タレント・一ノ瀬文香さんインタビュー

「婚姻届は愛の証明」 同性婚が認められない日本で、女性と結婚したタレント・一ノ瀬文香が求める権利とは

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「婚姻届は愛の証明」 同性婚が認められない日本で、女性と結婚したタレント・一ノ瀬文香が求める権利とは
レズビアンカップルの婚姻届不受理の経緯

タレント・一ノ瀬文香さん

日本でも、今年3月31日、渋谷区にて同性カップルに「パートナーシップ証明書」を発行する条例が可決・成立しました。同性間の婚姻を法的に認めたものではありませんが、公的機関として初めて同性カップルを「男女の婚姻関係と異ならない程度の実質を備える」と位置づけたことは、歴史的な事業として注目されています。

そうしたなか、今年4月、タレント・一ノ瀬文香さんと女優・杉森茜さんが都内で結婚式を挙げたことが話題になりました。また、5月8日に一ノ瀬さんがブログで、区役所に婚姻届を提出したことを報告。結果的に不受理となったものの、2人は今後も婚姻届の受理に向けて行動を起こしていくことを明言しています。今回は、一ノ瀬さんに婚姻届提出までのいきさつや、これからのことについて伺いました。

「愛の証明」としての結婚届

――今回、婚姻届を提出されたのは、どんな思いからだったのでしょうか?

一ノ瀬文香さん(以下、一ノ瀬)
:もともとは、茜(パートナーの杉森茜さん)から婚姻届を出したいと打ち明けられました。ほとんどの方は、結婚式を挙げることと、婚姻届をセットに考えていらっしゃると思いますが、気持ち的にはそれと同じような感じだと思います。婚姻届を出すことが愛を誓い合うことの証明というか、そういう思いで提出しました。

――今回、結婚式や婚姻届の提出をオープンにされた理由とは?

一ノ瀬:当然、結婚式も婚姻も私のプライベートなわけです。私自身としては、プライベートで叶えたいことは、ちゃんと実現していきたいと思います。ただ同時に、同性婚について議論してもらうきっかけを作りたいという思いもありました。私は芸能の仕事をしていることもあって、自分がおかしいと感じたことは公の場で声を上げやすいのかもれません。実際に法律を変えるのは皆でやることですが、自分のプライベートな部分をオープンにすることで議論のきっかけが生まれるのであれば、それは私にとって必要なことなのだと思っています。

明示されない婚姻届不受理の理由

――婚姻届は不受理となってしまった訳ですが、この結果についてはどのようにお考えですか?

一ノ瀬:婚姻届を提出する前にも、法的なことに関しては自分たちで調べたり、弁護士や憲法学者の方に直接話を伺ったりはしていました。受理を期待していたので、やはりショックですね。

私たちの前にも、女性同士が国内で提出した婚姻届が、不受理になった事例があるそうなのですが、そのときの理由が憲法24条(※)に抵触するということだったそうです。その理由について専門家がおかしいと話していて、ネットで話題になりました。今回私たちが婚姻届を提出した際、役所としてどの法律に不適法なのかはっきりと言えなかったのでしょう。役所から明確な理由を得られずの不受理となりましたが、同性婚を議論するきっかけになったのではと思っています。

――パートナーの杉森さんは不受理について、何とおっしゃっていますか?

一ノ瀬:ほかの国では同性婚ができるのに、なんで日本ではダメなんだろうねと言っていましたね。きっと何年か経ったら時代遅れなことになって、「不受理になったなんて変なの」って笑われちゃうよねといってました。

(※)日本国憲法24条1項には、「婚姻は、両性の合意のみに基いて成立」とある一方、同性カップルの婚姻成立禁止、また婚姻は異性間でのみ成立とは明言していないことから、同性婚をめぐる問題を検討する際に議論の核になることがある。

「これっておかしくない?」が議論のスタート

――今回の結果を受けて、これからどのような行動に移される予定ですか?

