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2015/04/04

日本の養子縁組や里親制度とは?

4月4日は養子の日だ。実子と養子を6人育てるアンジェリーナ・ジョリーとブラッド・ピッドや、自身が養子だったスティーブ・ジョブズなど、海外では認知度が高い養子制度だが、日本ではまだ「珍しいこと」とされているのが現状だ。現在、日本の児童養護施設に入所している児童数は約3万人(平成25年2月発表の厚生労働省調査)。そのうち、養子となるのは1年で300~400人程度、里子となるのは4,000人程度。児童養護施設に入所する子どものうち、養子や里子になるのは15%程度に過ぎない。あなたは養子縁組や里親制度について、どのぐらい知っているだろうか。

まず、それぞれの制度について簡単にまとめてみよう。

養子縁組と里親制度の違い

1)戸籍上の表記
養子縁組は、養子と養親の戸籍は同一となる。里親の場合、里子の戸籍は実親に入ったままで、名字は変更されない(里親の苗字を通称として使用するケースもある)。

2)手当・養育費

実子として育てる養子縁組の場合、手当・養育費の支給は行われない。里親の場合、「児童養護施設に代わって子どもを家庭で養護する」という認識の元、月々公費が支給される。また、医療費や学校授業料などが免除・一部免除される(養子縁組里親の場合、手当や養育費の支給はない)。

3)18歳以降
養子縁組の場合、親子関係は継続する。里親制度の場合、養育措置が解除され実親が養育可能な場合は実親の元へ戻る。18歳未満の場合でも、実親が養育可能となれば実親の元に戻ることがある。

4)仲介
養子縁組は行政のほか、民間企業が仲介を行っている。里親制度の仲介を行うのは行政のみ。

養子縁組の種類

養子縁組には、「普通養子縁組」と「特別養子縁組」がある。大きく違うのは、特別養子縁組の場合、実親の親権がなくなること。普通養子縁組の場合、実親、養親ともに親権を持つ。戸籍の記載は、特別養子縁組の場合、「長男・長女」。普通養子縁組の場合、「養子・養女」。また、子どもの年齢が6歳未満でなければならない特別養子縁組に対し、普通養子縁組は年齢制限がない。

里親制度の種類

※人数は現在の委託児童数。「社会的養護の現状について(平成26年3月/厚生労働省)」より

・養育里親……3,498人。
・専門里親……197人。被虐待児や、身体・知的障がい児など、専門的ケアが必要な児童を養育する里親。
・養子縁組里親……213人。養子縁組を結ぶことを前提とした里親。
・親族里親……670人。児童の両親が死亡、行方不明などの状況となったとき、3親等以内の親族が引き取る里親。東日本大震災の影響で2011年秋から制度が改正された。

養子・里親を待ち続けている人も多い理由は?

養子縁組や里親制度について啓蒙活動を行う日本財団の高橋恵里子さんに、現状や課題点を聞いた。

――社会的養護を必要とする子どものうち、約85%が養子にも里子にもなることがありません。養親・里親希望者が少ないということなのでしょうか?

高橋恵里子さん(以下、高橋):現実には、養子縁組については、子どもを待ち続けている方もたくさんいます。一方で、養育里親は希望者がまだ足りないと思います。

――養子縁組を希望する人がいるのに、子どもを引き取ることができないのはなぜなのでしょうか?

高橋:理由はいくつもありますが、日本では産みの親の親権が強いということも一因だと思います。日本の場合、たとえば子どもが施設で18年間育って、その間一度も会いに来なくても基本的に産んだ方の親権は残ります。アメリカやイギリスの場合だと、親もとに帰る見込みがないと判断を早めにつけて、次の家庭を探す段階に移ります。それに比べると日本の制度や法律は、子どもに新しい家庭を探すという方向にあまり積極的ではないかもしれません。

最近になって日本でも家庭養護の必要性が問われ始めましたが、これだけ多くの子どもが施設で育っているということは社会の中でもあまり知られていないのかもしれません。国連の「子どもの権利条約」には、子どもが「家庭で育つ権利」について書いてあります。この権利が守られていませんね。

――「社会的養護の現状について」によれば、登録里親数は9,392世帯あるのに、実際に委託されているのは3,487世帯だけですね。

高橋:里親に委託するにはマッチングやフォローアップが必要になります。たとえば、この子だったらこういう親がいいという検討作業ですね。児童相談所では虐待対応に追われてそこまで手が回らないということが言われています。

――人手も資金も足らないという状況……。

高橋:また、日本では里親の登録が海外に比べて簡単です。海外の場合は事前調査や研修をかなり厳しく行いますが、日本では研修を受ければ、かなりの人が登録できます。結果的に、さらに現場でのマッチングが難しくなっているという面があると思います。

親と暮らせない子どもの現実を知ろう

――日本社会全体での今後の課題について、どう思われますか?

高橋:日本の里親さんを見ていてちょっと大変だなと思うのは、サポートが少ないことですね。里親さんが相談できる機関もありますが、もっと支える仕組みを社会で作っていかなければいけないと思います。

世間の理解も足りていません。先日、イギリスの学校の資料を見せて頂く機会がありましたが、学校の入所基準で一番優先されているのは社会的養護を受けている子どもと書いてあり、驚きました。次に障がいを持つ子どもです。社会全体で、親と一緒に暮らせない子どもを守ろうという風土があるのだと思います。日本だと逆に、施設の子どもや里親家庭だと「問題があるのでは?」と敬遠されることもあると聞いたことがあります。もっと社会の理解が広がる必要がありますね。まず関心を持って、知っていただきたいと思います。

――最近、LGBTについてメディアが取り上げることが増えています。性的マイノリティーの方が子どもを持つ方法として、養子縁組や里親制度は現実的なのでしょうか?

高橋
:特別養子縁組は、基本的には婚姻関係を結んだ夫婦がそろっていないと成立しません。ただ、たとえばトランスジェンダーの方が希望して戸籍の性別を変更し、パートナーと婚姻関係を結んだというような場合、養親・里親になることは制度上では可能だと思います。里親や普通養子縁組は単身者でも可能です。

日本財団では4月4日に渋谷ヒカリエで「養子の日」キャンペーン「すべてのいのちに愛のある家庭を」、4月18日・19日には虎の門の日本財団ビルで「全国版妊娠相談SOS情報交換会」を行う。関心のある人は訪れてみるといいだろう。また、予期せぬ妊娠についての相談を24時間受け付ける慈恵病院など、児童養護に関する支援を行っている団体で寄付を受け付けているところもある。ひとり一人が知識を得たり、寄付を行ったりすることが、社会を少しずつ変えるかもしれない。

●高橋恵里子さん プロフィール 1971年生まれ。1994年上智大学文学部史学科卒業、1996年ニューヨーク州立大学修士課程修了。1997年から日本財団国際協力グループ。海外の障害者支援などを担当。2011年から公益・ボランティア支援グループ(国内事業)兼務。国内の障害者支援、子どもの支援などを担当。/span>

小川 たまか/プレスラボ