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2015/04/04
大泉りかの秘告白部屋 ~女の闇は深く、生暖かい~
女の闇は深く、生暖かい――官能小説や女性向けポルノノベルで活躍中の人気作家・大泉りかが、知られざる“女の闇の真実”を解き明かす! 働いて、好きなことをして、充実した生活を送る。これらは、ごくシンプルで当たり前のことのように思えます。しかし、その『慎ましい望み』が『欲望』となると、途端に強い執着と依存とを生み出してしまうことも…。大泉りかの秘告白部屋、OPEN!
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食べ物潔癖症の32歳女の闇

幼い頃から、両親や教師を通じて「食べ物を好き嫌いするのは恥ずかしいこと」だという教育を受け、通念を植えつけられているが故でしょうか。特定の食べ物を厭うことには、『贅沢』『我儘』『大人げない』というネガティブなイメージを抱くとともに、罪悪感さえ感じてしまいます。その一方で、“飽食世代の傲慢さ”と言われようとも、自分で金を稼いでいる限り、「何を食べたいか、食べたくないか」という超個人的な事柄に関して、他人様に口を出される筋合いは、まったくもってないという気持ちもあります。

しかし、好き嫌いがないほうが生きやすいことは確かです。それを見越して、幼いうちに「好き嫌いはよくない」という教育を施すことにも、十分に納得ができますが、しかし、好き嫌いを矯正することに成功する人ばかりではありませんし、たんなる好き嫌いとは違う次元で、食べ物にまつわる“生きにくさ”を抱えてしまう人もいます――というわけで、今回登場していただくのは、食べ物に関してのみ潔癖症だという女性です。

【食べ物に関してのみ「潔癖症」のH美さん(32歳・事務職)】

H美:わたし、ちょっと潔癖症なんですよ。人の作ったおにぎりが食べられないし、沸かした麦茶も気持ちが悪い。家庭菜園の野菜とかも無理だし、釣った魚なんて絶対に無理。というか、魚に関しては、スーパーのパックに入った切り身じゃないと厳しいかも。

――人が入れた紅茶は?

H美:あっ、それは平気ですね。ホットティーなら大丈夫。でも、アイスティーは無理(笑)。たぶんイメージなんですよね。既製品のイメージがあるものを、手作りしたものが、なんか無理なんです。

――食べ物だけですか?

H美:うん、そう。別に、エスカレーターのボタンが押せないとか、つり革持てないとか、外のトイレの便座に座れないとかはないですね。銭湯も平気。とにかく口に入れるものだけ。でも回し飲みも、鍋も大丈夫なんですよね、自分でも不思議だけど。

無理して食べようとしたら嘔吐して彼氏と喧嘩

――外食は大丈夫なんですか?

H美:そこが難しいところで、ファストフードは全然大丈夫なんですよ。むしろ安心感がある。ファミレスも平気だし、縁日の屋台の焼きそばとかも食べられる。素人の作ったおにぎりは無理だけど、職人さんが握ったお寿司は大丈夫。けど、本場っぽすぎるタイ料理とか中華料理とか、よく知らないスパイスを使っている料理は抵抗がある。あと、海外だとホテルのレストランとファストフード以外は基本的に無理。信用ができない。

――信用って何に対してですか?

H美:うーん、清潔さというか安心感? でも昔は大丈夫だったんですよね。彼氏と旅行で台湾に行ったことがあって、その時に街の食堂みたいなところに入ったんです。で、その時に「あ、これ無理」って気が付いて。無理して食べようとしたものの、うえって嘔吐しちゃって飲み込めない。で、彼氏と喧嘩になりました。

なんか、そういうの平気な人って、ダメな人の気持ちが全然わからないじゃないですか。精神論というか「克服すべし!」みたいに煽ってくる。けど、こっちにしてみたらそんなことを強制されたくない。「美味しいのに勿体ない」とか言われても、無理なものは無理なんだよ! と。

潔癖って“こだわり”の一種

――じゃあ、直すつもりはない?

H美:ないですね。というか、直せる気がしない。好き嫌いとかよりも、もっと生理的なものが関わってきてるんで。

――原因とかって心当たりありますか?

H美:うーん。本当に突然「あっ、わたし、これだった」って気が付いたみたいな感じで。別に親も潔癖症とか、むしろ不潔だったとかはなくって、本当にある時、「これ、無理だわ」って。でも、気が付いてから、ちょっと加速してる感じはあるんですよね。無理なものが増えていってる。

わたしが思うに、潔癖って、“こだわり”の一種なわけですよ。で、年を取るにつれ、“こだわり”って増えてくるじゃないですか。もしかして、もっと年を取ったら、“こだわり”とかどうでもよくなるのかもしれないけど、今はむしろまだその“こだわり”が増えていく時期っぽい。で、この“こだわり”は嗜好ではなく嫌悪に基づいているものだから、直そうとしても直せない。だから、どうしようもない、というのがわたしの結論ですね。

人間の持つ三大欲求のひとつでもあり、また、生活する上で欠かせない『食べる』という行為。恋人とのデートや仕事上の会食、職場の同僚とランチなど、人と関わるシーンにおいても多く登場するが故に、ここに“生きにくさ”を伴う“こだわり”を持ってしまうとなかなか困難です。もしも、H美さんと同じような悩みを抱えているのならば、専門家による治療を試みるというのもひとつの手かもしれません。

大泉りか