夫婦別姓の子どもへの影響、周囲の対応

橘昭子さん

>>【前編はこちら】なぜ「夫婦別姓」は認められないのか? 事実婚夫婦に聞く、賛成派と反対派の対立

夫婦別姓でご結婚された行政書士の水口尚亮さんと橘昭子さんご夫妻。前編では、夫婦別姓を選択するために婚姻届を出さない事実婚の夫婦でも、基本的なルールを決め、契約書を作成し、遺言書を書くことで、法律上の夫婦とほぼ同等レベルにできるというお話を伺いました。後編では、子供への影響について伺います。

出生時に婚姻届が出されていない場合、子供の親権は自動的に母親に

――先生達にはお子様もいらっしゃいますが、お子様の姓はどうされたのですか? 親権はどうなるのでしょうか?

水口尚亮さん(以下、水口):1人目が妻の姓で橘、2人目を私の姓である水口にしました。1人目は妻の戸籍に、2人目は私の戸籍に入っています。戸籍が違っていても子供の認知届けを出すことで父親の欄に私の名前が記入されます。とはいえ、認知しても子の立場は婚外子(非嫡出子)。現状では夫婦別姓の子供は非摘出子となってしまうのは避けられません。但し、民法が改正されたので、非嫡出子でも法律上の不利益はありません。

橘昭子さん(以下、橘):親権者についても1人目は私、2人目は夫です。婚姻届を出した夫婦では、父親と母親の2人が子供に対して「共同親権」を持てますが、事実婚の場合は、親権者は法律でひとりに定めるよう決められているからです。

ですから、出生時に婚姻届が出されていない場合、自動的に親権は母親が持つことになります。親権がないとどうなるか。それは子供が未成年のときに裁判を起こしたり、保険の契約をするなど法律行為をする場合の承諾ができません。しかし、これは夫婦2人で話し合い、私が承認すればいいだけのこと。親権がないとは言え、父親であり保護者であるということに変わりないのです。

周囲の目はさほど気にならない

――お子様2人はお互いに姓が違うことで混同しませんか? それにより不便なことはないのでしょうか?

水口:今はまだ2歳と0歳の子供ですのでそのあたりはまだ理解していないはずです。でも私たちの考えをしっかり話すつもりですし、毎日一緒に食事もするつもりですから不安に思うようなことはないと思いますよ。最近は離婚や再婚が多いため名字が変わったりする生徒も珍しくないので、学校側も家庭内に複数の氏の人がいることに配慮してくれると聞いています。

:不便なことと言えば、2人目の水口姓の子供の口座を開設しようとしたときに私では作れませんでした。委任状を持っていてもダメ。これは金融機関によっても対応が違うと思うのですが、そういった不便はありますね。夫婦別姓の場合、子供のことに限らず役所などでは手続きに時間がかかることが多い。これはまだ夫婦別姓がレアケースな以上、避けて通れない道だと思って根気よく交渉するしかありません。

――お子様に対する周囲の目は気になりませんか?

:2人目と幼児学級に行ったとき、ママと子供の姓が違うので一瞬戸惑った顔をされた方はいました。でも理由を話せば「あぁ、そうなんですね」とわかってくれますし、さほど気になりません。それよりも、通販でお買い物をした時、私の名前の前に勝手に「水口樣方」と付箋が貼られていた方がショックでした。せっかく色々な手続きをしてまで夫婦別姓にしたのに……って。

夫婦別姓の子どもへの影響、周囲の対応

水口尚亮さん

夫婦別姓を望む人がいるなら一石を投じたい

――夫婦別姓なら結婚後も名義変更など面倒な手続きをしなくていいのでラクなのに……と安易に考えていましたが、夫婦別姓を選択するのも大変な労力や知識を必要とすることがわかりました。

:確かに簡単なことではないけれど、やはり慣れ親しんだ姓を持っていられることは何よりも嬉しいですし、夫婦別姓の最大のメリットだと思います。実際、相談にいらっしゃる方の中にはひとりっ子の方や、配偶者を亡くされ再婚されるご年配の方が多いのですが、やはりどちらもこの先も氏を残していきたい、氏を大切にしたという想いでいらっしゃいます。

水口:私たちがHPを立ち上げたのも法律に携わる人間として、夫婦別姓を望む人がいるなら一石を投じたいと思ったから。法律を使う現場の人間が実際に選択的夫婦別姓を形にし、それが問題ないとわかったなら法律も変えられるのではないかと思ったからです。

:私は相手が水口でなければ、夫婦別姓という選択をせず「橘になってください」と迫り、話し合いになったかもしれません。でも彼は私たちが夫婦別姓を検討し始めたとき、すぐに色々調べたり、契約書の草案も率先して作ってくれました。夫婦別姓を選択することは、パートナーの理解が必要不可欠なのでとても感謝しています。

水口:私も彼女が言い出さなければ、彼女が水口姓になるものだと思っていました。その考えがまず勝手ですよね。どちらかが姓を変えたくないのであれば、その想いを尊重する方法を考えるべきです。とはいえ、やはり面倒なことは数えきれずあるので、希望する方はその面倒を覚悟しなければいけません。

ただ夫婦別姓を選択した場合、途中で気が変わっても婚姻届を提出すれば、それが受理された時点で法律婚へと変更できますが、その逆だと一度離婚しなければいけません。もし「苗字を変えるのに違和感」が少しでもあるのなら、一度夫婦別姓という選択肢を考えてみてもいいと思います。

 

夫婦別姓を認めない民法の規定は憲法違反として、事実婚の夫婦ら5人が国に賠償を求めた訴訟の上告審で、最高裁は審理を大法廷に移したというニュースも記憶に新しいところ。審議の行方を気にするとともに、自分の氏についてもう一度真剣に考えたいものです。

●水口尚亮行政書士、橘昭子行政書士 相談の料金は30分までは無料、その後は有料。戸籍法上の届出を行わず、法律婚にできる限り近い法律関係・権利義務構築の手伝いをしてもらえる夫婦別姓基本プランは報酬15万円+消費税(相談時間5時間含む)。詳細は「夫婦別姓.com
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