子連れのマナー違反がどこからか?

インターネット上では日々、置かれた立場の違う人たちが意見をぶつけ合っているのを見かける。男性対女性、高齢者対若者、子どものいる既婚者対独身者……など。人と人は本来意見の違いがあって当たり前。それを前提に話し合いをスタートさせるべきなのだが、やっぱりなかなか難しい。それでは意見が異なるように見える人と実際に会ってみたら、どうなるのだろうか。

今回お話を伺うのは、ライターの大宮冬洋さん。大宮さんは昨年、「日本男子は、なぜベビーカー女子を助けないのか」(プレジデントオンライン)という記事を書いた際に物議を醸した。その後、「筆者はなぜ「ベビーカー」で炎上したのか。最大の失火原因は文章の嫌み。」(Yahoo!個人)で記事についての反省も書いている。

一方、私はこれまで働く母への取材を多く行ってきた。公共交通機関を使うたびに神経をすり減らす子ども連れの話などをよく聞くので、大宮さんの記事には正直「実情を知らないのでは?」とも思った。意見が異なるからこそ、新しい発見もあるかもしれない。大宮さんと、ネットでたびたび話題となるベビーカーなど子育て問題について話してみたいと思った。

※対談の前提としては、大宮さんも私も、既婚・子なし。どちらも子育て経験はないのだが、子育てについては社会全体で考えていくべきことで、当事者だけの問題にするべきではないという思いがある。

男性対女性というよりは子どもがいる人といない人の断絶

小川たまか(以下、小川):記事に対しては女性からの批判も多かったと思いますが、反応を見てどう思われましたか?

大宮冬洋さん(以下、大宮):記事の書き方に配慮がなかったというのは事実です。電車や駅でベビーカーが絶対ダメとは思っていないので、自分が気になった家族連れのケースだけ「こういうベビーカーの使い方だけはやめてほしい」と書けばよかった。余計なことまで書いてしまった。

反応は(ツイッターで)コメントが1万3,000件以上ついたり、ブログにもコメントが来たり……。罵詈雑言も多かったので全部は見きれなかったけれど、その後知人からも記事のことをいろいろ言われました。聞いてみると、男性対女性というよりは子どもがいる人といない人で意見の断絶があるんだなと思いました。実は、数人の女性から「私もかなり(大宮さんと同じことを)思っていた。でもあれ言っちゃうと怖いから言えないけど」って言われたりして。女性からそう言われたのは意外でした。

小川:大宮さんが気になるベビーカーの使い方とは、たとえば……。

大宮:たとえば、夫婦2人でいるのにベビーカーには大きな買い物袋を乗せて子どもを抱っこしている場合とか。一方が荷物を持って、もう一方が子どもを抱っこすればいいんじゃない?って思ってしまう。でも、記事を読んだ子どものいる知人からは「子どもが2人いたらどうする?」とか「実際子どもがどのぐらい重いか知ってるの?」と言われて。確かにおぶったことはないなと思いました。

「乳幼児連れで三越・伊勢丹」はOK?

小川:重さとしては米俵か、それ以上ですもんね。

大宮:あと言われたのが、「好き好んで混雑の中に行っていないよ!」と。満員電車を避ければいいじゃんって簡単に言うけれど、今は待機児童の問題もあるし電車に乗らないと預け先の保育園に行けない人もいるって言われて。それは想像力が乏しかったなと思いました。僕は普段愛知県に住んでいるからということもあるのかもしれないけれど、愛知県ではみんな基本的に自動車で移動しているからベビーカー自体あまり見かけません。東京にたまに戻ってくると「なんでこんなに混んでいるところにわざわざ子ども連れで来ているんだろう」って思ってしまうんです。個別事情を聞くと、仕方なく連れてきてる人も多いと思うんですけど。

話が少しずれるかもしれないですけど、日本橋の三越とか行くとベビーカーの人が結構いますよね。伊勢丹もそうだけど、デパートに乳幼児を連れてくるってどういう感覚?って思うんです。ここは大人が買物する場所だよね?と。ららぽーとやイオンモールで家族連れなのはわかる。でもデパートは生活必需品を買いに行く場所ではないし。それは飲み屋もそうだし、観劇もそうだと思うんですけど、ある程度は住み分けをするべきじゃないのかなと。子どもが一緒でもどこでも行けるというのは、ちょっとどうなのかな……。

小川:少し前に女優の山田優さんが居酒屋に赤ちゃんを連れて行ったという記事が出て、それについても賛否両論があがっていました。

大宮:地方によっては子連れで飲み屋に行くのも寛容な地域があるみたいですよね。僕も勝手に、38年前に埼玉県で生まれたという自分の常識で言っているから……。その頃はベビーカー問題なんてなかったし、親の行動範囲も狭かった。今はかなり常識が変わってきているのだとは思います。

どこからがマナー違反なのか

小川:10年以上前の話ですが、私の両親も言い争っていました。父が「居酒屋に子どもを連れてくる親はちょっと……」と言って、母が「そのぐらいいいじゃない」と。家庭内でも意見が合わないぐらいなので、そりゃ世の中で意見が合わないよな、と思います。

大宮:なんだろうなあ、この違いは……。僕は結婚した後に妻の実家がある愛知県に住み始めました。田舎の暮らしは低コストだし楽しいけれど、それで諦めたこともたくさんある。何かを選択するときは何かを諦めることも必要だと思うので、子どもも欲しいしライブにも行きたいしデパートにも行きたいしって主張ばかりする人を見ると諦めることも必要なんじゃないの?って思ってしまう。

小川:どこまでがOKでどこからがマナー違反か、わがままか、というのはケースバイケースでもあるし、すごく難しいですね。先日電車内で目撃した話なのですが、4~6歳ぐらいの子どもを2人連れたお母さんがいて3人で座っていたんです。そうしたらおばあさんが来て「子どもは膝の上に乗せなさい。当たり前でしょう」と。でも、膝の上に乗せる大きさの子どもかどうかすごく微妙なところに見えたんです。結局、お母さんが1人を膝の上に乗せて空いた狭いスペースにおばあさんが座りました。

大宮:僕だったら子どもは立ってなよって思うけれど……。まあ僕は子どもがいないから想像が及ばないところもある。

小川:私も子どもがいないですし、4~6歳の子を立たせるべきか膝に乗せるべきか、正直わからないですが、他の大人たちはみんなおばあさんに席を譲らなかったのに、子連れだけ責められるのもどうなのかな……って思って。

大宮:それはそうですね。若者立てと。僕はあの記事で女性の敵みたいになってしまったけれど、妊婦や高齢者の方には席譲っているんです。譲るの面倒くさいから座らないことも多いし。自分がある程度やっているっていう勝手な自信があったから、席を譲らない人とか我が物顔でベビーカーを押す人に対しての嫌な気持ちが原稿に出てしまったのかもしれません。

>>【後編につづく】子連れの母親は“弱者”なのか? 電車ベビーカー問題が並行線をたどるワケ

●大宮冬洋(おおみや・とうよう) 1976年埼玉県生まれ。一橋大学法学部卒業後、ファーストリテイリング(ユニクロ)に就職。退職後、編集プロダクションを経て2002年からフリーライターに。ビジネス誌や料理誌などで幅広く活躍。著書に『私たち「ユニクロ154番店」で働いていました。』(ぱる出版)、共著に『30代未婚男』(生活人新書)など。現在、愛知県在住。東京には仕事でほぼ毎週3日ほど滞在。実験くんの食生活ブログ

小川 たまか/プレスラボ

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