同性カップルが部屋を借りにくい理由

昨年12月に女優の杉森茜さんとタレントの一ノ瀬文香さんが、「結婚」したことを発表しました。日本では法律上の同性婚は成立していませんが、LGBT向けの挙式サービスが続々と登場し、結婚情報誌『ゼクシィ』でも同性カップルの結婚を取り上げるなど、同性婚を盛り上げる動きが出ています。

その一方で、同性カップルが一緒に住む部屋探しをすると、難航することが多いという声も聞こえます。賃貸契約において、何が問題になるのでしょうか。LGBTフレンドリーを掲げる不動産仲介業「メディレクト」の大森千栄子さんに、現状と問題をうかがいました。

友達同士の「ルームシェア」になってしまう

――こちらではLGBTフレンドリーを掲げていますが、そのきっかけは?

大森千栄子(以下、大森
):会社の母体が、ゲイ向けの男性誌を発刊している古川書房なんです。以前より、ゲイの方たちから「せっかく恋人や友達と一緒に住むことになったのに、男同士ではなかなか部屋が借りられない」というお声をたくさんいただいていたので、ゲイを含めたLGBTの皆様のお力になれるのではないかと、1年半前に不動産事業を立ち上げました。

――同性カップルが部屋を借りにくい理由はなんでしょうか?

大森:大家さん側が、LGBTという多様なセクシュアリティーの形に、偏見を持っていらっしゃる場合もありますし、他の入居者の方が嫌がるのではと懸念されて断るというケースもあります。それから家賃の問題です。同性同士だと「ルームシェア」という形になることが多いので、どちらかが出て行った場合、家賃の支払いが難しくなります。残った方が家賃の全額をお支払いできれば入居の継続は可能ですが、改めて大家さん側と契約し直すことになると思います。パートナーシップを解消した場合、残った入居者さんは家賃の負担を考えると契約を解除されることが多いですね。

「ルームシェア」の難しさについては男女のカップルでも同じですが、男女の同棲は「今後、結婚の可能性があること」が前提です。同性同士では、いくらパートナーシップがあったとしても、法律上では認められていないために、友人同士では結びつきが不安定であると判断され、敬遠されることがあります。

プライバシーとカムアウトの問題

――大家さん側には、パートナーであることはお伝えするんですか。

大森:お客様にとっても重要なプライバシーの部分ですので、こちらから自発的にお伝えすることはいたしません。大家さんにお伝えしたとしても、同性のカップルであることを理由に入居を断るのは性的な差別に当たりますので、他のことを入居できない理由にされるケースは少なくありません。

――テレビでもセクシュアルマイノリティーの方が登場し、一般的な理解も進んでいるのかと思っていましたが、まだまだ現状は難しいんですね。

大森:大家さん側からすると、知らない人に家を貸すわけですから、お客様の人格というより、イメージだけが先行してしまうということはあると思います。また、大家さんご自身に偏見がなくても、大家さん側の不動産仲介業者の方が懸念されるというケースもあります。

カムアウトしていない場合、連帯保証人をどうするか

――周囲にセクシュアリティーを明かしていない場合、連帯保証人は家賃保証会社を利用すればよいのでしょうか。

大森:連帯保証人の指定は大家さんの裁量になるので、親・親類、または職場の上司を指定される場合もあります。そこでセクシュアリティーをカムアウトするかどうかは、ケースバイケースになりますね。最近ですと、家賃保証会社を利用される方も多いので、収入さえあればシステマティックに進むようになりましたが、家賃保証会社に対する保証人が必要な場合もあります。

最近ではシェアハウスという住まいの形も増えています。例えば、ゲイの方が購入したある一軒家を、ゲイの方に入居者を限定してお部屋を貸したいと希望する方もいらっしゃいました。不動産業者がアパートなどを買い上げて、LGBT限定で入居者を募集するなど、同じようなことをやれたら良いのにというご意見もうかがいます。しかし、その形態をオープンにすることで入居者の皆様にとっては、セクシュアリティーをカムアウトすることに繋がる可能性もありますから、より慎重かつ細やかな気配りが必要なのではと思っています。

「自分たちは友達同士じゃない、カップルとして入居したい」

――同性婚の法制度や、それに準じるものがあれば状況は変わると思いますか。

大森:法律や制度は国が保証しているということですから、それがあるかどうかは大きいと思います。お客様の中には「自分たちは友達同士じゃない、カップルとして入居したい」と切実に望んでいる方もいらっしゃいます。本来は、愛し合っている人同士が一緒に住むということは幸せなことですし、ごく自然で当たり前のことだとも思っているんです。私どもが、そんな皆様の新しい生活のためのお手伝いができるのであれば、何よりも嬉しいことなんです。

●取材協力:メディレクト

(編集部)

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