同性婚法が成立するまでの流れを作るには

昨年の「東京レインボープライド2014」にて渋谷区役所前の様子

>>【前編はこちら】日本の結婚は男女平等じゃない―「パートナー法ネット」共同代表が語る、同性婚法の成立が難しい理由

2015年2月12日、東京都渋谷区が同性カップルに「結婚に相当する関係」と認める「パートナーシップ証明」を発行する条例案を、3月に区議会に提出すると発表しました。

後編では、同性カップルが婚姻制度に代わる制度として利用している「養子縁組」、また「パートナーシップ制度」について「パートナー法ネット」の共同代表の大江千束さんにお話を伺います。

パートナーなのに、養子縁組では「親子」「兄弟」に

――現在、法的にパートナーシップを結びたい場合、「養子縁組」を選択する形になるのでしょうか。

大江千束さん(以下、大江):パートナーシップの関係を守るのであれば、養子縁組という形がこれまで考えられていました。養子縁組では自分たちが「親子」もしくは「兄弟」になる場合の2通りがあります。

兄弟になる場合は、どちらかの「親」の籍に入るわけですから、「親」の承諾も必要ですし、他に兄弟がいればその方々の了承も得ることになる。勝手に兄弟が増えるわけですからね。親子になる場合は、数日でも年長のものが親になって、年下のものが子供になる。親子関係の養子縁組を選択している方は多いと思います。ただ、決して「親子」や「兄弟」になりたいわけじゃないんですよね。

――養子縁組で親子になったカップルが、パートナーシップを解消するとなったら、どういった手続きをするのでしょうか。

大江:通常、親子関係は解消しません。「勘当する」ことはありますが、理念上のものであって、法的なものではありません。ひとつ考えられるのは、家庭裁判所に養子縁組の無効の申し立てを行います。そしてこの養子縁組は無効であったという審判を仰ぐ。とても面倒な手続きが必要なわけですね。

同性婚成立には、憲法改正が必要?

――憲法24条に、「婚姻は、両性の合意のみに基いて成立」とありますが、同性パートナーが現行の婚姻制度を利用するには、この「両性の合意」という言葉が問題なのでしょうか。

大江:これまで同性カップルが青森市や港区で婚姻届を提出して不受理されていますが、その理由は「憲法24条に反する」ということだったんです。「両性」の解釈をどうとらえるか、ということにおいては、同性でもいいのではないかという解釈もあるんですが、現在の行政では、「男女」とされていますね。

ただ、法律家・官僚の間で異なる意見はありますが、現行憲法が制定された際、同性カップルが想定されていなかっただけで、24条の意図は、戦前の家族制度の下、家長や家の意思で結婚が決められていた実態を受け、「結婚は個人の意思によってなされる」と宣言することが主旨であったとする意見があります。また、「憲法は国民の権利を追加していくのを制限する性格のものではない」との見方もあります。

――憲法24条を改憲するという可能性はありますか?

大江:憲法の問題はいろんなところに波及していくので、現実的に難しいかなと思っています。一方で、「特別配偶者法」「パートナーシップ法」のようなものであれば、民法に少し手を加えていくことで、現行の婚姻制度とは別のものができるのではないかという期待があります。この方法は、日本の現行の婚姻がジェンダーの平等を実現するのを待たずとも、同性カップルの法的認知を達成できるという利点もあります。

個別の案件と、大きな法整備の流れを同時に

――現在、養子縁組を選択していない同性カップルは、どちらかが死亡した際に相続権がない、医療における手術の同意権、住宅ローン、公営住宅への家族としての入居など細かな問題があります。それは個別にクリアしていくことで対処できないのでしょうか。

大江:個別に対処するのもひとつの方法です。医療の現場においても、病院がどう捉えるのかに尽きるんですね。実は法律で明確な規定はないのに勝手に「戸籍上の家族」と思い込んでいる医療機関が多いだけで、厳格に親族でなければ立ち入ることができないとする機関もあるでしょうし、事情を理解していただける機関もあると思います。

ただ、同性カップルに対するひとつの法律ができるというのは全てのことに影響するわけですし、日本のどこの地域に住んでも、平等に権利を享受できるということですね。ですから、法の整備、個別の案件を解消していくのは両輪で進めていくべきことだと思います。

「事実婚」派も注目の「パートナーシップ制度」

――フランスのPACS(性別に関係なく成人2人の間で共同生活を営むために交わされる契約)のように、日本でもパートナーシップ制度を取り入れる動きはどのくらい進んでいるんでしょうか。

大江:現在、事実婚や内縁関係を選択している異性のカップルの方は、婚姻制度に問題を感じて、あえて「私たちは事実婚です」という形を取られている方も多くいらっしゃいます。しかし、現在の同性カップルに関しては、「婚姻」か「事実婚」かの選択肢すらない状態です。

人権の平等という観点においても、2020年東京オリンピック・パラリンピックの開催までに、日本は多様性を受け入れている国だと国際的に示す必要性がありますので、同性カップルの問題に対して何らかのアプローチをしなくてはならないと思います。

その中で現実的なのは、婚姻に類似するような法的保護を、同性カップルにも適応する方向で、それが我々の提唱する「パートナー法」です。また、LGBTの支援推進法、理念根拠法のようなものを作ることが、より達成しやすい近道だと考える人も多いです。

――当事者でなくても、パートナーシップ制度に注目していたり、同性婚に賛成している方がいるわけですが、そういった方ができることとはなんでしょうか。

大江:支援的なポジションの方を「アライ(Ally)」と呼んでいます。英語では「同盟」という意味なのですが、「パートナーシップ法」「同性婚」を支持していると表明すれば、これだけの数が賛成していると政治家に伝わるわけですね。当事者の周りにいらっしゃる方もそうですが、「アライ」の方がさらに周囲を巻き込んでいただければ、大きな流れになると思います。

まず議論すること、同性カップルのパートナーシップの問題を顕在化することが第一歩です。

渋谷区のパートナーシップ証明の動きは、前向きで画期的なこととして歓迎し期待しています。ただ、今後の効果や使い勝手がまだ未知であること、渋谷区の住人でないと享受できないということを考えると、誰もが渋谷区に転居できるわけではありませんので、やはり根本の法の整備によって、日本のどこに住んでいても、当事者の誰もが婚姻と同等の既得権を得られるものを、引き続き目指していきたいと思います。

また今回の一部報道では憲法24条1項により、日本では同性婚が認められないという憲法解釈が見受けられましたが、法律家の間では同性婚を排除するものではないとしています。

いずれにしましても、今、大きな動きが始まっているという実感があります。自分らしく、のびのびと生きていける社会は誰もが住みやすい社会であるということを切望しています。

(編集部)

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