かまってちゃん社員

近年SNSを中心にその存在が注目されるようになった「かまってちゃん」。「自分をもっと見てほしい」「心配してほしい」という気持ちの強い人を指しますが、プライベートの場だけではなく、職場にも「かまってちゃん社員」が増えているといいます。話題の本『「かまってちゃん」社員の上手なかまい方』(ディスカヴァー携書)の著者で、産業カウンセラーの大野萌子さんに、かまってちゃん社員の取り扱い方について話を伺いました。

かまってちゃんの基本は「自分は悪くない、悪いのは他人」

――現代のキーワードとなる「かまってちゃん」をテーマにした本書。出版に到った経緯は何だったのでしょうか。

大野萌子さん(以下、大野):私は企業で社員向けのカウンセリングを行う仕事をしています。相談に来る人の大半は、うつの薬を飲んでいたり、通院していたり、休職後に復職したり……といった人々。でも話を聞いてみると、4割近くの人に対して「これってうつなの?」と疑問に感じてしまいます。保健師や産業医とも情報交換をしますが、彼らも私と同じ感覚を持っています。

そもそも健康な人は誰でも「うつ状態」になり得るのです。生きている限り、嫌なことやツラいことはありますから、むしろずっとハイな状態でいるほうがおかしい。でも、うつっぽい状態から何らかのきっかけがあって、徐々に気分が回復していくのが普通ですよね。

以前から、単に落ち込んだ状態を短絡的に「病気」として捉えるかまってちゃんが多いなと、問題に感じていました。「かまってちゃんや周囲のメンバーを含め、皆がコミュニケーションの仕方を見直す必要があるのでは?」と考えていたところ、たまたま出版のお話をいただいたのです。

――自身を「うつ」だと思い込むかまってちゃんには、どのような特徴がありますか。

大野:「自分は悪くない。周りが悪い」という他罰的な傾向が強いです。「〜な状況に陥ったのは他人のせい」「私にも悪いところはあるけれど、〜のほうがもっと悪い」と本気で思い込んでいるケースが大半。健全な人であれば「長期間給料をもらいながら、会社を休み続けて良心が痛まないの?」と思うはずですが、彼らは「こうなったのは会社のせいだから当然でしょ」というスタンスなのです。

――具体的に彼らからはどのような「他者への不満」が多く寄せられますか。

大野:ほぼ人間関係に関する不満です。部下や上司、同僚とかの悩みがほとんどで、出世に絡むキャリアビジョンの悩みもあります。厚生労働省が5年ごとに発表している「労働健康状況調査」でも、働く人の4割以上がストレスを感じる要因に「人間関係」を挙げていて、ほかの項目と比べて突出しているのが特徴です。メンタル不全は忙しさではなく人間関係に起因します。逆に人間関係さえよい会社であれば、多少キツくても給与が低くても社員が「働きやすい」と感じるケースが多いです。

かまってちゃんの症状は周囲に連鎖する

――人間関係に不満を抱えたかまってちゃんが増えた場合、会社にはヒト・モノ・カネの面でどのようなインパクトが生じるのでしょうか。

大野:かまってちゃんが休職した場合、企業は通常の2.5〜3倍もの費用を抱えることになります。保健同人社がWeb上で提供している、メンタルヘルス不調による休職者が発生した際の企業の損失コストを試算できるサービス「MOSIMO」などでも確認できます。

大企業であればまだしも、中小企業であれば経営が圧迫されるレベルです。真性うつの人は休職させるとよくなりますが、気まぐれに休職と復職を繰り返すかまってちゃんは少なくありません。

さらに本人だけではなく、周囲にも悪い影響を与えてしまいます。かまってちゃんの症状は周囲に連鎖するため、メンバーの士気を下げることにつながるのです。かまってちゃんが自由気ままに休んだり、復職したりするのを見て、周りが「頑張らなくてもクビにならないなら自分もラクしたい」と考えてしまうケースもあります。

病気の場合、辞めさせるわけにもいかないので、かまってちゃんを抱えることは、さまざまな意味で会社の死活問題になり得るのです。

「できていること」を褒め、特別視しないことが鉄則

――では、かまってちゃんをどう取り扱うと、その“症状”が改善されるのでしょうか。

大野:総じてかまってちゃんは自己肯定感が低いので、まずは身近な人が認めてあげることが大事です。かまってちゃんが変わるかどうかは、本人の資質以上に周囲の環境が大きく影響しています。上に立つ人の意識や雰囲気など、目に見えないことが非常に大事なのです。

最近ACジャパンが「おとなもほめよう」というCMを放送していて、これはいいなぁと思いました。褒められると大人でもうれしく感じるものです。とくに社会人になると仕事ができてあたりまえですから、褒められる機会はぐっと少なくなります。まずは相手が「できていること」を褒めてみてください。

――しらじらしくない、自然な形で褒めるコツはありますか。

大野:企業でコミュニケーション研修をすると「(部下の)何を褒めるんですか?」と尋ねてくる管理職もいますが、上司から部下へは「感謝の言葉」を伝えるだけで十分な褒め言葉になるのです。具体的には「ありがとう」「●●のおかげで助かった」「よくやった」「さすが」などでしょうか。

ちなみに褒めたら「褒めっぱなし」にしておくのがいいです。メンタルが弱い人だと「さすが●●君だね、次も頼むね」と言われると、それがプレッシャーになってしまうのです。褒め言葉の一言だけで終わらせるのがコツですね。

――かまってちゃんの周囲にいるメンバーの士気を下げない方法を教えてください。

大野:かまってちゃん問題は職場全体の問題なので、一体感を持って取り組まない限り、状況は変わりません。上に立つ人が厳しさと優しさをバランスよく持って、かまってちゃんを特別視しないことが大事です。

長所を見つけて褒めてあげるのも欠かせませんが、もしかまってちゃんが周囲に迷惑をかけているようなら、周りの社員に「大変だけど頑張って」と声をかけるべき。上司ができることは全員を平等に扱うことと周囲のフォローですから。

>>【後編はこちら】職場で感情的になってはダメ! 女性が「かまってちゃん社員」に認定されないための心得

●大野萌子(おおの・もえこ)
Office MOEKO(おふぃす もえこ)代表。防衛省、文部科学省などの官公庁、大手企業、大学、医療機関などで、年間120件以上の講演・研修を行う。企業内健康管理室カウンセラーとして、人間関係改善に必須のコミュニケーション、ストレスマネジメント、ハラスメントを得意とし、現場での経験をふまえ、机上の空論ではない活きたメンタルヘルス対策を提供している。(一社)日本産業カウンセラー協会において、産業カウンセラー及び、キャリアコンサルタント養成指導歴15年。法政大学卒。産業カウンセラー、2級キャリアコンサルティング技能士。

※編集協力/プレスラボ

池田 園子

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