大泉りかの秘告白部屋 ~女の闇は深く、生暖かい~
女の闇は深く、生暖かい――官能小説や女性向けポルノノベルで活躍中の人気作家・大泉りかが、知られざる“女の闇の真実”を解き明かす! 働いて、好きなことをして、充実した生活を送る。これらは、ごくシンプルで当たり前のことのように思えます。しかし、その『慎ましい望み』が『欲望』となると、途端に強い執着と依存とを生み出してしまうことも…。大泉りかの秘告白部屋、OPEN!
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男の前でトイレに行けない38歳ギャル

最近では、すっかり誰もが知る言葉となった“トラウマ”。それによるPTSD(心的外傷ストレス障害)が、その後の人生に多大な影響を及ぼすことがあるということが、広く知れ渡ったお陰で、心に深い傷を抱えた人々が生きやすくなった一方、誰もがあまりに簡単にその言葉を使うことで、その傷の深刻さが伝わりにくくなっている部分もあります。今回、登場していただくのは、幼い頃の体験から自信が持てずに、依存することから逃れられない女性。「なぜ依存をしてしまうのか」を自己分析していただきました。

【仕事依存、買い物依存、男依存を繰り返すS美さん(38歳・フリーランスのデザイナー)】

S美:わたし、ものすごい依存症なんです。仕事依存、買い物依存に男依存。仕事は大好きなんですが、こういう世の中だとフリーでやっていくのも大変じゃないですか。で、ストレスが溜まると買い物で発散。でも、仕事が上手くまわらないと、お金がなくって買い物もできない。だから、そこで手っ取り早いのが、「男」なんですよね。

――なるほど、依存する先が連鎖していくわけですね。

S美:そう。けど、わたし、男の人と距離が上手く取れないんです。もともと生まれた時から父親がいなくて、一緒に住んだことや身近にいたことがないから、男っていうものにまるっきり耐性がない上に、初体験の相手にも、やり逃げされていて。それまでは仲良くしてくれていたのに、セックスをした次の日から、連絡が取れなくなっちゃったんです。ただでさえなかった自信を、そこでダメ押しで崩された感じで、今では男の人のことが一切信用できないんですよ。だから、いつも不安で、見捨てられるんじゃないかっていう気持ちがあって……。

初体験のあとに付き合った人は、バンドマンだったんだけど、「自分が何かをしないと会ってもらえない」みたいな感じに考えて「お金作ればいいんだ」って思って、キャバで働いたりして。でも、キャバも向いてないんです。お客さんがせっかくシャンパンを入れてくれようとしても「高いシャンパンなんて、もったいない。それだったら、アフターで何か飲みにいったほうがよくない?」って思っちゃうし、たとえ「楽しかったよ」って帰っていってくれても「社交辞令だったかもしれない」とか「あんなに高いお金払って、わたしと飲んで、そんなの無駄じゃないのかな」とか悶々と悩んでしまって。

チャラチャラしてみせて、相手が奥まで入ってこないようにしている

――自己評価がすごく低いように見えますが、でも、一見、ギャル風で気が強そうで、しかも男性にはモテそうに見えます。そこに少し違和感というか、不思議に思うんですが。

S美:それ、わざとなんですよ。こんな感じのルックスで、チャラチャラしてみせて、あまり奥まで入ってこないようにしているというか。防御線を張ってるんです。「どうせ、わたしなんて、セフレなんで」っていう。

――ああ、なるほど。そうすれば最初から傷つかないですもんね。見捨てられてもあまりショックを受けないように、最初から距離を取ってしまう、と。だけど、自信って持とうと思って持てるものじゃないですよね……例えばなんですが、安定のひとつの方法として、仕事に関しては正社員になるっていうのがあって、もうひとつは、これは違うかもだけど、一応、恋愛に関しては、結婚っていうのが、そのひとつの方法なのかなっていう気もするんだけど、そのあたりはどう思いますか?

S美:正社員でもいいんだけど、やっぱりわたしはデザインの仕事が好きで、で、もしも正社員になっちゃったら部署が変わっちゃう可能性があるわけで、それは絶対に嫌なんです。

――安定よりも、自分の好きなことを選んじゃうってことですか?

S美:そうかも。変なところで我が強いから。でも、結婚はしたい。お互いに思いやりを持った関係が欲しい。けど、わたし、どんなに好きな人とでも、長時間は一緒にいられないんです。お腹が痛くなった時にトイレにいけなくて。それを見せたら嫌われちゃうんじゃないかって思って、自分の家にいても、「コンビニ行ってくる」っていって、外に出掛けるんです。

人前でご飯を食べる行為がトイレを開けっ放しでするのと同じくらい恥ずかしい

――それは、根が深いですね。トイレくらい行っても男性は幻滅しないですよ。

S美:それがわからないんです。男性が近くにいなかったから。そもそも、小学生の時は、人前でご飯すら食べられなくって。小さい頃から食卓で、みんなでご飯を食べることがなかったから、人前でご飯を食べるっていう行為がトイレを開けっ放しでするのと同じくらい恥ずかしいことだった。そういうことを考えると、人と暮らすとかが、よくわからなくって。

もっと若い頃に、少しでも安心させてくれる人に出会えれば良かったのかもしれないけど、ずっと身体目当ての人と軽い関係ばっかり持ってきたから、普通の愛情に触れないままで大人になってしまって……実は、30歳を過ぎてから、2度だけ、ちゃんと男の人と付き合ったこともあるんだけど、反動でワガママばっかり言っちゃって。夜中でも「今すぐに来て」とか。で、結局ダメになってしまいました。

――甘えすぎちゃうって、それも依存かもしれませんね。

S美:うん。そのくせ、「落ち込んでる」ってツイッターとかで呟いたのを見たセフレなんかが、心配して家に来てくれたりすると、どうしていいのかわからなくてテンパっちゃうんです。「そこまでなんで入ってくるの? セフレでしょ?」って。だから、落ち込んでいる姿を見せないようにヘラヘラして、テンション高くしてっていうのをいつも装ってる。

当然のこと、心が休まらなくて疲れるから、男の人と長い時間いたくない。それを38年間続けてきたんですよね。満たされないから、どんどん他のものに対象を変えて依存していく。この依存体質って絶対に治らないと思ってるんです。どうしたらいいのかなって思うけど、とにかく、したい仕事があるのは幸せだし、いつかはきちんと男の人と向き合って付き合えるかもしれない。そういう希望はまだ捨ててはいません。

これだけはっきりと何が原因であるかを認識し、言葉にできてすらもなお、克服できないのがトラウマと呼ばれる心の傷。望んでいないのに与えられたそれが、すっかり身体の一部となってしまった以上、消化するのは決して簡単なことではないことが彼女の言葉から強く伝わってきました。貴女の心にも傷はありますか? あるとすれば、それはどんな傷ですか?

大泉りか

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