はあちゅうが考える「自分らしい仕事」

いまをときめくIT起業家・有名ブロガーたちに、働くアラサー女性たちの生き方のヒントを探る本企画。前回は、ネット時代の聖女・伊藤春香(はあちゅう)さんに、大反響の新刊『半径5メートルの野望』誕生の背景についてお伺いしました。

>>【前回はこちら】はあちゅう『半径5メートルの野望』はなぜ人の心を掴むのか? 大反響の裏側にある彼女の苦悩

今回は、引き続きはあちゅうさんに「自分らしい仕事とは何か?」というテーマのもとお話を伺います。

仕事は、不満があるところにこそ成長がある

――ここからは「自分らしさ」というテーマついてお聞かせください。

ウートピの姉妹サイトである『ウートピ世論』というアンケートサイトでは、「仕事に自分らしさは必要?」という質問に対し、約7割の方が「必要」と回答しています。女性にとって“自分らしく”というのは仕事においても重要なキーワードだと考えているのですが、はあちゅうさんにとって「仕事における自分らしさ」とは何ですか?

伊藤春香(以下、はあちゅう):今回の書籍は、カテゴリでいうと自己啓発本なんですね。ただ、自己啓発本はもう昔からやられているジャンルで、みんな同じようなことを書いている。つまり、成功者の思想というのは共通していて、意識がいくところはみな同じなんです。それをどのように自分の言葉であらわすかの違い。

私自身もそういった本をたくさん読んできたのですが、自分がその“強い考え方”を実践できないのは何故だろう、と考えていました。結果、今回自分が書くにあたって“腹落ちするようなエピソード、そこへ至るまでの自分なりのプロセスを付けて出す”という方法で、私らしさを出せたお仕事だったと思います。

――確かに、自己啓発本などを普段読まない女性でも、自分のリアルな日常に結び付けて考えることができ、共感するところが多かったように思います。

はあちゅう:完璧じゃない、未完成でいいんじゃないかと。『半径5メートルの野望』については、今の年齢での私なりのメッセージの伝え方ってなんだろうなって思ったら、葛藤している姿をそのまま見せることじゃないかと思ったんです。

「私だって成功したい、けれどまだそこまで行っていない。でも、今の時点ではこう思っています」と著すことで共感をしてくれる人たちもいるのだな、と今回は感じています。仙人みたいにならないように、と気をつけながら(笑)。読み手が「それはできないだろ」とならないよう、自分が本当に伝えられる部分だけを考えて書きました。

――アラサー世代には「頑張っているのになぜ認められないのか」「こんな雑務をなぜ私がやらなきゃいけないのか」など、色々な不満をもって仕事をしている女性も多いと思います。

はあちゅう:私も自分の仕事に常に不満はあるんです。でも、不満があるところにこそ成長があるし“仕事はそういうもの”と受け入れることがまずひとつでしょうか。またもうひとつは、その不満を感じる部分にこそ、もう少し深く考えるポイントがあるのでは、と捉えてみること。イライラを感じて思考停止せず、「なぜ私はここにイライラするんだろう」と考えることで、その先に成長があるはずなんです。

次に進みたいなら、いま大事なものを捨てる

――ただ、その仕事の不満が原因で転職を考える女性も多いはず。自分がその職場にいるべきではないというサインはどう感じ取るべきでしょうか?

はあちゅう:電通やトレンダーズにいたときの私も「これでいいのかな」と考えることが多くありました。そんなときは、理想の自分から逆算して考えることが大切だと思います。たとえば、私にとってあるWEB媒体と紙の雑誌(『AM』と『anan』)で2年間続けてきた連載はとても思い入れの強いものでした。

評価は好評で、読んでくださる方も多かったのですが、それらをあえてやめることにしました。それは、「これを続けた先、自分はどこへ行きたいんだろう?」と考えてきた結果なんです。恋愛というテーマはずっと書き続けたいものですが、“この書き方で、これを5年後もやっていたいかどうか”と考えたときに、私はもうちょっと新しい分野を切り開かねばと思ったんですね。

――つまり「理想の自分」に向き合うことが大事だと。

はあちゅう:たとえば社内にすごく憧れの先輩がいて、「ああいうふうに5年後働いていたい」だとか、「いまのサービスを5年後こうしたい」とか。自分の考えられる範囲でいいのですが、2、3、5年後と、ちょっと先の未来に自分が今の会社で働いてるイメージが持てるのならばその場にいるべきですし、逆に、ほかにやりたいことあるのであれば、そちらへルート変更してみてもいいんじゃないかな、と思います。“理想の自分はこの仕事をやっているのかな”ということを常に考えてみるといいのだと思います。

“アラサー負け犬”を演じなきゃいけない番組は受けない

――「まだまだ自分らしく働けていないな」と感じているアラサー女性へのヒントってありますか?

