「自営業、子持ち、地方在住」が最も幸福

筧裕介さん

「ずっと都会で暮らしたいの?」
「そろそろ地元に戻ろうかな」
「どこか地方で暮らしてみようかな」

東京でバリバリ働く女性の中には、毎日、仕事に追われるばかりの生活でいいのかなと疑問を持ち、生まれ故郷に帰ろうと思ったり、もっとマイペースに生きていくことができる、“どこか”へ移住したい、と一度は考えたことがある人もいるのでは?

とは言え、いざどこかへ移り住もうと思っても、現実的には東京のように豊富な仕事はなく、アラサーにもなると、そこそこお金を稼ぐことができるようになり、ついずるずると居残ってしまう。けれど、仕事を優先して都会で働き続けることは、本当に幸せ……?

そんなモヤモヤを解決すべく、お話をお伺いしたのが、2014年に地域と幸せの関係性をテーマにした研究プロジェクト「地域しあわせラボ」を立ち上げた、筧裕介さん。「地域でしあわせに暮らす」とは何なのか、女性はそもそも何に対して幸福を感じるのか、アラサー女性が向かうべき町などについてお伺いしました。

人はどこに「しあわせ」を感じるのか

――まずは、「地域しあわせラボ」では、どんな研究をされているのか教えてください。

筧裕介さん(以下、筧):「地域で暮らす人々がしあわせになるには、何が必要だろう?」をテーマに、幸福のメカニズムを解き明かす“幸福学”の第一人者で、慶應義塾大学大学院システムデザイン・マネジメント研究科の前野隆司先生にご協力いただき、研究を進めています。

前野先生の研究では、人が幸せを感じる要因は、大きく分けると「やってみよう(自己実現と成長)」「ありがとう(つながりと感謝)」「なんとかなる(前向きと楽観)」「あなたらしく(独立とマイペース)」という4つの因子があり、これがそろうと、人は幸せと感じる。

僕は、神戸を拠点に様々な地域のソーシャルデザインをする組織「issue+design」 の代表として活動しているんですが、その考え方が町づくりに活かせるんじゃないかと思い、この4つの因子に、さらに雇用、経済、防犯、防災などに関連する「ほっとする(安全と安心)」を加え、この5つの因子を“地域のしあわせ5指標”としました。これを調査することで、暮らす人の幸福度がどうしたら高まるのかを知り、町の将来のビジョンに役立てていこうと考えています。

その研究の一環として、20歳から64歳までの日本全国、その地域に3年以上住む男女1万5,000人に、インターネットでのアンケートを実施しました。その結果を「しあわせな地域ってどんなところだろう?」「しあわせな地域には何があるのか?」「働き、産み、育てるしあわせ。女のしあわせ」などのテーマに分け、分析しています。

給与額が高い県ほど幸福度が下がる(東京以外)

――どんなことがわかりましたか?

:まず、お金と幸せの関係についてですが、僕たちが調べている“非地位財型”では、東京を除き、個人のもらえる給与の額が高い県ほど、幸福度が下がることがわかりました。

幸福学の世界では、幸福には2種類あるとしていて、ひとつはお金、立場、モノを求める“地位財型の幸福”です。そして、もうひとつは、精神的な満足感、充足感を求める“非地位財型の幸福”です。東京型の幸せは、どれだけ稼いでどれだけいいものを食べていいものを買ってという生活価値観を求めて人が東京に集まっているので、給料の高さと幸せが比例していますが、近年では、自分の豊かな非地位財型の幸福を実現するかというところにシフトしてきています。

そう考えると、沖縄は給与額が平均25万円ながら、ダントツで幸せ度数が高く、続いて、幸福度指数の高い県は、平均25万円ちょっとの鹿児島、宮崎、熊本などが続いています。一方で、愛知、埼玉は、月額の給与額が平均30万~35万円と高収入ながら、幸せ度数は最下位に近いという結果が出ています。

“しあわせ係数”の高い女性は「自営業」「3人の子持ち」

――女性の幸せに関することで何かわかったことはありますか?

:職業別の幸せの結果が、とても興味深かったですね。もっとも幸せ度数が高いのは自営業で、専門職、公務員と続きます。そこから、少し差が開いて、専業主婦、また少し離れて、会社員、役員、パートアルバイト、大きく離れて無職という結果が出ています。これは、日本において会社員の女性はまだまだ暮らしにくい環境ということを示していると思います。

それから、女性は配偶者がいた方が幸せと感じる人が多く、子供の数が、ゼロよりも1人、1人よりも2人、2人よりも3人と、幸福度が高くなっていく、という結果が出ています。ただ4人以上になると、経済的な理由などからか、3人を下回ります。女性が幸せを感じているかどうか、47都道府県別のランキングでは、1位はダントツで沖縄県、続いて、鹿児島県、熊本県、宮崎県と続き、基本的に子供をたくさん産む県の方が、幸福度が高いという結果が出ています。

――都心では、出産したら仕事をやめる、という風潮もあると思うのですが、仕事と出産を両立しやすい県はあるのでしょうか?

:島根県や福井県、佐賀県、宮崎県などが共働き家庭の方が多く、しかも、平均で2、3人の子供を育ています。女性の社会進出が出生率を減らすのかという議論がよくされるのですが、そんなことはありません。世界的にみても、社会進出している国ほど出生率が高いんです。日本では、東京の会社員の女性は、晩婚晩産の傾向があったり、1人は産むことができても、2人、3人と産んで仕事を続ける環境が整っていない、ということが言えると思います。

>>【後編はこちら】都会に集まる女たちと、田舎に残る男たち―地域活性のプロがすすめる、いま婚活に適した街

●筧裕介(かけい・ゆうすけ) 東京大学大学院工学系研究科修了(工学博士)。1998年株式会社博報堂入社。2008年山崎亮氏らと「issue+design」 設立。著書に『ソーシャルデザイン実践ガイド』『地域を変えるデザイン』など。グッドデザイン賞、日本計画行政学会・学会奨励賞、竹尾デザイン賞、Biennale Internationale Design Saint-Etienne 2013(フランス)、Shenzhen Design Award (中国)ほか受賞多数。 「社会の課題に、市民の創造力を。」issue+design、課題解決人材を育てるSocial Design School「地域みらい大学」/

上浦未来

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