責任?

りそな銀行中目黒支店で働く派遣職員の子どもが、同支店を訪れた「関ジャニ∞」の大倉忠義さんや西島秀俊さんの個人情報をツイッターで漏えいしたとして、りそなホールディングスがホームページで謝罪しました。

働く場所に「芸能人が来た!」と浮かれる気持ちはわからなくもありません。しかし、出来心でついSNSに書き込んだことが、りそな銀行側が謝罪する事件にまで発展したのです。

今回はりそなホールディングスが謝罪しましたが、派遣社員とその子供にはどんな責任が生じるのでしょうか。アディーレ法律事務所の篠田恵里香先生に、お伺いしました。

派遣社員と子どもに「損害賠償責任」と「プライバシー権侵害」

――派遣社員の家族が個人情報を漏えいした場合、誰が責任を負うのでしょうか。

篠田恵里香弁護士(以下、篠田):結論として、りそな銀行、派遣会社、派遣社員、子どもの全員が責任を負います。派遣社員は、本来、守るべき個人情報を家族に話し、これがきっかけで子どもが個人情報を漏えいしているので、不法行為に基づく損害賠償責任を負います。今回のケースで言えば、派遣社員とその子どもが関与していますので、2人の行為は共同不法行為となり、2人とも賠償責任を負うことになります。なお、情報漏えい以外にも、芸能人の純粋な私生活の行動を暴露したという意味では、プライバシー権侵害の問題も生じうることになります。

りそな銀行と派遣会社は「使用者責任」が発生

――雇用者側の責任はどのようなものでしょうか。

篠田:法律上、「従業員が他人に損害を与えた場合、会社が責任を負いなさい」という使用者責任(民法715条)という規定があります。したがって、派遣社員が行った行為について、りそな銀行はこの「使用者責任」に基づき、被害者に対して賠償責任を負うことになります。

――派遣社員でもその責任が生じるんですね。

篠田:裁判上、使用者責任については、実質的に「使用者の指揮命令の下で事実上仕事をさせているか」「労働者の労働により利益を得ているか」などにより判断しています。この基準によれば、事実上指揮命令を行っている以上、直接雇用関係にないりそな銀行も、使用者責任を負うことになります。

また、派遣会社は、派遣社員と直接の雇用関係にありますし、派遣先から派遣料を受領し派遣社員の労働から利益を得ているわけですから、使用者たる地位にあるとして、使用者責任を認めることになります。

なお、「金融分野における個人情報保護に関するガイドライン」では、派遣社員についても、顧客の個人情報の安全管理のため、必要かつ適切な監督を行うよう定めています。「守秘義務研修を行っていた、誓約書を書かせていた」としていても、実際に漏洩事件が起こってしまった以上、やはり、りそな銀行の使用者責任は否定されないと考えられます。

りそな銀行の社会的信用低下の損害は誰が補てん?

――りそな銀行が賠償請求することもできるのでしょうか。

篠田:派遣社員にも派遣会社にも損害賠償等の請求をすることが、可能です。細かく言えば、

1. 実際に被害者に対して賠償金を払った場合、その一部を負担しなさいという請求(求償)
2. りそな銀行が、今回の事件によって被った、経済的損害や社会的信用の低下に対する損害を賠償せよという請求

が考えられます。

個人情報漏えい事件における賠償額は、1人当たり5,000円から1万円程度(高くとも数万円)の慰謝料にとどまることが通常です。しかし、りそな銀行としては、「事件の調査」や「謝罪対応」などに負担を強いられ、ここには、当然、人件費等の損害が生じていると考えられます。また、「情報を漏えいした企業」と社会的な信用が低下するなどの損害が生じることも考えられます。この損害賠償請求についても、派遣会社は派遣社員との関係では、「使用者責任」を負うことになりますので、派遣社員と派遣会社の両方に対して、りそな銀行が損害賠償請求をできることになります。

 
SNSに悪ふざけ写真や、個人情報を流す“バカッター”は、巨額の賠償金を請求される可能性があることがわかりました。芸能人を見かけてつい嬉しくなっても、SNSに書き込む前に、一歩踏みとどまって考えてみてはいかがでしょうか。

●取材協力:アディーレ法律事務所(東京弁護士会所属)

(穂島秋桜)

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