IT合コンする女子大生が嫌われる理由

『ジェーン・スー 相談は踊る』(ポプラ社)

>>【前編はこちら】「恋愛でドロドロするなら、いっそ発酵しきればいい」 ジェーン・スーが語る“諦めてラクになる生き方”

前編では恋愛で「依存」「執着」を上手に回避する方法をお伺いしました。後編では、女性が生きやすくなるために、視点を変えることについてお話しいただきます。

自分とは相容れないタイプの「ものさし」で測って凹むのは時間の無駄

――今の仕事に対して不満を持っている女性がいるとしたら、環境を変えるというのも手でしょうか。

ジェーン・スーさん(以下、ジェーン):すべての人が仕事をバリバリやりたいわけではないだろうし、それは人それぞれですよね。私は、経理的な仕事が致命的にできないんです。最初に入った会社で実感したのですが、交通費清算のような簡単な作業でも、間違いまくって心が凹んで、泣いて机に突っ伏す。それくらい苦手。でも、これを克服しなくては自分を認められないし「これを克服したらよりよい人間になれる」と思ってずっとトライしたんです。でもやっぱりできない。

ある時友達に、「他の人ができるなら、その人にやってもらえ」といわれて、そうかも……と。逆に、「私は仕事に対して熱意がない」という人でも、自分ができる仕事をちゃんとやっておけば、周囲に助かる人はいるわけですよ。

だから、無理に環境を変えるより、今の状態でひとつでも「自分を肯定できるポイント」を探したほうが早い。自分が合わないタイプのものさしで自分のことを測って凹んでいても、時間の無駄じゃないですか。

イラッと来るものは、「コンプレックス」の裏返しかもしれない

――女性の「ものさし」って、結婚、仕事、出産など、色々ありますよね。男性よりも複雑な気がします。結婚や出産が本当に自分がやりたいのかどうか、という問題もありますよね。

ジェーン:私自身はようやく、それに対してそんなに意欲的ではないことが分かったんですよ。決して「結婚したくない」ということではないんですけどね。

ある種の「ひとり社会実験」みたいな感じで、子供がいる人ばかりの集まりに行ってみて、心底「子どもを持ってみたい!」と思えば、そこに入ればいいし、「どうしよう、楽しめない」とか、「正直、子どもの顔は全然覚えてない」ということであれば、「私、実はそんなに子どもがほしくないのかも」とか、ちょっと疑ってみてもいい。

――SNSにアップされた子どもの写真にイライラする、という話も聞きますが、「子どもを持つ」という単一のものさしで他人と比べて、勝手にコンプレックスをもってしまうのでしょうか。

ジェーン:本にも「イライラエンターテインメント」と書いたんですが、自分のイライラしているものは何かを見つけるのは有意義ですよ。イライラの対象は、自分のコンプレックスの裏返しなので、自分が何を欲しいと思っているのか、何に負い目を感じてるのか、それが見つかるきっかけにもなる。イラッとする対象に対して、本当に私はそれが欲しいんだろうか、自分に合っていると思うのだろうか、と見つめ直すこともできますよね。

私の場合は、たとえば最近だと、「東京にいてホリエモンと飲んだことがない女子大生ってどういうことなの?」ってつぶやいているツイッターアカウントとか、つい面白くて見ちゃう。モテる女子大生に対する妬みみたいなものが、いまだに自分のなかにあるんだなとニヤニヤしながら見てます。

――確かに、そういうツイッターアカウントは結構、見かけます。

ジェーン:私は学生時代、男性にちやほやされるような女になりたかった。でも、実際はそうではなかったので、今でもそういう子たちが気になる。この年になると、それに付随してくる嫌なもの、若くて可愛いことだけに値段がつけられて、男性の付属品みたいに扱われて……というのもイメージできますよね。それで「自分には無理だな」と分かるし、別にやりたいわけでもない。若い時代にそれができなかったことで、「大きなものを失った」ということではないんだと、一周すると分かります。