一ノ瀬:私としては、引き続き婚姻届の受理を求めていきたいです。現行の法律を変えずに婚姻できるようにする方法のひとつとして、裁判という手もあります。裁判所で同性婚は違憲じゃないかという判断が下されれば、法律を変えなくても受理になるわけです。区役所から不受理証明書を発行してもらい、その内容をもとに家庭裁判所で司法判断を仰ぐこともできますが、傷ついたから「じゃあ裁判します」というのは、「じゃあすぐに喧嘩をしましょう」って言うようなものです。

正直、日本国憲法の理念を考えれば、同性でも婚姻は認められるはずだと信じていた部分もあったので、今回、不受理になったことで傷ついていることは事実です。ただ、私としては、いきなり喧嘩をするのではなく、まずは皆が冷静に考えて、「これっておかしくない?」と疑問を持ち、議論が活発になることからスタートしたい。皆が話し合いをしたうえで、正して欲しいと考えています。そうした願いもあって、「同性婚に関する人権救済申立人」になることを決めました。

同性婚が認められないのは人権侵害

――「同性婚に関する人権救済申立人」とは、どういう役割を持つ人を指すでしょうか?

一ノ瀬:有志の弁護士が所属する「LGBT支援法律家ネットワーク」というグループがあるのですが、私をはじめとする申立人たちが、そのグループに陳述書を提出します。それをもとに、全国の弁護士が所属している「日本弁護士連合会(日弁連)」に対して、「LGBT支援法律家ネットワーク」から、同性婚が認められないことによる人権侵害の実情を説明します。それから日弁連で一度審議され、同性婚の法律が必要と判断されると、内閣総理大臣、法務大臣、衆議院、参議院に対して、立法の勧告をしてもらう、という流れになります。

もちろん勧告には法的拘束力はないですが、例えば同性婚関連で裁判が起きたときには参考にされる可能性がすごく高いそうです。同性婚にまつわる様々な議論の活性化につながる可能性も非常に高い。私は申立人として、陳述書を書いて委任状も出しており、これから行なわれるLGBT支援法律家ネットワークと日弁連との話し合いの結果を待っている状態です。年内には何らかの動きがあるのかなと思っています。

「私もカミングアウトしました」

――最近は、日本人の結婚に対する意識も変化しており、異性間でも結婚をせずに事実婚状態を選ぶカップルも増えてきているといわれています。さまざまな選択肢があるなかで、あえて杉森さんとの婚姻を望まれている理由についてお聞かせください。

一ノ瀬:一番は、愛を誓い合いたい、証明したいということですね。あとは、将来のことを考えて、保障を得たいという気持ちもあります。相続を例にとるとすれば、私の名義で家を購入した場合、婚姻関係がない状態で私が先に死んでしまったら、パートナーの茜に財産として残すことができません。男女の場合、事実婚も婚姻も選択する権利がありますよね。でも、私たち同性カップルは選択ができない状態です。婚姻届の不受理も同じで、同性だからといって権利を持てないのは、不平等だと思います。

――挙式から婚姻届提出まで、多くの人から様々な声が寄せられたと思います。なかでも印象的だったメッセージはありますか?

一ノ瀬:「一ノ瀬さんたちの結婚式を話題に、両親にカミングアウトしました。拒絶はされなかったです。きっかけと勇気をありがとうございます!」というメッセージを頂いたときは嬉しかったですね。あと、小さな子供が親を通して、「一緒にいたい人が見つかってよかったね」とのメッセージと、ウェディングドレスを着ている私たち2人の似顔絵をプレゼントしてくれたのがとても嬉しかったです。それから、私がレズビアンであることをカミングアウトした6年ほど前から応援していたという子から道端で声をかけられ、「自分が中学生のときに一ノ瀬さんのカミングアウトを知って、自分もオープンに生きることにしたんです」と言われ、胸がすごく熱くなりましたね。

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