映画『シンデレラ』衣装制作の日本人女性

アラサー女子のみなさんは「海外留学したい」とか「海外で成功したい」とか思ったことはないですか? または留学経験者も多くいるでしょう。2015年4月25日公開のディズニー映画『シンデレラ』は有名な童話「シンデレラ」の実写映画ですが、この映画の魅力の要となっているのが衣装の数々。実はこれに日本人アーティストの女性が関わっていたのです。彼女の名前は宮本遥香さん。現在27歳。この映画の衣装デザイナーである大御所サンディ・パウエルの元、サンディのイメージをカタチにしたのが宮本さんなのです。海外で仕事をすること、そのきっかけとプロセス、海外で仕事をする上で重要なことを宮本さんに聞いてきました。

最初の悩みは語学。言いたいことを言えないもどかしさ!

――宮本さんは広島出身ですよね。今の仕事に至るまでを教えていただきたいのですが、最初はロンドンへの留学だったのですか?

宮本遥香さん(以下、宮本):はい。高校時代からずっと英語とアートの勉強をしたいと思っていました。留学も考えていたのですが、私が通っていた高校は進学校でカリキュラムに留学がなかったのです。それで立命館大学へ進学したのですが、でもやっぱり諦め切れなくて、大学を自主退学してロンドンへ留学しました。18歳のときですね。

私は幼い頃から物づくりに興味があって、テディベアなどを作ってきたのです。アメリカではなくイギリスを選んだのはイギリスでアートを学びたかったから。また母の知り合いに英国人作家がいていろいろ相談できましたし、海外生活の入り口としては最適だったのです。

――英国では最初からロンドンへ?

宮本:いえ、「カンタベリーベア」(イギリスのテディベア工房)の社長さんが知り合いだったこともあり、カンタベリーにホームステイさせていただきました。最初はそこで語学を勉強しながら過ごして、それからロンドンの大学へ入学しました。ロンドンではすべてひとりでスタートしました。語学は苦労しましたね。英語の聞き取りはできたのですが、大学で自分の意見をプレゼンする語学力はなく、言いたいことも言えずに辛い時期がありました。口にガムテープを貼られているような感じ(笑)。言いたいことがあるのに言えない……みたいな。

――そこからどうやって克服されたのですか?

宮本:とにかく日本語を遮断しました。日本人グループには入らず、英語で物を考えるようにして。慣れるまでの最初の1年は大変でしたけど、友達ができると英語にも慣れてきて。間違えることもありますが、一度間違えたら同じ間違いを繰り返さないようにしようと心がけましたね。

自分のボスが何を求めているか理解することが重要

――大学を卒業してからもロンドンに残ったのですよね。どういう経緯で映画『シンデレラ』の衣装デザイナー、サンディ・パウエルと仕事することに?

宮本:卒業後もアート関連の仕事をしていました。サンディとの仕事は衣装デザイナーの友人の紹介です。最初にポートフォリオをサンディに見せて、そのあと「蝶のサンプルを作って来て」と言われました。

映画『シンデレラ』衣装制作の日本人女性

シンデレラの青いドレスの飾りとして散りばめられている蝶のモチーフ

サンディ・パウエルに宮本さんについて話を聞くと、こんな答えが返ってきました。

「遥香のポートフォリオを見て、美術のセンスが際立っていると思ったので彼女にお願いしたの。遥香の素晴らしさはどんなに難しい課題を投げてもやり遂げるところよ。メーカーに不可能と言われたことも遥香はやり遂げましたからね。あと仕事が早い! これはとても重要なことよ」

――サンディさんは宮本さんを絶賛していますが、外国人のボスとうまくやっていく秘訣はありますか?

宮本:私の仕事はサンディの手助けをすることですから、彼女が何を求めているのかよく話を聞きました。どんな仕事でもそうですが、上司が何を目指しているのか、理解して近づくことが大事です。すべて教えてくれるわけではないので、想像して、サンディが思うよりもっといい結果を残すことを心がけました。失敗することはありますが、失敗したらすぐにどうしたらいいのか考えて対処することが大事です。

あと絶対にできないことは「できません」とキッパリ言うことも大事ですね。正直、映画『シンデレラ』を見ていたとき、ずっとサンディの思うように衣装は表現できているか、彼女はハッピーだろうか……と心配でした。彼女に聞いたら「ハッピーよ」と気に入っていたのでホっとしました(笑)

成功は必ずしも人生のメリットではない

――宮本さんのキャリアは順調ですが、今後は自分も衣装デザイナーに……という野心は?

宮本:私の同僚はデザイナーを目指している人が多いけど、私は人と張り合うのが好きではなくて……。だからデザイナーとして成功したいというより、ただ物づくりが好きという気持ちでやっています。成功することは必ずしも自分にメリットがあるとは思えないのです。私の夢は自分が美しいと思うもの、残したいと思うものを作り続けて、みなさんに知っていただくことです。私の今の目標は絶滅危惧種の保存と絶滅した動物をアートして残すことです。手に触れることできて、教育現場でも使っていただけるものを創りだしたいですね。

ショービジネス界で仕事している人は、野心的で「有名になりたい」と邁進していく人が多いと思ったら、彼女は自分なりの哲学を持って、周囲に振り回されずに自分の世界を貫いている印象を受けました。オファーされた仕事についてはきっちりやり遂げるけれど、成功してもそれに甘んじない強さもあります。海外で活躍するためには、その人じゃなくてはいけない個性がありつつ、コミュニケーション能力も必須。野心でガツガツするより、まずは、自分は何がしたいか、何ができるのかを明確することが大切なのですね。

映画『シンデレラ』衣装制作の日本人女性

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●宮本遥香(みやもと・はるか)
クラフトアーティスト、コスチュームメイカー、テキスタイルアーティスト。1987年、広島生まれ。幼い頃から物づくりに興味を示し、世界のテディベア展(広島)でテディベアメーカーの社長と知り合い、その後、世界のテディベアショーのコンペティションに参加。中学2年の時に最年少アーティスト賞、高校2年のとき最年少優勝を飾る。立命館大学に進学後、語学とアートを学ぶために自主退学。英国へ渡り、ロンドン芸術大学へ入学。その後、ファッション、アート、インテリアデザインなどの分野でインターンを経験。映画業界では『レ・ミゼラブル』の衣装の飾りつけ、帽子のデコレーションも担当。

斎藤香

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