大泉りかの秘告白部屋 ~女の闇は深く、生暖かい~
女の闇は深く、生暖かい――官能小説や女性向けポルノノベルで活躍中の人気作家・大泉りかが、知られざる“女の闇の真実”を解き明かす! 働いて、好きなことをして、充実した生活を送る。これらは、ごくシンプルで当たり前のことのように思えます。しかし、その『慎ましい望み』が『欲望』となると、途端に強い執着と依存とを生み出してしまうことも…。大泉りかの秘告白部屋、OPEN!
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男も仕事も渡り歩く根なし草の34歳

近年、IT機器を駆使し、オフィスではなく好きな場所で仕事をする『ノマド』という働き方が注目を浴びています。終身雇用制度が崩壊しつつある現代、『好きな場所で、好きな仕事を、好きな時間に』するノマドワーキングスタイルは、非常に魅力的にも見えます。しかし、自由であることには、引き換えに必ず不安が付きまといます。今回ご紹介するのは、仕事どころか人生をノマドしている女性。彼女は不安とどう対峙しているのでしょうか。

【住むところも仕事もさまよい続けるM子さん(34歳・フリーター)】

M子:わたし、ひとつの場所に安住できない性質なんですよね。もともと出身は九州なんですけど、東京に出てくる前は仙台にいて、その前は名古屋。で、その前は北海道。ずっとひとつの街にいると、その街そのものに飽きるっていうか。人間関係も含めて、「もうこの街はいいかな」って思うタイミングがあって、その度にすべてを投げ出して次の街に向かっちゃうんです。

――仕事とかは?

M子:うーん。選ばなければ、なんとなかってきました。まぁ主に風俗とか水商売ですけど、女ってだけで、若い間は、わりとどうとでもなわりとどうとでもなるるじゃないですか。しかも風俗や水商売なら、そのまま住むところまで見つかったりする。実は東京に来て5年以上たちますけど、わたし、自分で家を借りたことがないんです。

――えっ、どうしてるんですか? ネカフェ難民とかそういう……?

M子
:いや、さすがにそこまでは。普通にお店の寮に入ったり、人の家に転がり込んだり、男と同棲したり。今も、知り合いの人の家が一部屋空いてるからって、そこに居候させてもらってるんだけど、まぁ、その時々で、なんとかなる。というか、なってきた。でも、そろそろちょっと厳しいかなぁ、とは思うようになってきて。

    プレゼンや面接で、人と会うのが面倒くさくて逃げてしまう

――心境の変化が?

M子:そう。なにかしら『これ』っていうのがないと厳しいかなぁとは思うようになってきて。けど、『それ』が何なのかわからない。もう立派な大人なのに(笑)。

――自分探しの真っ最中ってことですかね。

M子:そういうんじゃなくって、「もしかして、これならいけるかなぁ」と思うことがあっても、そのプレゼンや面接をしに、人と会わないといけないのが面倒くさくて、逃げたくなるんです……っていうか、たいがい逃げる(笑)。で、だったらもういっそ、先に旅に出てしまって、その先でたまたま、見つけた仕事をするっていうほうが、やっぱり楽で。

――ある意味、見知らぬ街に行くことで、自分を追い込んでいるっていうことですかね。

M子:そうかもしれない。この間も、ちょっと思い立って大阪に遊びにいって、ブラブラしてたら天満っていう下町っぽい街にたどり着いて、雰囲気がいいなぁって思ったんです。東京に戻ってきてからも「そこに住みたいな」って考えてたんだけど、でも軍資金もないし、どうしようかなって悩んでます。正直、そろそろ東京も潮時かなぁって思ってるんで。

    男の人と泊まったホテルから出て、別の男性と再びホテルへ……

――東京にあなたを引き留めるものはないんですか? 友人関係とか恋人とか。

M子:いるはいるけど、別にどこにいても、今どき、ネットやなんだで連絡は取れるじゃないですか。それに交通手段もいろいろあるから、いつだって会おうと思えば会える。あと、恋人に関していえば、これまた、安住できない。

面倒くさがりっていうのもあるけど、そっちもふらふらと渡り歩いているほうが性に合うんですよね。実は昨晩も男の人とホテルに泊まってたんですが、ホテルを出て家に帰ろうとしたところで、別の男性から「会おうよ」って連絡が来て、で、再びホテル街に戻って、さっきまで一緒にいました(笑)。

――とことん根なし草だと。しかし、そういう人生に、不安とかってないですか?

M子:小さい頃から、わたし、とにかく怒られたりするのが苦手で。で、何か、怒られる気配を察すると、ひゅーって逃げてたんです。それがずっと続いてるんですよね。もちろん、漠然とした不安はあるんですけど、見て見ないふり……っていうのも、今までなんとかなってきてるから、これから先も「なんとかなるだろう」っていう、気持ちがありますよね。そう言うと、楽観的すぎるというか、「年を取ると今まで通りにはいかない」って言われるんだろうけど、そういうことを考えることが面倒くさい。一番逃げたいのはそこからですね。

立派な社会人として、社会に参加し、働きながら、日常生活をつつがなく営むのが、美徳であるという考えはいまだ蔓延しています。が、一方では、あらゆる価値観が崩壊した現在、誰かが決めたお仕着せの幸福ではなく、自分なりの幸せを見つけて生き抜くことを選ぶ人々も増えてきています。しかし、生きる上にのしかかってくる様々な責任を先延ばしにして放棄している以上、いつかそのしっぺ返しが戻ってくることも確かです。彼女は果たして、逃げ切ることができるのでしょうか――。

大泉りか

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