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2015/03/30
LGBTを取り巻く問題を語るシンポジウム

(左から右)石川大我氏、宮地基氏、小川チガ氏、山縣真矢氏、杉山文野氏、倉光ちひろ氏、関谷隼人氏

東京都渋谷区議会は現在、同性カップルに対して「同性パートナーシップ証明書」を発行する条例案を審議中である。公正証書の取得が必要など異性間の結婚とは異なる点も多いが、日本ではじめての地方自治体による制度ということもあり、賛否含め関心が高まるなか、実話をもとにした、レズビアンとゲイが主人公のイギリス映画『パレードへようこそ』が4月4日に日本でも公開される。

これに先立ち、3月18日に明治学院大学で、同大学のLGBT(レズビアン・ゲイ・バイセクシュアル・トランスジェンダー)サークル「カラフル」が中心となり、本作の試写会と共に、シンポジウム「LGBTもありのままでオトナになれる社会へ」が開催された。

10年後には10万人規模のパレードになってほしい

前豊島区議会議員で、LGBTの若者を支援するNPO法人「ピアフレンズ」の創設者でもある石川大我氏は、「お互い支え合い、手を差し伸べようという気持ちがなかなか持ちづらい今の日本の社会ですが、この映画は温かい気持ちにさせてくれる」と感想を述べ、「日本のLGBTの未来の姿を、集まっていただいたパネリストの皆さんと考えていただきたい」と挨拶した。

映画のあらすじ
1984年、イギリスは不況の只中にあり、サッチャー政権による20箇所の炭抗閉鎖案への反対運動が行われ続けていた。そのニュースを見たロンドンに住むゲイの若者マーク(ベン・シュネッツァー)は、レズビアンとゲイの若者たちに声をかけ、「LGSM(炭抗夫支援レズビアン&ゲイ会)」を結成し、同じ社会的弱者の立場から、炭抗夫とその家族のためにストライキ支援の運動を始める。

本作のハイライトはLGSMによる募金のためのコンサートや、マークが参加する「レズビアン&ゲイ・プライド・マーチ」。日本でもゴールデンウィーク恒例のLGBTプライドパレードは、本年より「東京レインボープライド」として動き出す。

その共同代表を務める山縣真矢氏は「10年後にはできれば10万人規模のパレードになってほしい」と未来への展望を語り、東京以外の地方での運動にも協力したいとも述べた。

山縣氏と同じく共同代表の杉山文野氏はもともと、パレードはレズビアン・ゲイが主体に見え、トランスジェンダーである自分と接点を持てなかったと言う。しかし、あるとき参加したところ、人権運動という側面より、フェスティバルとして楽しめたことから、活動の意義を感じたのだそう。

多くの人は何らかのカテゴリーでマイノリティ

『パレードへようこそ』のテーマのひとつである「連帯」について、同大法学部教授の宮地基氏は次のようにコメントした。

「マイノリティは実はマジョリティ。多くの人は何らかのカテゴリーでマイノリティなんです。性的指向、身体障害、難病、民族や、(自身を指して)はげ頭でマイノリティの人もいる。不当な差別を受けてはいけないんです。政治的な意見は様々だとは思いますが、少数派の人々が苦しんでいるときに、立場を理解できるかどうか。理解を表明できれば、今度は自分たちも支援してもらえる。そうやって連帯を築ければ日本での変化も期待できるのでは」

主催者の「カラフル」を代表して登壇した、同大学文学部芸術学科の倉光ちひろ氏は「4月には同サークルで新入生勧誘イベントにも参加予定だけど、参加者がLGBTまたはLGBTフレンドリーだと他人に知られることにもなる。今回のシンポジウム以上に緊張しています」と笑いを交えて述べたが、表に立って運動するうえでの不安もうかがわせた。

パートナーシップ制度の問題

シンポジウムでは、同性間のパートナーシップ制度の話題も取り上げられた。

山縣氏は「まずは制度上の平等を。そのうえで問題が俎上に上がるのでは?」「制度が使用されなければ意義を問われる可能性もある。そういう意味でも制度を使っていきたいし、使用後のレポートも続けていかなければ」と話し、制定がゴールではないと注意も喚起した。

杉山氏は「胸の除去手術は受け、男性ホルモン投与は行っている今の状態で僕は満足している」と自身の事例を挙げたうえで、「しかし、卵巣と子宮が未摘出の状態では、現在の法制度では戸籍上の性別変更ができず、現在のパートナーである “女性” と婚姻関係を結べない」と、性同一性障害特例法の問題と同性間パートナーシップ制度との関連性を指摘した。

LGBTが身近な存在であると知ってもらえたら

映画は、少数派のレズビアン・ゲイの日常と共に、多数派とされる炭抗の住人の生活もフラットに描いている点が見どころのひとつだが、日本の一般社会においては、LGBTの存在はまだまだなじみがない。

女性向けイベント&新宿二丁目のバー「GOLD FINGER」のプロデューサーである小川チガ氏は、本作の時代設定に近い1986~87年にロンドンに住んでおり、当時の出来事を語った。勤めていた本屋で、同僚の70歳代のおじいさんが「ボーイフレンドがいるの? ガールフレンドがいるの?」と普通に尋ねてきたのが印象的だったそう。

倉光氏は、「LGBTという言葉は普及しても、男女で分けるのが一般的。健康診断などで戸惑う当事者もいる」と日常生活での問題を話題にした。

早稲田大学公認LGBT学生団体として発足し、現在NPO法人の「Re:Bit」で副理事を務める関谷隼人氏も、「女性として就活をするとその後の人生も定まってしまうのでは」と考え、メンズ・レディス両方のスーツで就職活動を行ったという、就活学生ならではの困難を語った。そういった体験を通して、「就活段階でカミングアウトする人、就職してからする人、するつもりもない人。色んな選択肢が減らない社会にしたい。自分でフラットに選べるよう学生向けのセミナーを行っている」と言う。

先述の渋谷区のパートナーシップ条例の検討委員会に、当事者として意見を求められた杉山氏は、同委員会から氏に対して「こんな普通の人なのか」という声が上がったと明かした。さらに、「水商売、タレントだけではない、身近にLGBTが存在しているという体感が条例案提出に拍車がかかったのでは」という見解を示した。

小川氏は「LGBT当事者が一般の人たちと普通に混じって、これが私です、セクシュアリティは自分の中での一部ですと言えるようになれば」と希望を述べた。

LGBTを取り巻く問題を語るシンポジウム

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パレードへようこそ
2015年4月4日 シネスイッチ銀座ほか全国順次公開

鈴木みのり

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