田房永子さんインタビュー(中編)

>>【前編はこちら】風俗嬢を褒めたりけなしたりする男たち――アダルト雑誌の女性ライターが訴える、男の価値観への疑問

アダルト雑誌で数少ない女性ライターとして働きながら、感じたことをまとめた『男しか行けない場所に女が行ってきました』(イースト・プレス刊)が刊行されたばかりの田房永子さん。ちょうど同じ頃、アダルトメディアに携わってきた筆者が、お話を聞かせていただきました。今回は、子供の頃から抱いていた違和感や風俗に対する女性の見方などについて伺います。

    理不尽なことに敏感すぎた少女時代

大泉りか(以下、大泉):小さい頃は、どんな少女だったんですか。

田房永子さん(以下、田房):「なんかおかしくないか?」「どういうことなのか?」と疑問が常にある子どもでした。信じられないほど意地悪な小学校の先生をはじめ、親、痴漢、大人たちから理不尽な目に遭うことが多くて、それがどういうことなのか大人になったら分かるはずだ、と思って、理不尽レポートを記録してました。「今日、○○私にひどいことを言った、先生はなぜそんなことをするのか」とか書いてましたね。

大泉:「この恨み、忘れまじ」みたいなね。

田房
:そうですね。それが本につながってるのかも。ツイッターで「田房永子は『危険』の感受性がない」って呟かれたんですよ。「『危険』の感受性がないから、風俗潜入とかができるんだ」みたいな。でも、「逆じゃね?」って思う。あるからすごく気になって入って行っちゃうんじゃないかなと、自分では思います。理不尽なことに敏感すぎるのは子供の頃からですね。

大泉:違和感に気が付きすぎてしまう才能ですよね。でも、その才能があるからこそ、気が付いてしまって苦しい。車内でオジサン週刊誌の中吊りを見て、なんも感じないでいられる人もいるわけじゃないですか。けど、その中吊りから、ちょっとした違和感や気持ち悪さを感じる人もいる。生きやすいのは前者だけど、作家としては後者の才能が必要ですよね。田房さんが今回出された本は、その才能が遺憾なく発揮されていると思います。

    男しかいない場所で男たちがどんな話をしているのか、女の私は絶対聞くことができない

田房:りかさんって家でひとりで仕事してるんですか?

大泉:そうです、そうです。もう家からなるべく出たくない。家が最高。ノマドとか信じられません。

田房:わたしも会社勤めがすごくつらかったです。

大泉:ああ、わかります。わたしも前に出版社にデスクがあった時は、やっぱり電話を取ったり、お茶を出したり。別にバイトのコがいたから、そっちに任せればいいんですけど、でも、「女なんだからやらないと」ってつい思っちゃうところがあって。「出される側も、女のコが持ってきたほうが嬉しいだろうし」とか自発的にやってる部分もあるんですけど、やっぱり社会には、薄くそういう雰囲気がありますよね。

あと社会に出て思ったのは、男性って年功序列に、本当にこだわるんだなぁってこと。そりゃ、女でも一応先輩には気を使うけど、社会に出たら、上下3つくらいなら、ほぼ同世代って感じで付き合うじゃないですか。友達とか、実際、「いくつだっけ? ああ、そんなに年下だったか」とかよくあるし。

けど、それに比べて男性ってけっこうこだわりますよね。1歳年下なだけで後輩扱い。「○○さんっていくつだっけ?」って尋ねると、「俺のひとつ上だから」とかすぐに出てくる。とある男友達が自分が幹事で飲み会をする時は「自分よりも年上の男性は呼ばない」って言ってたことがあって。

田房:おおっ、うざっ、やだ、そういう人。ちゃんと計算してるんでしょ?

大泉:もちろん、もちろん。

田房:この本に出てくるW氏(育児は妻に任せっきり。『毎日終電まで仕事がある』と言い、終業から終電までの数時間を男友達との飲みや風俗通いに使っている男性)みたい。彼も結構そういう感じで、男同士の上下関係に敏感です。

大泉:知人男性3人と田房さんで、取材でガールズバーを訪れた時に、男性が全員とも、「一番媚びが感じられない、ショートカットのダンサーがいい」って言ったっていうエピソードに登場する男性ですよね。

田房:その時同席していた知人男性にあとで聞いたら、「メンバーに田房さん(女性)がいたから、ぶりっ子キャラじゃなくてボーイッシュな女の子がいいと、カッコつけた部分もある」って言ってました。なにそれ……って感じ。風俗の内容を取材することはできても、男たちが本当はどんな話をしているのかは、女の私は絶対聞くことができないんですよね。

    「夫が風俗に行ったら許せない、気持ち悪い、汚い」と思っている主婦に読んでもらいたい

田房:わたしの同級生の話なんですが、「もし彼氏が風俗に行ったら?」っていう話題で、「汚い、絶対別れる」って全否定してたコがいたんです。でも、結婚して子供が生まれたら今度は「セックスって面倒くさいからやりたくない。旦那は風俗でも行って一人で処理してきてって感じ」って言い出した。あんなに嫌ってたのに、今度は丸投げ。

大泉:ようするに、自分と地続きだっていう意識がないんですよね。別世界の話というか。

田房:彼女はとてもマトモな人で、高学歴だし立派な資格も持ってる。だけど風俗とかに関しては、異様なほどに漠然とした情報しか入ってこないわけですよね。わたしの漫画とかにも興味ないし(笑)。でも、この本はそういう人が読んでくれたらいいな、と思って書きました。

大泉:なるほど、たしかに正義っぽく見えるんですよね。「結婚しているのに、風俗に行くだなんてけしからん」って。けど、その正義って、実はものすっごく暴力的だし、臭いものに蓋をしているだけ。

田房:彼女たち、全然知る機会がないじゃないですか。風俗って、女の人がいて、何かをするってことはわかってるけど、その何かがわからない。昔は「トゥナイトⅡ」とかの深夜番組で、ノーパン喫茶のレポートとか流れてた。テレビで紹介してたから、なんとなく入ってくる情報くらいはあった。だけど今はそれすらもない。主婦と風俗嬢って、実はお互い、ものすごく近い距離にいると思うんですよね。夫が風俗に行ったら、主婦がやりくりしてる家計の一部がそこに落ちるわけだし。

>>【後編につづく】「男は好き。でも全員死ねとも思ってた」 アダルト雑誌の女性ライターが説く、男と女の埋まらない溝

大泉りか

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