はあちゅう:「好きなことをやること」かと思います。私も6年弱にわたり社会人をやってきて、そのなかで「自分らしく働けてないな」って思ったことは何度もありました。それは会社の方針的に言わなきゃいけないことが自分の主義主張とちょっと違ったりとか。いろんな場面で“自分らしくない選択”を、社会人であればしなきゃいけないときがやっぱりあると思うんです。

――はい、おっしゃるとおりです……。

はあちゅう:あと重要なのは「目的と手段を混同しない」ということですかね。たとえば、テレビ出演のオファーをいただいたときに、あらかじめテーマが決まっているとする。「おもしろい姉妹っていうので出てくれませんか?」と。そうすると“こういう風に演じてほしい”みたいな考えが番組を作っている方々には既にあるんですね。

以前は“目立ちたい!”という気持ちのほうが強くて、テレビの出演オファーってやはり人生でもなかなか無いことだから出てみたいと思っていたのですが。最近では、出たいとは思うものの、何かのコマとして出たくないと思うようになってしまいました。「これは自分らしい仕事かな」とか、「自分の言いたいことと合致してるだろうか」とか。

たとえば恋愛関連のお仕事でも、“アラサー負け犬”という立ち位置にされがちで。でも私、あんまり“負け犬”って思ってないんです。今も、選択して独身で、結婚したいって渇望しているわけでもないので、その役割を押し付けられることは自分らしくないから出たくないって思ったりとか。

会社員という安定ポジションは何かとのバーター

――普通の会社に勤めていると、どうしても会社に言われた通りに、そこに合わせてしまう人が多いのかな、と思います。

はあちゅう:そうですね。それを受け入れても、別の部分で自分らしさを出せる場面があったりだとか、会社にいるメリットが多いならばそれでもいい。会社員という安定的なポジションは、常に、いろいろなもののバーターだと思います。お仕事をいただき、お給料をいただくということで、100%自分の思い通りにやりたかったら、もう自分で起業して、いちから全部仕事も作り、やりたいようにやるしかない。

でも、会社員だったら絶対、曲げなきゃいけない部分はあると思うんですよ。周りがみんな朝9時に来てるのに「私らしく働くには10時です」って言ったら、そんな奴は当然ながら会社としては欲しくないじゃないですか。そこはもう自分の主義とか、好みとか曲げても、会社にいるメリットが大きい、あるいは会社のビジョンにすごく共感するのであればそこにいたほうがいいと思います。全部思い通りにやりたいんだったら、思う通りにできる環境を探したほうがいいと思います。

――会社にいることで、自分がどういうメリットを得ているのかっていうのは改めて考えたほうがいい、と。

はあちゅう:“メリット”っていうとすごく難しいんですけど。会社にいて、自分が成長できているか、とか。やっぱり一緒に働く人にこそ刺激をもらうと思うんですよね。仕事の時間って一番長いと思うし、その人たちと長く一緒にいて、それが楽しいかどうかは、大事かなと思います。一緒にいる人に同期して、同類になっていくので。それでもいいかどうか……ですかね。

――つまり、「自分らしくいられる職場」であることも大事だということですね。

はあちゅう:「こういう人と一緒にいたいな」「こんな人になりたいな」っていう人と一緒にいればそうなっていくし、「こんな仕事の愚痴ばっかり言ってるようなオッサン達とばっかり一緒に仕事してらんない!」って思うのならば、それはやっぱりいるべき場所じゃないんだと思います。

次回は、はあちゅうさんの考える「自分が自分らしくいられるための環境づくり」というテーマのもと、理想の友達や恋人づくりについてお話を伺います。

>>【次回につづく】「ひとりで幸せを完成させられたら、人類最強」 はあちゅうが語る“自立恋愛論”

●はあちゅう(伊藤春香) ブロガー、作家/ソーシャル焼肉マッチングサービス「肉会」代表/有料オンラインサロン「ちゅうもえサロン」「ちゅうつねカレッジ」を主宰/1986年生まれ。慶応義塾大学法学部政治学科卒。2009年電通入社後、2011年トレンダーズに転職し、「キレナビ」編集長や動画サービスに関わる。2014年からフリーで活動し、講演・執筆活動、ウェブサービスの運営を続ける。著書に『半径5メートルの野望』『自分の強みをつくる』『恋愛炎上主義。』などがある。

鈴木 絵美里

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