弁護士が教える上司をサラリとかわす方法

毎日のように「結婚は?」と聞いてくる無神経な上司、ずるずると付き合ってしまっているヒモ男、断ってもやたらと食事に誘ってくる相手など、めんどうな人たちに囲まれ、ストレスに苦しむアラサー女子。反論したり、断るのも大変で、つい「ラクだから」と受け入れてしまいがちです。しかし、できることならば、うまく切り返し、その場を逃れ、ストレスをためこないようにしたいもの。そのためには、一体どうすればいいのでしょうか。

めんどうな人をサラリとかわしテキトーにつき合う55の方法』(総合法令出版)の著者であり、普段は、消費者問題や借金問題など、日々、めんどうな人たちとの交渉を実践する弁護士の石井琢磨さんに、そんな人たちをサラリとかわすコツをお伺いしました。

    みんな、もっとテキトーに生きた方がいい

――まず、この本を出されたきっかけを教えて下さい。

石井琢磨さん(以下、石井):人間同士のトラブルに関わる仕事をするようになり、みなさんマジメすぎる、と思ったんです。めんどうな人に絡まれているのに、自分が悪いと思ってしまったり、言われたことを素直に受け入れ、どうでもいいことを過大視して、いっぱいいっぱいになってしまう。そんなことで消耗しないで、うまくかわして、もっとテキトーに生きれば、人生が変な方向に行かなくても済んだのに、と思うことも多かったので、世にはこびるめんどうなシーンを集めて、サラリとかわす方法を提案しました。

――これまでに数多くの“めんどうな人”たちにお会いされたかと思いますが、石井さんにとって、どんな人がもっとも「めんどう」と感じますか?

石井:仕事上、詐欺師、ヤクザなど、いろんな方と関わりますが、解決に向かう上で、いちばん難しい相手は、一般の方です。例えば、離婚や相続の場合、お互いがとても感情的になっていて、長年の感情が積み重なっている人同士の問題は、本当にめんどうくさいことになりがちです。

「めんどう」という意味は、解決に向けて論理的にはいかない、ということです。感情が強く入ってしまうと、相手にどうしてもらいたいかの希望が、毎回変わるなど、一貫性がなくなるんですね。詐欺師の場合、相手は確信犯ですし、ヤクザも彼らのルールがあるので、比較的交渉しやすいです。

    ダメ男を引き寄せるのは、承認欲求の強い女性

――めんどうな男性を引き寄せてしまう女性には、何か傾向はありますか?

石井:例えば、男性にお金を貢いでしまうタイプの人は、自分の存在を認めてほしいという思いが強いですね。コンプレックスがあり、「私なんか」と自分を下げるように話してしまう。それで、自分の存在を認めてくれる相手を転々としてしまい、お金を貢いでしまう傾向があるのではないでしょうか。ヒモタイプの男性であったり、結婚詐欺師の男性からすると、女性の存在を認めてあげさえすればいいと判断され、お金が簡単に手に入ると思われてしまうのだと思います。

    「そろそろ結婚しないの?」はセクハラです

――アラサー世代の女性は、日常的に上司から「そろそろ結婚しないの?」と言われ、適当に愛想笑いで、めんどうな人を“かわす”人が多いと思うのですが、何か良い対処法はありますか?

石井:いちばん良いのは、やっぱり放っておくこと。上司側も、「さすがにもう言えないな」という年齢になったら言わなくなります。ただ、できればすぐにやめてもらいたい、と思っている方は、自分ではなく、他人から伝えてもらうのも手です。その上司と一緒に食事をするような男性の同僚がいれば、その時に「あいつ、本気で悩んでいるみたいですよ」「心療内科に通っているそうです」ということをさりげなく伝えてもらう。

それでも続けてくる場合は、相手側がその発言をしたことに対して“デメリット”を与えなければいけない。つまり、こちらが「めんどうな相手」と思われるようにするんです。その上司に、深刻そうに「結婚したいんですが、どうしたらいいんでしょう」とめんどうな相談をするのもいいでしょう。

法的には、嫌がっている相手に対し、繰り返し結婚の話をすることはセクハラにあたります。会社を訴えれば、基本的に会社から上司に指導がいきますので、抑制効果がすごくあります。しかし、経験上、大企業でない限り、訴えた後は会社を辞めてしまう女性が多いです。

