ダル妊娠「300日問題」を弁護士が解説

先日、交際中である元レスリング選手・山本聖子さん(34歳)の妊娠を発表したテキサス・レンジャーズのダルビッシュ有選手(28歳)。後に「現在、妊娠4か月」と公表しましたが、当初、妊娠の事実だけが報道されたため、ネットではにわかに「300日問題にひっかかるのでは?」と話題になりました。

「300日問題」とは、離婚後300日以内に生まれた子どもは、前夫の子と、法律上推定するというもの。他にも、父親が混同することを防ぐため、女性は離婚後6か月の間、再婚できない「再婚禁止期間」という制度もあります。

ややこしい! なぜこのような法律が2つもあるのでしょうか。それぞれの制度の目的を、離婚や夫婦問題に詳しいアディーレ法律事務所の篠田恵里香弁護士に伺いました。

父親は婚姻後と離婚後の「日数」で推定

――「300日問題」と「再婚禁止期間」はどう違うのでしょうか。

篠田恵里香弁護士(以下、篠田):2つの制度は関連していますが、厳密には異なる目的があります。出産した場合、「母子関係」は、出産の事実から明らかですが、「父子関係」は必ずしもそうではありません。

そこで、民法上、生まれてきた子どもの父親を特定するために、「結婚している間に妊娠した場合は夫の子と推定する(772条 1項)」「結婚の日から200日経過後もしくは離婚の日から300日以内に出産した子は、結婚している間に妊娠したと推定する(772条2項)、すなわち結論としてそのとき結婚していた夫の子と推定する」と定めています。

――日数で父親を推定するのが「300日問題」なんですね。では「再婚禁止期間」とは?

篠田:「女性が離婚後6か月間再婚できない」とする規定(733条)は、さきほどの推定が重複することを避けるために設けられたものです。つまり、婚姻後200日の推定と、離婚後300日の推定が別の男性になってしまわないように設けられています。

ただ、この6か月の再婚禁止期間に対しては、「男女平等の見地から不当である」、「推定が被らないようにという趣旨であれば、再婚禁止期間を100日間に設定すればすむはずだ」などの批判が多く寄せられてきており、2015年2月18日には、「再婚禁止期間についての憲法判断が最高裁大法廷に送られた」として話題になっています。

ダル妊娠「300日問題」を弁護士が解説

※(注)この空白期間内に生まれた子供は「推定されない嫡出子」と呼ばれています。772条の推定を受けておりませんので、提訴権者や提訴期間の制限がある嫡出否認の訴えではなく、親子関係不存在確認の訴えで争う事ができるため、推定される嫡出子と比較して父子関係の保護が弱くなってしまいます。

「父親は前の夫じゃない」という場合は?

――離婚後300日以内に生まれた子どもの父親が、前夫ではない場合、母親が申し立てればよいのでしょうか。

篠田:「親子関係不存在」の調停を申し立てられるのは、子・母・父・親子関係について直接身分上利害関係を有する第三者とされています(参考:裁判所親子関係不存在確認調停)。ですから、母親はもちろん、相続に関わる人なども申立人になりうるといえます。

これに対して「嫡出否認の訴え(法律上父であることが推定されてしまうが本当は自分は父親ではないと主張する訴え)」ができるのは、「推定される父親」のみです。

「親子関係不存在」については、昨年(平成26年)7月に、画期的な判決が出ています。「長年父親として子どもを育ててきたが、実は血縁上の父ではなかった」というケースで、「親子関係不存在確認の訴え」を母親側から提起したのですが、親子関係不存在の訴えは認められないと最高裁は判断しました。いわば、「産みの親より育ての親」の父親バージョンを裁判所は認めたわけです。

裁判中、子どもは無戸籍に! どんな不利益が?

――父子関係の審議中は、子どもは無戸籍になりますよね。医療など行政的なサービスを受けられないなどの問題はあるのでしょうか。

篠田:調停や裁判が継続中、子どもが「無戸籍」になることから「行政上のサービスが受けられない」と誤解されている方もいるようです。しかし、その点は、行政側もしっかり配慮をしています。例えば、「親子関係不存在確認」の手続き中であることを示す疎明資料などを提出すれば、「住民票への記載」や「旅券(パスポート)の発行」等も行うことが可能です。

また、出生証明書により、子どもの存在と母親の存在が確認できれば、日本に居住している場合は「児童手当」や「児童扶養手当」も受けることができますし、「居住する地域の保育所への入園」や「母子保健に関する事業(母子健康手帳の交付,保健指導,新生児の訪問指導,健康診査等)」も受けることが可能です。市町村の窓口に問い合わせると詳しい手続きを教えてもらえますよ。

●取材協力アディーレ法律事務所(東京弁護士会所属)

(穂島秋桜)

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