育児と仕事を両立させる“女が働く意義”

左:田中和子さん、右:リーママプロジェクトのメンバーで、社内では広報を担当している高橋志保さん

女性の社会参画が進む日本。平成23年度厚生労働白書によると、1997年には共働き世帯が片働き世帯数を上回り、結婚後も働き続ける女性が増加しています。一方で、出産を機に離職するケースもまだまだ多く、フルタイムで働きながら育児をする厳しさに直面する女性も多いようです。

そうしたなか、大手広告会社・博報堂の社内ママたちが中心となって、“サラリーマンのママ=リーママ”たちを繋げる「リーママプロジェクト」が2012年4月に発足しました。ランチの時間に行う交流会「ランチケーション」や、ママを元気づける「糧ことば」を発信。それぞれの職場で頑張っている他企業のママたちとのネットワークを形成しています。

今年1月30日には、同プロジェクトの内容や「糧ことば」をまとめた書籍『リーママたちへ 働くママを元気にする30のコトバ』(角川書店)が刊行されました。そこで、プロジェクトリーダーであり、自身も3人の子供を育てる田中和子さんに育児も仕事を頑張るための秘訣を伺いました。

先輩ママが「ハッピー」を発信する意味

――最近、結婚しても働きたい、もしくは夫の経済力だけでは不安なので働こうという女性が増えているように感じるのですがいかがでしょうか?

田中和子さん(以下、田中):確かに増えていると思います。でも、フルタイムで働く正社員の女性自体が、どの企業もまだまだ少なく、さらに、女性の6割強は出産を機に退職すると言われています。ママになっても働き続ける人はまだまだ少数派です。

いずれにしても育児と両立をするのであれば、長時間労働や残業をするといった労働スタイルを変えていかなくてはいけません。それには色々な壁が立ちはだかるのですが、その壁を乗り越えた先にあるハッピーを先輩「リーママ」たちが発信していく必要があると思っています。

――「リーママプロジェクト」がスタートしたきっかけについて教えて下さい。

田中:まだまだ、社会の中で少数派であるサラリーマンママ(リーママ)を繋げていこうという発想から「リーママプロジェクト」が始まりました。同じ立場で奮闘している仲間ができることで、職場でも頑張れたりしますよね。このプロジェクトを通じて、女性がイキイキと職場で活躍し続けられることが、女性の元気の素になり、女性が元気になれば、社会も元気になるのではと思いのもと活動しています。簡単にいうと、共感できるリーママ仲間を作ろう! というものです(笑)。

――なかでも、飲みニケーションに由来したという「ランチケーション」では、リーママたちの交流が活発に行われているとか。

田中:「ランチケーション」では、参加者から事前にアンケートを取って、皆さんの興味関心にもとづいてディスカッションなどを行います。リーママたちは時間がないので、ランチタイムに1時間一本勝負です。そのなかで、リーママたちがぶつかっている壁をすっと乗り越えられるような「糧ことば」を収拾し、Facebookなどで共有しています。

救急車の中でやっと「家族が一番」だと納得できた

――田中さんご自身も第一子を出産後、会社に復帰されたときに体調を崩されたと伺いました。それまで、バリバリと働かれていたわけですが、体を壊されたことで仕事や育児への向き合い方に影響を与えたのではないでしょうか?

田中:そうですね。イヤイヤ期の子供を抱えながら、営業の前線チームにいたので、昼も夜もクライアントやプロダクションからガンガン電話がかかってきて、睡眠不足とストレスで内蔵が悲鳴をあげました(笑)。それで救急車で運ばれている最中に、ふと「自分にとって一番大切なのって家族だよな」と考えたら、すっと納得できたんです。

それまでは、出産前と同じように時間を惜しまず働いていて、たぶん家庭のなかで「ママ」として生きることを100%納得してなかったのかもしれません。でも、体調を崩したことをきっかけに、自分の軸足を家庭に置こうと自然なかたちで決められたんです。「働くことと育てること、家庭を運営することが自分の生き方なんだ」と。

会社員としての「御仕事」と自己実現のための「しごと」

――それからの働き方はどう変わられましたか?

田中
:これまで、依頼された仕事は120%の力でやって、クライアントや上司の期待値を超えていこうというのが自分のやり方だったのですが、断れるものは断るというように少し力を抜けるようになりました。育児や家事も旦那に任せられるものは任せて、仕事も「自分がしたいこと」「できること」「しなくちゃいけないこと」という分類で考えるようにしたんです。

――そのように分けることで変化はありましたか?

田中:意外にも仕事も家庭も色々なことがうまく回り始めたのが一番の発見でしたね。そのなかで、仕事というのは、サラリーマンとしてこなすべき「御仕事」と、自分の人生において続けたい「しごと」という2つがあるのではないかと思い始めたんです。

「御仕事」は与えられたものなので「やるべきこと」です。ただ、それだけではかわいい子供を預けてまで頑張らないといけないことなのかという、しんどさやジレンマがある。だから自分が5年後や10年後にやりたいことが何かを考えて、それを「しごと」にしていく。それは本を読むことから始まるかもしれないし、勉強会に参加することかもしれない。私自身、仕事をこの2つに分けられた時に、やっとサラリーマンになったなと実感しました(笑)。

男性の場合、サラリーマンという生活において、そこまで仕事でのスタイルをあまり考えないで突っ走れると思うんです。そうした男性の生き方も学びつつ、女性は女性で、体のリズムと付き合いながら働いていくことになる。その中で、自分が納得できる働き方ってなんだろうと考え、自分のなかで作った選択肢に基づいて行動する。それが、自分にとっての幸せをかたち作るのではないでしょうか。

>>【後編へ続く】「子供を持つ前に思いっきり仕事しておいて」 “リーママ”が伝える、働く女性が納得できるキャリアと育児

末吉陽子

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