バリキャリ女性が直面した高齢出産の現実

(C)すぎうらゆう/KADOKAWAメディアファクトリー


生物学的な出産適齢期は24~35歳。そのあいだに産むに越したことはないけれど、仕事の都合、パートナーの有無によって左右される「社会的な適齢期」がここに当てはまるとはかぎりません。たとえば、コミックエッセイ『43歳で母になる』(メディアファクトリー)の原案をつとめた山本恵さんは、41歳で結婚、42歳で妊娠、43歳で出産……それまで仕事一筋だった女性が突然、妊婦1年生に!

日本産科婦人科学会2010年のデータによると、不妊治療において40歳での出産率は7.7%、43歳では2%とされています(参照:平成25年厚生労働白書「不妊治療における年齢別の出産率と流産率 」図2-3-24)。そんななか自然妊娠、順調に母になったように見える山本さんですが、その喜びや戸惑いはどんなものだったのでしょうか? そして高齢出産であるがゆえの「あるある」とは? 医学書には決して書かれない、高齢出産の現実をご本人にうかがいました。

自分でも驚いた42歳の自然妊娠

――結婚された当初から、子どもを作る計画はあったのでしょうか?

山本恵さん(以下、山本)
:子ども好きなので独身時代からずっとほしかったのですが、漠然と考えていただけでしたね。長らく知り合いだった同い年の男性との結婚が決まったときも、「子どもを作るんだったら、急がなきゃね」と話はしていたのですが、一方では「できなかったら、それはそれでしょうがない」とも考えていました。これが30代半ばで結婚したのだったら、絶対になんとか産もうと、あらゆる努力をしたかもしれません。

――高齢での妊活ということで、最初から「できないかも」と覚悟していたということですか?

山本:それが不思議なことに、「できないかも」と「でも私は大丈夫」が自分のなかで同居していたんですよね。ニュースなどで卵子の老化や高齢出産について見聞きして、「社会の出来事」としての知識はありましたが、自分のこととしてとらえてはいませんでした。だって、そもそも自分のことを高齢だと思っていないから(笑)。

というのも、実年齢と、自分の感覚としての年齢に開きがあったんですよ。実際は40歳オーバーなのに、仕事でもプライベートでも年下や感覚が若い人とばかり一緒にいたから、自分も35歳ぐらいの気分でいました。仕事をしていると、そういう方は、意外といらっしゃるかもしれせんね。

だから不妊治療や高齢出産について、ことさら調べたり備えたりしたことはなかったのですが、あるときお腹の調子がよくなくて、食あたりかなと思って病院にいったら、なんと妊娠! 『9週目ですよ』といわれました。

バリキャリ女性が直面した高齢出産の現実

(C)すぎうらゆう/KADOKAWAメディアファクトリー

高齢出産ならではの微妙な人間関係

――高齢妊婦ならではの苦労はありましたか?

山本:ネットにあふれる高齢出産のコワい情報を見てビビッたことはありましたが、病院で順調だといわればそれ以上心配する必要もありませんよね。そうした身体的なことよりも、対人関係において、高齢出産であることを身にしみて感じることがありました。それまではずっと仕事大好き、遊びも大好きで、周囲からも「まさか山本さんが妊娠するとは」と思われるようなキャラだったので、妊娠を打ち明けたら仕事関係の人や友人がどんな反応をするのか見当がつかなかったんです。

既婚で子どもがいる友人は別として、独身同士だといくら親しい人でも結婚や子どもについての価値観を踏み込んで話すことって、そんなにないですよね。だから、どのタイミングで言おう、どう伝えようというのは、かなり考えました。あと、妊娠を伝えても無反応という人もいましたね。後で気づいたんですが、その人は不妊治療中で……。とてもデリケートな問題です。

バリキャリ女性が直面した高齢出産の現実

(C)すぎうらゆう/KADOKAWAメディアファクトリー

共働きだからはっきり言えた「育児の役割分担」

――人間関係といえば、本書を拝見すると、夫婦関係も妊娠期間を通じて変わっていったように見えました。当初は山本さんがツワリで苦しんでいるときも、夫はお酒のにおいをプンプンさせながら帰ってきたり、朝食でもう1品リクエストしたり……。

山本:気遣いがまったく感じられなかったときはありましたね。でも、「ちょっとは私が妊婦っていうことを意識してよ」といえば「わかった、意識する」というふうに、伝えれば解る人だったから、そのうち父親になる自覚も芽生えてきたようです。いまは毎朝、子どもを保育園に送ってくれています。平日は仕事で帰宅が遅いから、それが精いっぱい。

――出産以前に、役割分担をはっきり決められていたのでしょうか?

山本:私自身ずっと仕事をしてきたし、結婚後も共働きをつづけていたので、家に入れるお金も完全に折半。だから、いろんなことを「シェア」している感覚なんです。帰ってくる時間が違うから家事の分担も完全に半分ずつとはいきませんが、私が平日やるなら、土日は夫の担当。だから送り迎えについても彼は当初、「週に1、2回だけでいいかな」っていっていたけど、いえいえ、お迎えと帰宅後の育児もぜんぶ私がやるんだから、朝の送りは毎日アナタでしょ、といえたんです。

今後、出産後も共働きを続けたいと考えている人がいるなら、結婚当初から役割分担をきちっとしておくことをオススメします。そもそも家事に参加しない人は、育児がはじまったからといって、家事や育児を担ってはくれません。結婚後すぐ、もっというと交際中からそういう話ができる関係性を、彼と作っておいたほうがいいです。

キャリアに納得してから出産……自分の産み時はいつ?

――本書によると、仕事には産後3か月で復帰されたのですね。

山本:出産前にあまり深く考えず「すぐに復帰します!」って宣言していましたからね(笑)。あと保育園に入れる都合もあってすぐに復職しましたが、体力的には思ったより平気でした。育児と仕事の二足のわらじでどうしても寝不足になるのでしんどくはありましたが、私にとっては育児をしていると自分のペースで動ける時間がまったくないことのほうがツラかったんです。保育園に子どもを預けるのが淋しい反面、仕事を再開したときは「娑婆に出られた!」ぐらいの解放感がありました(笑)。これは高齢ママゆえの特徴かもしれませんね、心身ともに仕事をしている状態に慣れすぎているんです。

でも今後は、働き方を変えて育児に専念してもいいとも考えています。これまで仕事を全力でやってきたという自負がありますから、人生後半は子どもとの時間にするというのもアリだと思うんです。

自分のキャリアに納得がいったうえでの妊娠・出産・育児……まさに山本さんにとっては、43歳での出産が適齢期だったといえるのではないでしょうか。では自分にとっては? 本書は、自分の身体、仕事、これからの人生設計をあらためて見つめ直し、自分にとっての出産適齢期はいつかを熟考する機会を与えてくれる1冊です。


●山本 恵

大学卒業後に就職した会社にて、朝から晩まで仕事が中心の日々を過ごす。ストレス発散はランニングと粒あんスイーツ。最近は、自分のマネをする子どもを見てギクリとしながら、今まで避けて通ってきた料理に奮闘中。

三浦ゆえ

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