上司個人に対して慰謝料を請求する場合、その上司が周囲に公言しなければ、ほかの人には知られません。ただ、本当に嫌だったら、直接ハッキリと伝えた方がいいと思います。訴えるまでの手順としては、請求書を送り、話し合いで解決できないなら訴えますよ、とステップを踏んでいきます。通常は、「マジメなメールを送る」という最初の時点でやむことが多い気がしますね。

    断るときの罪悪感は、「幻」である

――まったく気がない相手、直属の上司など、よく食事に誘われて困っている。けれど、うまく断れない性格で、いつもストレスを抱え込んでしまう、といった場合、うまく断るコツはありますか?

石井:「罪悪感は幻である」ということです。断れない理由は、結局、「断ったら悪い」という罪悪感でしょう。それは、性格というよりも、“経験”や“慣れ”です。本当は断るのに理由なんて必要なく、「今回はパス」と、ハッキリ断ればいいのですが、それができない場合、とりあえず何でもいいので、理由“らしきもの”を作る。「ミサイルが飛んでくるかもしれないので」でもいいんです。「ので」をつければ、納得してもらいやすいと思いますよ。あるいは、「超高級焼肉をおごってくれるなら行きます」とか、断るだけではなく、ムリな代案を出してみることも有効ですね。

    「事実」と「評価」を分けて考える

――どうしたら、めんどうくさい人をサラリとかわすような話し方ができるようになりますか? 練習方法があれば教えてください。

石井:まずは、「事実」と「評価」を分けて考えるクセをつけることです。たとえば、付き合っている彼氏や友人など、お金を貸してほしいと頼まれ、断ったら、「俺を見捨てるのか?」と大げさに言って、相手に罪悪感を与えようとする人がいる。相手の評価の土俵に乗ってしまい、「見捨てるわけじゃないけど……」というと、「じゃあ、応じてくれる?」となってしまいます。そうではなく、「断っただけだろ? 大げさだな」と、事実に自分の評価を加えて返す。

上司への報告のときも、「事実」と「自分の意見や評価」を分けた方がいいと思います。とくに、女性の方が事実ではなく、評価に同調し、共感しやすい傾向があるので、気をつけた方がいいと思います。

弁護士は、議論や交渉の研修は一切なく、いきなり法廷に投げ出されます。自分で学ぶしかないので、交渉術やビジネス書を何冊も読み込みました。普段から新聞を読む時にも、記者の意見なのか、単なる事実なのかを分けたり、話を聞くときも、事実と評価を分けるクセを意識してつけておけば、数か月で変わることができると思いますよ。

    自分の主張はテキトーに、全体の解決のみを目指せ

――最後に、日々、社内でめんどうくさい人たちに囲まれ、ストレスを抱えるアラサー女性にメッセージをお願いします。

石井:自分の感情をむき出しにせず、「自分のことはどうでもいいんです」、というテキトー感を漂わせて下さい(笑)。多くの人は、相手に好かれようとしたり、自分を人より上におきたいなど、相手と比較しすぎてしまい、ストレスになっていると思うんです。

私は、仕事の時は自分の意思もあまり伝えず、全体的な解決のみを考えます。みなさん、思いのほか仕事中にも感情を出して、物事をややこしくしちゃってるんですよ。私は、メールに「お世話になっております」も書きません。自分の意見やアピールはテキトーで良く、仕事を迅速にうまく進めるようにと考えています。自尊心よりも、社会への愛です!

●石井琢磨(いしい・たくま) 神奈川県生まれ、弁護士。相模川法律事務所代表。幼少時から家族が次々と壺を買わされ、自身も絵画・会員権を買うよう個室で長時間取り囲まれるという、ダマされ環境で育つ。弱者の生活を侵害する強者の存在に怒りを覚え、悪質業者と戦うために弁護士資格の取得を決意し、偏差値35から中央大学法学部に合格。1日平均12時間以上の勉強を続け、在学中に司法試験に一発合格。現在は、消費者問題、借金問題、交通事故などを中心に、弱者側に立ち続けた弁護活動を続けている。著書に、『めんどうな人をサラリとかわしテキトーにつき合う55の方法』(総合法令出版)がある。

上浦未来

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