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2015/05/02
大泉りかの秘告白部屋 ~女の闇は深く、生暖かい~
女の闇は深く、生暖かい――官能小説や女性向けポルノノベルで活躍中の人気作家・大泉りかが、知られざる“女の闇の真実”を解き明かす! 働いて、好きなことをして、充実した生活を送る。これらは、ごくシンプルで当たり前のことのように思えます。しかし、その『慎ましい望み』が『欲望』となると、途端に強い執着と依存とを生み出してしまうことも…。大泉りかの秘告白部屋、OPEN!
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将来のビジョンがない29歳女の闇

いまからもう10年近く前のことです。29歳を目前にして、結婚を決めた同じ年の女友達がいました。「1年後に入籍し、その後、式と披露宴をする」と、女だけの飲み会の席で発表し、「良かったね」と皆で乾杯した帰りの電車で、しかし、その女友達が漏らしたのは「でも、ギリギリまでもっと条件のいい男がいないか探すけどね」という言葉でした。

いったい何を申しているのか。どういうことなのかを理解すべく詳細を尋ねたところ、彼女が言っているのはこのようなことなのでした。

「30歳を迎える前に結婚はしたい。それに向けて彼氏とも付き合ってきた。リミットが迫ているので、ここらで“妥協”するけれども、もっと“条件”のいい人が現れないとは限らない。故に、ギリギリまでは、諦めずに出会いを求めていくつもりだ」

なるほど、結婚をして、これからの人生を共に生きていくのならば、自分の人生プランにとって、最も都合のいい相手を選ぶに越したことはないでしょう。しかし、「30歳までに結婚をする」ということも、また彼女のプランのひとつでもあるわけで、そのどちらを優先させるかは判断の難しいところ。

彼女が選んだのは「結婚に向かって歩は進めつつも、ギリギリまでは諦めない」と至極リアリスティックな選択で、そんなしっかりとした女友達の未来計画を聞きながら、わたしの頭にあったのは「結婚って、好きな人とするものじゃないのかな」という、ロマンチック脳。あと1年とちょっとで、30歳迎える同じ立場において、なぜ彼女はあんなにリアルでわたしはこんなに夢見がちなのか、と愕然としたのでした。というわけで、今回、ご登場いただくのは、今年30歳になる女性。「ビジョンがない」という彼女の抱いている“いまの気持ち”を聞かせてもらいました。

【結婚や出産など将来のビジョンがなく今年30歳を迎えるR子さん(29歳・会社員)】

R子:今年、30歳になるんですが、まるで将来のビジョンがないんですよね。周りの友達なんかは「独立したい」とか「誕生日までに、これがしたい」とか言ってるんですが、わたしには、あんまりそういうのがなくって。でも、「30歳になる」ってちょっと特別な感じがするじゃないですか。だから、最近、ちょっと考えちゃうところもあって。

就活の時にも、5年後のビジョンとか、10年後のビジョンとか聞かれたんですが、まったくわかんなくって。いま働いている会社は、新卒で入って、もう7年目。何度か辞めようと思ったことがあったけど、その度に、いいタイミングで業務が変わったりして、また仕事が楽しくなって……って感じでなんとなく7年たっちゃった。友達で転職する子は3回も4回もしてるけど、自分にはそういうのが未知の世界っていうか、「なんでそんなことできるんだろう」って。

給料が入っても常に残高がマイナス

――ひとり暮らしだと、転職するのってかなりプレッシャーになりますよね。

R子:そう。いきなり翌月から給料がなくなるなんて不安すぎる。収入がなくって、貯金が減っていくばかりって怖いですよね。そもそも、貯金についても、わたし、けっこう酷いことになってて。学生の時に作った定期預金があるんですが、それが担保になっていて、口座がマイナスになっても引き出せるようになってることに気が付いて、すごい恥ずかしいんですけど、いま、マイナスなことがデフォルトで、マイナス何十万までは使えるっていう変な感覚になっちゃってる。給料が入ってもマイナスがプラスにはならず、常に残高がマイナス(苦笑)。

――何に使ってるんですか。

R子:うーん、飲みですかね。あんまり物欲はなくって、服とかも買わない。お酒や食べ物っていう、消えるものばっかりにお金使って、で、将来のビジョンもないってどうなのかなって思ってます。友達なんかは、最近やっぱり結婚しはじめて、もう一児の母って子も結構いるし。でも、自分の周りの一番仲のいい子たちは結婚とかまだまだない様子だから、そこは安心してて、そこが結婚をしたりしたら、また変わってくると思うんだけど。

――結婚願望は?

R子:うーん、絶対に何歳までに結婚しよう、とか、子供を産もうとか、そういうビジョンもないんです。けど、周りはやっぱり、「28歳までに結婚して、30代前半で子供を産みたい」とか「仕事辞める前提で考えてて、それだと年収はこれくらいの人」とか、みんなシビア。「年収いくら」とか、いやらしいな、って思ってたんだけど、でも、仕事辞めて、家で好きなことをしたい、って思ったら、そういうことを考えるよな、って当たり前のことに最近、気が付いて。

断然夢を追ってる人といるほうが楽しい

――30歳前後ってきっぱり別れますよね。堅実な男性を選んで結婚する人と、心の赴くまま好きな人と恋愛して婚期を逃すタイプと。

R子:そう。でも、断然夢を追ってる人といるほうが楽しいんですよ。テンションがあがるというか。面白くなかったら意味ないかな、って。条件だけで結婚なんてできない。でも、こういう感じでいたらすぐに40歳になっちゃいますよね。

――そうですね、そこは悩ましいところで。でも、好きじゃない人と結婚して、生活が面白いのかなって思いますもんね。

R子:でも、あと、ひとつ年上の女の人が最近、子供を産んで、9か月になるんですが、その人に「めちゃくちゃ体力使うよ」って言われて。「若い時はオールとか全然平気だっただろうけど、今は、オールとかできないでしょ? それくらいは体力いるから」って言われて。確かにもうオールで遊ぶなんてできないし、それを考えたら、あの朝まで飲んだくれていた日々の体力を子育てに使うべきだったのかな、とか今さら後悔し始めたりとか。でも、超好き勝手生きてるから、それを第三者に妨げられるのが想像できないんですよね……。

“30歳”という区切りのポイントを迎えるに辺り、ふと周りを見渡した時、横並びであったはずの友人たちが、いつの間にか、ずいぶんと先を走っていることに気が付き、強い不安を抱いたことを覚えています。けれども、30歳はチェックポイントであってもゴールではありません。そして、そのチェックポイントを過ぎて気が付いたことは、かつて一緒に走っていたと思った友人たちは、“先”ではなく“別の道”を走っていた、ということでした。さてわたしはもうすぐ40代を迎えます。そのチェックポイントを過ぎた時、いったい何が見えるのか、今から楽しみです。

大泉りか

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