女子大生が“育児に優しい社会”をつくる

学生団体「manma」のメンバー/右から2番目:新居日南恵さん

2014年は「女性が輝ける社会」という言葉が盛んに言われ、メディアでは企業の努力姿勢や働く女性たちの言葉が多く取り上げられた1年だった。政府の方針に対して賛否両論はあるものの、女性の働き方、そして母になってからの働き方について注目が高まっていることは間違いない。

そんな中、「将来の母」である女子大生たちは、自分の未来についてどう考えているのだろう。「今の女子大生の手で、安心して母になれる社会をつくる」をコンセプトに掲げる学生団体「manma」の代表で、慶應義塾大学2年生の新居日南恵さんに話を伺った。

専業主婦志向には「無気力系」と「真面目系」がいる?

――最近の若い女性は専業主婦志向が強まっていると言われることがあります。

新居日南恵さん(以下、新居):よくそう言われるのですが、「専業主婦志向だ」と言うにはデータが弱いのではないかな(※)と感じています。自分の感覚値としては専業主婦志向の女子大生が多いとは思いません。

ただ、キャリア志向でも「働きながら子育てって大変そう。本当にできるの?」って思っている子は多いと思います。また、専業主婦志向の子にも「無気力系」と「真面目系」がいると思っていて、前者は「働きたくないから」という子で、後者は「母が専業主婦だったから働きながらの子育ては想像できない」と真面目に悩んでいる子。私の周囲にいる専業主婦志向の子は、後者のタイプかなと思います。

(※)2013年に発表された第5回全国家庭動向調査(国立社会保障・人口問題研究所)で「結婚後は、夫は外で働き、妻は主婦業に専念すべきだ」に「まったく賛成」「どちらかといえば賛成」と答えた20代女性は合わせて41.6%で、30代・40代・50代(36.0%~38.9%)よりも割合が多かったことなどを根拠に、「若い女性の専業主婦志向が高まっている」可能性が示唆された。しかし、同じ調査で「夫も家事や育児を平等に分担すべきだ」に賛成する20代女性は85.5%で他のすべての年代よりも高く、「子どもが3歳くらいまでは、母親は仕事を持たずに育児に専念したほうがよい」に賛成した割合も他の年代に比べて最も低いなど、若い女性ほど性的役割分担に賛成しているとは言い切れない。

――「manma」の活動を始めようと思ったきっかけを教えてください。

新居:もともと高校時代にNPO法人カタリ場に参加していて、Googleの社員さんを呼んで将来を考えてみるとか、キャリア学習を通じて将来を考えていました。大学生になってから「取り組まなければいけないテーマは何だろう」と考えたときに、それまでは「社会に対してバリバリ何かしなければいけない」と思っていたけれど、一方で「結婚して幸せに子どもを育てたい」というソフトな願望もあるなと気づいて、家庭や子育てについて考えてみたいなと。

また、「子どもの自己肯定感」について関心を持っていたから、ということもあります。自己肯定感や内面の安心感を育てるのは家庭の中。親と安定した関係が構築されていないと、愛着障害になりやすかったり、気持ちが不安定になってしまったり……という問題が指摘されていますよね。自己肯定感を育むためには、お母さんが働きながら子どもを育てる仕組みができなければいけない。単に「女性の活躍を」と言うだけではなくて、子どもを愛しながら働ける仕組みや意識をつくりたいと思いました。

お母さんの自己肯定感は子どもに伝わる

――「子どもの自己肯定感」について関心を持ったのはなぜですか?

新居:中高生の頃は自分への自信についてすごく悩む時代だし、私も悩みました。双子の姉がいるのですが、当時は比べられているのではと常に気になったりして、「自信」がすごくテーマだったんです。また、私自身、摂食障害のような症状になったのですが、同級生でも拒食症になったり、それが原因で学校を辞めてしまったりという子もいて。経済的にも環境的にも恵まれているのに自分に自信が持てない子がいるし、どんなに恵まれていても自己肯定感がないと生き抜く力が弱いんだと実感しました。

――「子どもと親が愛着関係を作っていかなくてはならない」という話になると、「母は外に仕事を持たず、子育てに専念するべき」という意見もありますが、どう思いますか?

新居:現在の働き方って、子どもを生んだら自分のキャリアを諦めるか、もしくは子育ての時間をかなり削りながら働き続けるかの2択しかないように感じています。でも私たちが子どもを生む頃には、もっと子育てを楽しみながら働く働き方があってもいいと思います。子育てをするためにお母さんのキャリアを犠牲にすると、お母さんの自己肯定感が下がってしまう。お母さんの自己肯定感は子どもに伝わるので、それは良くないのかなと。

私は未来の母である女子大生に対して活動していますが、他にもアプローチの方法はあると思っています。たとえば、今のお母さんたちの自己肯定感を上げることで子どもたちに変化をもたらすのも大事なアプローチです。

子育て家庭とそれ以外を「断絶」させないために

――産休・育休や時短勤務は以前より取りやすくなっていると言われ、またファミリーデーや託児所を設ける会社もあります。それ以外でも、「こう変わっていけばいい」と思うことはありますか?

新居:特殊な例ですが、子どもを連れて出社できるママたちだけの会社やママのためのシェアオフィス(※)があります。あとはフリーランスで働いて、打ち合わせに子どもを連れて行けるとか。子どもをいろいろなところに連れて行ける社会っていいなと思っているんです。子どもにとっても、子どものいない大人にとっても出会いになるからです。

(※)ママだけの会社=非営利型株式会社ポラリス、子どもと大人が一緒に過ごせるシェアオフィス=こそだてビレッジなど。

――今は会社という組織自体がまだまだ男性社会的な考えが根強いので、なかなか難しいかもしれませんが、それが叶えられたら、最近よく聞かれるベビーカー問題など、子育て家庭と、そうではない人との間にある「断絶」も少しは解消されるのかもしれませんね。

新居
:断絶がありますよね。しかも断絶があると余計断絶しようとする。知る機会がないから、「ベビーカー専用車両作れば?」という話になってしまう。でもそうやって断絶の連鎖が続いたら、子どもを育てられない社会になってしまいます。

>>【後編に続く】リアルなママを見ないと実感できない―「母親になること」を考える女子大生が始めた少子化対策

●新居日南恵(におり・ひなえ)
1994年生まれ。慶應義塾大学法学部政治学科2年生。高校時代からNPO法人カタリ場に参加し、キャリア学習プログラムを通して将来を考える。大学1年の秋に「manma」の活動を始め2014年1月に正式に設立。女子大生への意識調査や、専門家へのインタビュー、女子大生と子育て家庭をつなぐ「家族留学」などの活動を通じ、「母親になること」を取り巻く問題の解決を考える。manma公式HPFacebookページ

小川 たまか/プレスラボ

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