教えて!ブルボンヌ先生「ワガママと自由の境界線」
仕事も遊びもノリにノッてるアラサー女性。しかし人生の分岐点にさしかかると、「この自由を謳歌してもいいの? これってワガママ?」と不安になることも……。たくさんのオトコとオンナを見てきた女装パフォーマーのブルボンヌさんに、揺れる心を相談しましょう。
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ブルボンヌが教える「ワガママな生き方」

職業選択の自由も定着し、お金も自分で稼げる現代女性。でも人生の分岐点で「これって私のワガママ?」と思い悩むこともあるはず。女の自由とワガママの境界線に揺れる心を、女装パフォーマー・ブルボンヌさんに聞いてもらいましょう。

第1回 「思いっきり働きたい」

交際5年目、そろそろ結婚しようと思っています。彼は結婚したら子供が欲しいと言っていますが、私は出産してキャリアを中断したくありません。世間は少子化が問題になっていますが、今の仕事を続けたいんです。これって私のワガママでしょうか?(29歳・IT系)

    これはワガママではなく日本の問題よ

みんなが迷っている問題ね。今現在、働いていて、これからも働き続けたいと思っている人にとって。

これはもう、アナタだけでなく日本全体の問題なんですよ。1986年に男女雇用機会均等法が施行されてから、修正も繰り返され、書面上、女と男は同等に働ける体裁だけは整えられている。でもあれって実は女性が女性として働けるわけじゃないんだよね。たいていは、女性が男のふりをして、宝塚の男役とか、ピンクのスーツを着た井脇ノブ子先生みたいに、女性だけど男性的に生きなくちゃいけないのよ。

もしくは「あなたお帰りなさい、ご飯にする? お風呂にする?」という昔ながらの専業主婦的な良妻賢母になるのか、2つの真逆のコースの分かれ道を突きつけられる社会システムなんだよね。

同性パートナー法問題ともシンクロしちゃうんだけど、そういう性差の問題をきちんと理解してくれてる国では、男も女も当たり前のように育児休暇を取るし、男も女も当たり前のように育児をする。欧米諸国、とくに北欧とかの人権意識やジェンダー教育が進んだ場所ではそうなってきてるのよ。

    国が変われば子供も仕事も諦めなくていいの

アナタは少子化を気にしているけど、実は少子化って男も女もしっかり働いて一緒に子育てしてる国はけっこう解消できてるのよ。2013年までアイスランドは女性首相だったんだけど、実は彼女はレズビアンで同性婚までしていた人物。以前のアイスランドは男社会だったんだけど、2008年に経済が破綻しちゃったのね。その原因を第三者機関が分析したら、大手銀行3社のトップが全員男性で、男性型経営特有の、ギャンブル性が高い経営をしていたとわかった。それが破綻の原因なのではないかという結果が発表されて、その結果、女性にがんばってもらおうとヨハンナ・シグルザルドッティルさんが首相になり、銀行大手3社のうち2社のトップも女性になったり管理職の女性が増えたりと、女性が伸び伸びと働ける環境が促進されたの。その結果、経済はぐんぐん回復したのよ。

日本っていわゆる先進国の中では、女性管理職の割合が極端に低いんだよね。こういう話をすると、「ただでさえ女が強くなってるのに、さらに俺ら男たちを虐げるのかよ……」とストレートの男性は思いがちなんだけど、きっと今いる数少ない女性上司は、必死に男ぶらなきゃいけないシステムのせいで、必要以上に厳しい姿勢を見せてたりする弊害のような気もするわ。

ちなみに少子化についても、たとえば勉強不足の人は「女性が仕事に就いたり、同性パートナーを認めたりしてると、産んでくれる人が減って少子化が進む」と安直に考えがちだけど、世界を見れば、性差に柔軟な職場環境を整備したり、同性パートナー法を認めていたりと、性の問題について考えている国のほうが、むしろ少子化が改善されている例も多くあるのよ。

男も女も一緒に働いて、社会みんなで子育てするんだよという緩やかな考え方が広まって、「ともに働き子育てする人間」という通りができれば、「仕事する男」か「育児する女」の左右2つの分かれ道じゃなくなるのにね。このお悩みは、あなた個人のワガママなんかじゃなくて、今の日本社会だからこそのお悩みなのよ。

    いまはまだ、男社会が女を「活用」しておこうという段階

アイスランドじゃないけど、男社会でいったん経済破綻するくらいの痛みがないと気づけないってのは悲しいわよね。日本も、女性が輝くと言っていながら、結局そこには、弱って来た男社会をサポートさせるために女性を「活用」しとこうという発想が見えている。産休の期間をただ延ばしても、そんなに休んだら職場に戻る場所がなくなっちゃう。そうじゃなくて、旦那と数か月交代で取ったりして、夫婦ともにフレキシブルに会社とつながり続けられて、子育ても諦めない環境を作っていかないとね。

アナタは今29歳だから、キャリアを継続して、子どもを持つことを先延ばしにしたら、将来、体力面でも子育てが大変になるかもしれない。旦那さんが産んで欲しいと言っていて、アナタ自身も仕事の問題以外では産みたいと思っているのであれば、日本ではまだ少ないけれど、旦那さんと一緒に子育てしながら歩む道を、選択してくれたらいいのになと思うんだけどね。

    「通してくれ」と声を上げて、初めて道はできるのよ

でも、法律の制定を待ってられない場合は、自分で動くしかないのよね。どうしても仕事が大事で、「子供ができたことでそれが脅かされるから嫌」っていうなら、それはそれでいいのよ。でもそれを選んだときの旦那さんの気持ちとか、母体のタイムリミット、子どもを作らなかった老後の2人の関係性についてもしっかり考えてみてもいいんじゃないかしら。

仕事を大切にしているのはカッコいいけれど、子供を作れる体があり、子供を作ろうよと言ってくれている彼氏がいるなら、両立の道を模索することにチャレンジして欲しい気もするな。社会がお仕着せした女の2つの分かれ道のどちらかを、結局踏み固める側になっちゃうのはくやしくない?

「あそこに行きたい!」と声を上げる人がいなければ、社会は道を作ってくれないから。アナタと同じように、仕事と育児を夫婦両方でしたいと本気で考える仲間を増やして、みんなでそこを踏み固めていくチャレンジ精神を持ってみたらどうかしら。でも、道なき道を行くのは、性的少数者がイバラのケモノ道だったというのと同じで、嫌なことを言う人もいるだろうし、制度が追い付いていなかったからこその大変な苦労もする。アタシも別のケモノ道から口先で言ってるだけで、責任は持てないしね。それでも、新しい道を作ることに挑戦している女性たちを、アタシは羽根扇子でも振って応援するからね~!

(構成:穂島秋桜)

●ブルボンヌ
女装パフォーマー、エッセイスト、タレント。新宿二丁目のゲイミックスバー「Campy! bar」をプロデュースするなと多方面で活躍。『週刊ニュース深読み』(NHK総合)『ハートネットTV』(NHK Eテレ)『ペケ×ポン』(フジテレビ)、『オンナnoミカタ』(NHKラジオ第一)などに出演するほか、関西テレビ『ゆうがたLIVEワンダー』水曜日コメンテーター、山梨放送YBSラジオ『キックス』金曜日パーソナリティーのなどレギュラーも務める。
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