『猫のマルモ』著者・大宮エリーさんインタビュー

「人生は少しのことで逆転できる」 大宮エリーが語る、視点を変えて今を幸せにする方法

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「人生は少しのことで逆転できる」 大宮エリーが語る、視点を変えて今を幸せにする方法
大宮エリーが語る「今を幸せにする方法」

大宮エリーさん

作家、脚本家、映画監督、演出家、CMディレクターなど、多方面で活躍する大宮エリーさんが、短編小説集『猫のマルモ』(小学館)を上梓しました。

デザイナーになりたくてアクセサリー会社に入社したのに、営業に回されたことで悩む猫の「マルモ」、いつも他人よりワンテンポ遅くて集団生活に付いていけない青ガニの「サワッチ」など、才能やコンプレックス、自分のいるべき場所など、実社会で思い悩んでしまうことを動物や昆虫を主人公に描きだす7篇の短編物語です。

この短編集に込めた思い、また今、悩みや葛藤を抱えている人に向けてのメッセージを、大宮エリーさんに伺いました。

視点を変えて、いじめられっこからクラスの人気者へ

――この本は、雑誌に掲載した短編小説がきっかけだったとか。

大宮エリーさん(以下、大宮):水嶋ヒロくんが責任編集をしていた雑誌で、「働く人が癒されて元気になる話を書いてほしい」と頼まれて書いたのが「猫のマルモ」というお話です。今回はそれに6篇の物語を追加して一冊にまとめました。

――動物を主人公にしたのは、なぜでしょうか。

大宮:動物にした方が、物事を抽象化できるんじゃないかと思って。グリム童話もアンデルセンも人の内面をえぐってくるところがありますよね。そういう風に、大人向けの童話にしたかったんです。

――この本は、才能や、コンプレックスなど、誰もが思い悩むことがテーマになっていますね。

大宮: 私は小さい頃にクラスでいじめられていたんです。それが辛くて、どうやったらいじめられなくなるのかと考えたんです。

クラスで人気のある子の1位は「スポーツができる」、2位、3位は「かわいい」、「賢い」。私はどれもダメだと思ったけど、4位は「ひょうきん」だった。それだったらできるかもしれないと、いじめられたときにボケて返してみたんです。「その洋服、フリフリでお姫様みたい」とからかわられたら「実はお姫様なんやけど、王冠を忘れてしまって。王冠をつけたら完璧やったのに」って言って、みんながモヤっとするという。そのうちみんなが笑いだして、クラスで人気がでるようになり、いじめられなくなったんですよ。

――それはいつぐらいですか?

大宮:小学4年生の頃ですね。それまでクラスで無視されていたのに、クラスの人気投票でラインクインするって何だろうと。人の裏表を見たというか。それと同時に、世の中には残酷なことがあるけれど、視点を変えることによって自分の心を守れることもあるんだと学びました。

この本の物語も、視点を変えることによってハッピーエンドに向かっていくという構成にしています。「ちょっとしたことで逆転する可能性があるから、諦めちゃダメだよ」というメッセージを込めました。

33社に落ちて、大手広告代理店に就職できた理由

――エリーさんは東大を卒業されて、大手広告代理店の電通、そして独立と順風満帆な人生だと思っていました。

大宮:そんなことないんです。逆境をどうやって乗り越えようとやってきただけで。大学は、父親が病気だったので、治してあげたいと薬学部に行ったんですけど、実験でマウスに注射が打てなかった。生き物に注射するなんて無理と思ってしまって。色々と鈍くさくて、私は落ちこぼれだったんです。

動機は純粋なのに向いてない。お父さんの病気はだれかが治してくれる。私は自分に合った仕事をしようと思って就職活動をしたら33社も落ちてしまって。

――電通を受験するときには、何か変化があったんですか?

大宮:そのときは視点を変えようと思って、OB訪問をしたんです。話を聞いていたら、今まで企業の立場になって考えていなかったと気づいたんです。企業はどういう人を欲しがっているのか、相手の立場になって考えたら受かったんです。

そして就職したものの、団体行動に不向きだったり、事務処理が苦手だったり。会社にいる間は、ここにいていいのかとずっと思っていました。自分が会社員に向いてないことに気づくまで7年も経ってしまったんですけど。

新しいジャンルに挑戦し続ける怖さ

――現在は、作家、脚本、映画監督、演出家、CMディレクター、絵の個展を開くなど多方面で活躍されていますが、新しいことに挑戦し続ける気持ちとは?

大宮:よく「楽しそうですね」と言われるんですけど、そんなことはないですよ。やっぱり、経験を積み重ねた方が自信になるじゃないですか。私に頼んでくださるというのは、私に存在価値があるということだから、元いじめられっ子としてはとても嬉しいのですが、自分に自信がないので、うまくやれるんだろうか、非難されたらどうしようとか、超恐怖ですよ。

でも、やることには意味があると思うんです。終わった後に、初めてわかることがあるに違いない。だから全力を尽くそう、と思ってやっています。

――エリーさんに新しいジャンルのお仕事を依頼したくなる、その魅力は自分では何だと思いますか。

大宮:なんでしょうね……。「正直である」というのはあるかな。誰かを守るために必要ならウソはつくけど、自分に関しては正直でいるようにしています。あとは「人を傷つけない」。それはいじめられたときに、すごくそう思った。それから、自分と同じことで苦しんでいる人がいたら、私はこう乗り切ったよっていうことを、作品を通して伝えられればと思っています。みんながハッピーになることをやりたいと思っていますけど、そのくらいかな。

あとは人によって態度を変えない。みんなに「等しく失礼だね」と言われます。上にも下にも失礼っていう。

――エライ人が来たら委縮しちゃいがちですけど。

大宮:「エライからって何だよ、みんな2015年生じゃん!」って思っちゃいますね。2015年を生きる同士なわけだから。先輩には敬意はあるけど、委縮はしないな。

青ガニだらけの砂浜が悩みの突破口に

――この本の中には、これまで体験した中で気付いたことが盛り込まれているんですね

大宮:悩んでいた頃に、1人で小浜島に行ったんです。でも、海を見ていたら寂しくなっちゃってカヌーツアーに申し込んだら、参加者が私1人(笑)。

それで、インストラクターの人と遠くまで行ってみたら、青ガニが砂浜一面びっしりいるところがあったんです、敵が来るとカニが一斉に砂に潜るんですが、そしたら初めて白い砂浜が見えるんです。

もしそのカニの中に、私みたいな鈍くさいやついがいたら、1匹遅れて天敵に狙われるんでしょうね。そのカニも悩むんだろうけど、もしかしたら、そいつしか白い砂浜を知らないんじゃないか、そのカニだけに見える世界があるんじゃないか。それはそれで幸せなんじゃないだろうかと考えたんです。

私も若い頃から「コレだ」というものがあったら、すでにベテランになっていただろうけど、取り柄がなかったから、自分探しをずっとしていた。プロフェッショナルも素晴らしいけど、私はそれになれなかった。でも、いろんな経験ができたし、それはそれで幸せだと。その体験が基になって書いた物語もあります。

答えは1つじゃないし、「絶対にこうするべき」と私は言えません。真実はいくつもある。物事の捉え方は、人によって違います。絶対的なものがないから、物語にも余白を残しておきたい。だから読んだみなさんがメッセージをそれぞれに受け取って、それを自分で編集してくれたら嬉しいなと思います。

(穂島秋桜)

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