「男性に甘えたい気持ち」を抑圧する必要はない

――「他人に欲望をあおられている」と知ると、悟りを開いて「じゃあ、私は何もいらないわ」ということには、なりませんか。

ジェーン:それは嘘ですよね。そこは正直になろうよ、と。

それからもうひとつ、アラサー女性で心配なのは、実は私もそうだったんですが、「男女は平等!」の「平等」をはき違えて、つじつま合わせのために自分の好きな男性の庇護のもとで甘えたいという欲求さえないものにする女性たち。

そうすると、どんどん澱が溜まってしまいますよね。甘えるくらい、好きな人に可愛がられたいというくらい、いいんじゃないの? 「本当は彼に可愛がられたい」、「自分の女性性を認められません」という質問もあったんですが、そういう気持ちを否定することは、まるでないと思います。

――「男性に頼る」ことと、男性に「依存する=コントロールする」ことの境目って、難しいかなとも思います。

ジェーン:他者に「頼る」時って、思い通りにならなくても憤慨したりとか、自分の価値がないとか、傷ついたりしないですよね。「依存」の時は、相手が応えないと、こっちの価値が下がるような気がしてしまう。

あと、「依存」は相手を試すんですよ。向こうがやりたくないこととか、苦手なことを、あえてさせることで自分への愛情を試す。「手首切ったから今すぐ来て!」とか、内向的な男性に対して「どうして私の友達に会えないの? 愛しているなら会えるでしょ?」と。それは依存であり、支配なのではないかな? と思います。

働くアラフォー未婚女性と、20代非正規雇用男性はわかりあえるはず

――女の人が、男性との付き合い方をはじめ、他者関係で「自由」になるにはどうすればいいでしょう。

ジェーン:私は、なるべく男性の「地雷」は踏まないようにしています。それはなぜかというと、逆にこっちが踏まれたら嫌だから。「どうせお前は結婚してないし子どももいないんだろう」と言われたら、それが事実だとしてもギャッとなる気持ちがあるので、だったら、相手にとっても同じ部分は踏まないようにしようと。その点で言うと、「社会的な弱者」と言われる男性の気持ちも、僭越ながら少しは分かるようになりました。

以前は、女性は「結婚して子どもを産んで、旦那さんをサポートする」、男性は「稼いで女性と子どもを食わせるのが一人前」というステレオタイプがあった。今でも皆、どこかでそれに囚われていますよね。「イクメン」が評価されるのって、それがスタンダードなことじゃないから。

親の世代から社会的にヨシとされるステレオタイプなスタンダードからあぶれてる人っていろいろいますけど、そのうち「稼いでるけど、子どもも旦那もいない女」と、「家族を養うほどの稼ぎがなく、コミュニケーション能力が乏しい男」というのが一定層いますよね。そういう「社会的なアウトサイダー」同士は、親と同じことができなかったチームとしてお互いの気持ちがわかるから、きっと相性がいいと思うんですけどね。

――スタンダードに縛られない人が増えると、社会全体もきっと変わりますよね。

ジェーン:みんなが、「女だからこうされて当然だ」とか、「女だからこれができなければ」という思い込みから自由になって、やりたいことを人に迷惑をかけずにやれる状況になれるといいなと思いますね。「女に生まれてこなければよかった」と思う人が少なくなればいいなと思いますし、そのために私で役に立てることがあるなら、やっていきたいと思います。

●ジェーン・スー プロデューサー・作詞家・コラムニスト。ガールズユニット「Tomato n' Pine」の共同プロデュースや作詞など。『相談は踊る』(TBSラジオ)に出演中。著書に『私たちがプロポーズされないのには、101の理由があってだな』(ポプラ社)、『貴様いつまで女子でいるつもりだ問題』 (幻冬舎)、最新刊は『ジェーン・スー 相談は踊る』(ポプラ社)。

北条かや

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