働くママは迷惑? 時短勤務の現状と問題

「育児短時間勤務制度」(時短勤務)とは、小学校就学前の子がいる場合、短い勤務時間で働くことができる制度です。これは育児や介護などを理由に退職することなく働き続けられること、人材の定着率の向上や優秀な人材の確保などの効果を期待して、平成22年に制度化されました。しかし実際にはこの制度にはまだまだ課題が多いのが現状です。

筆者は販売業に就いていた時期にこの制度を利用する女性と一緒に仕事をしていましたが、彼女は「職場に迷惑をかけている気がする」と常に引け目を感じていました。また、同僚や上司は「忙しい時期にシフトが入れにくい」「早く帰るだけならいいけど、子どもの病気や怪我で急に欠勤したり早退したりされると困る」と、制度利用者と共に働くことに困惑気味でした。

私たちが働くママになった時、この制度はしっかりと利用できるのか、 企業数社で人事労務管理のお仕事を経験され、現在も大手ベンチャー企業で労務を担当されている平井雄二氏(仮名)に現状の問題や可能性について詳しくお話を伺ってきました。

    職種によって利用のしやすさに差があるのが現状

――実際、育児短時間勤務制度を使う人が職場にいると、業務が停滞してしまうことが多いのでしょうか。

平井雄二氏(以下、平井):営業職や事務職なら、同僚や上司への引き継ぎさえ徹底されていれば、短時間勤務の方の分だけでなく、他の誰かの突発欠勤や遅刻・早退の分も充分カバーできます。仕事の質を落とさずに業務に就くことは可能です。ただ、1人でも欠けると業務が回らなくなる販売業や接客業では難しいかもしれません。制度自体は存在するものの、現実では職種によって利用しやすいかどうかには結構差があると思います。

――この制度を利用することで、例えば望んでいない部署に異動させられるといったことはありますか?

平井:ありますね。1人でも欠けることによって生産性や質の低下が懸念される部署の場合は、異動を余儀無くされますね。そして、残念ながら理想のキャリアップの道が閉ざされることもあります。その結果、仕事のモチベーションを維持できなくなってしまい、退職されるケースも実際にありました。

――やはり現状では、キャリアアップの観点で制度を利用できない、したくない女性が多いということですね。

平井:そうですね。やはり、日本全体として働くことに対してまだ古い価値観の中で動いているからです。

    女性のライフイベント自体が“仕事の妨げになるもの”と考えられている

――古い価値観とは?

平井:日本はまだ勤続年数が勤務評価に大きく関わってきますし、年功序列・男尊女卑の傾向が残っていると思います。そのために、残念ながら制度を利用した女性の人事評価が、ずっとフルタイムで働いていた人と比較してマイナスに影響することもあります。

――極端に言えば、女性が出産や育児などのライフイベントには目もくれず、バリバリ仕事をしていた方が出世できるということですよね。

平井:そうですね。管理職の方々が頭の固いような企業ならそういうことが言えると思います。出産・育児というものが働く上でも当然とされているヨーロッパと違い、日本の場合はまだ“仕事の妨げになるもの”と捉えられてしまっているのが現状です。

    まだまだ男性社員に対して制度への理解を促すバックアップが甘い

――男性管理職の方、ひいては会社全体として理解があれば制度利用も可能だと思います。この制度について理解を促す仕組みはないものなのでしょうか。

平井
:だいたいの企業が社員に配布している就業規則(労働者の就業上遵守すべき規律及び労働条件に関する具体的細目について労働基準法に基づいて定められた規則)には、休暇や制度・会社の指針に関することが全て明記してあります。しかし、その規則自体を読んでいない人がほとんどです。

――なぜ多くの社員が読まないのでしょうか。

平井:情報量が膨大なので、自分自身に関係ない部分は読み飛ばしてしまうのだと思います。そうすると、出産・育児をする予定のない男性にとっては馴染みの薄い制度になってしまいますよね。制度利用者が現れて、初めて制度について知る人も少なくありません。

    女性の管理職がいる企業ならば柔軟に対応してくれる可能性も

――女性に限らず、男性でも育児と両立しながら働く方はこれからも増えるので、日本全体がもっとこの制度に柔軟に対応できなくてはいけませんよね。

平井:そうですね。周囲の無知が制度利用者の肩身を狭めることのないように、また会社全体で出産・育児と仕事を両立したい方を応援するために、制度についてのアナウンスを繰り返し行うなどの企業努力は必要だと思います。

――将来的に育児をしながら働きたいと考えている未婚女性はとても多いと思います。今の会社で時短制度を利用している人がいない場合はどうしたらいいでしょうか。

平井:会社の他の未婚女性たちと会社や上司に制度について訴えるというのは長い時間もかかりますし、大変ですよね。例えば仕事を負担させてしまう時に備えて、同僚を味方につけるというのは手だと思いますが、もし出産後の将来を考えた時に今の会社に強い不安を感じたら転職するのもありだと思いますよ。もちろん、面接の際に「短時間勤務制度希望です!」と言ってしまえば採用されにくくなるでしょうが、やはり女性の管理職がいる企業であれば、管理職が男性のみの企業よりも柔軟に対応してくれる可能性が高いので希望はありますね。

(笹崎ひかる)

この記事を読んだ人は答えてね!
人が回答しています