東肛門科胃腸科クリニックの瀧山亜希医師

東肛門科胃腸科クリニック・瀧山亜希医師

先日、筆者の友人女性(31歳・事務職)から「痔になってしまったの」という衝撃的な告白を受けました。痛みはなかったもののお尻の穴に違和感を覚え、触れてみたらイボのようなものを発見。すぐに肛門科で診てもらったところ、「いぼ痔」と診断されたそう。痔と言えば、なんだか中年男性だけが発症するイメージがありますが、近年は働き盛りの女性にも急増しているとのこと。

実は、痔には「痔核(いぼ痔)」「裂肛(切れ痔)」「痔瘻(あな痔)」の3種類があり、女性に多いのはいぼ痔と切れ痔。なぜ女性に急増しているのか、対処法や予防法はあるのか、またもし疑わしい症状になってしまった時どうしたら良いのかなどを、東肛門科胃腸科クリニックの瀧山亜希医師に詳しく伺ってきました。

痔の一番の原因は何と言っても便秘!

――痔になる女性が増えているということですが、原因はどのようなことが挙げられますか。

瀧山亜希医師(以下、瀧山):一番の要因は便秘ですね。女性は腸が長めなので便秘のリスクが高いということと、社会進出に伴って座位の時間が増えた、冷房などで冷えやすいなどの要因が重なり20代でも痔になる方が増えています。便が硬くて出づらかったり一度にたくさん出てしまうなどして、過度に肛門が開いて切れてしまったり、肛門内に圧力がかかりすぎて痔核になったりということがあります。痔核とは、過度のいきみ、血行障害などにより生じる肛門部の腫れのことです。

――遺伝的要因はありますか?

瀧山:ないですね。食生活や環境要因が一番になります。便秘にならないように消化が良く食物繊維を多く含んだ食べ物、水分をしっかり摂取することが大切です。

――排便時にいきむことが良くないということですが、なかなか便が出づらい時にはどうしたらいいでしょうか。

瀧山:便意を逃さないこと、また一度に無理に出そうとしないことですね。また歩いたりちょっとした体操をしたりすることで、消化管の「蠕動(ぜんどう)運動」が活発化して腸が動き、便意をもよおしやすくなるので効果的ですよ。逆に、蠕動運動は走ると止まってしまい逆効果なので、便秘の解消には散歩がてら歩くことがおすすめです。

なかなかトイレに行けないデスクワーク女子は注意!

――もよおしたらすぐにトイレに行くということが大事なのでしょうか。

瀧山:そうですね。便意を感じても我慢してしまうと、せっかく下りたものが上がって戻ってしまいます。また、女性だとなかなかトイレに行けないという方も多く、水分の摂取自体を控えてしまいがちです。便意を逃す上に、水分摂取が少ないために硬い便になり、便秘になってしまうという悪循環なんです。

――我慢はいけないのですね。先ほど便意をもよおすために歩くことが大切だとおっしゃいましたが、仕事中なかなか歩けないデスクワークの方ができる痔の予防策はありますか。

瀧山:立ち上がったり屈伸運動をするだけでも効果があります。同じ姿勢で座り続けていると、体重がすべてお尻にかかりますので、うっ血し、痔持ちの方はさらに症状が悪くなることもあります。この場合には、ドーナツ型や厚めのクッションが除圧となり効果的です。また、女性はスカートなどで冷房に弱く下半身が冷えやすい上に、冬場は寒さで血流が悪くなりますので、ひざ掛けや電気毛布、カイロなど使ってお腹や足だけでなく、お尻全体を温めることも大切です。

下剤やお尻に関する注意点

――便が出るように下剤を飲むことはOKでしょうか。

瀧山:市販のものは、常用するより非常事態に飲んでいただく方が良いと思います。一口に下剤と言っても便を柔らかくするものから大腸の蠕動を刺激するものなど、種類や用量も様々です。ご自身にあったものを使うためにも、最初は医師の指導のもとが良いでしょう。また、下剤に頼らず、食生活や運動の改善、腸の動きに合わせて「の」の字を描くようにお腹をマッサージすることにより、思った以上に効果が得られることが多いです。やはり水分をしっかりとること、便意を我慢しないことは心がけていただきたいです。

――そのほかお尻に関する日常での注意点はありますか。

瀧山:洗おうと必要以上にウォシュレットを当てすぎたり拭きすぎたりしたことが原因で、肛門の周囲がかぶれたりかゆくなる方も多いです。お尻の皮膚や粘膜は弱いので、もともと痔や裂肛がある方だと、この習慣のせいで治りにくくなることがあります。清潔に保つという点では、入浴時にボディソープを泡立ててポンポンと当てて洗い流すだけで十分です。ウォシュレットもやわらかやマイルドのモードにして十数秒程度、あまり刺激を与えないようにすることも大切です。お尻を拭くときもゴシゴシこするのではなくティッシュを押し当てて水分を吸収させるような感じで拭いていただくとお尻に優しくて良いですよ。

それから、痔や裂肛のある方は、便秘やいきみ・冷えだけでなく、アルコールや香辛料の強い食べ物でも症状が悪化することがよくありますのでご注意ください。

痔は悪性ではなく良性の疾患

――もし痔になってしまった場合には、手術が必要なのでしょうか。

瀧山:痔というのは悪性ではなく良性の疾患ですので、いぼ痔の場合は腫れをひかせたり、出血を止める、切れ痔の場合は痛みを和らげつつ出血を止め、切れた傷を早く治すというように、症状を改善させることが治療の目的となります。症状が非常に激しい一部の状態を除いては、すぐに手術が必要ということはありませんし、薬のみの治療で済む方のほうが多いです。

――なるほど。手術が必要な場合には適切に処置をしていただけるということですね。

瀧山:そうですね。ご本人の希望がある時や薬の治療でも改善しきらない時、また激しい痛みや便が出づらい、出血がひどい、腫れすぎて肛門にはまりこんでしまうなど、日常に支障をきたしてしまっている方には、手術をおすすめします。また、薬による治療で症状が緩和しても痔自体は消えてなくなるわけではないので、便秘やいきみなどで再燃することもあります。そうして何度も繰り返す辛さを緩和したいという方にも、手術をおすすめすることがあります。

――手術は日帰りでもできますか。

瀧山:はい。麻酔を打って効かせる時間が少し必要ですが、実際の処置は5分~20分くらいで終わりますよ。麻酔が切れれば、手術をした当日は傷の痛みが出ますので適宜痛み止めを使用して頂きます。通常、翌日以降は日に日に楽になっていきますよ。

シムス位になって優しく診察してもらえる

シムス位とは?

――他人にお尻を診られるということでなかなか勇気が出ないという方も多いかと思います。痔の診察ではどのようなことをしますか。

瀧山:シムス位と言って、壁側を向いてお尻だけ出して横になっていただきます。「ひざを抱えて、できるだけお尻に力入れないでくださいね」とお声をかけながら、ちゃんと潤滑ゼリーを塗ってできるだけ痛くないようにと心がけて診察します。

――これならリラックスして診ていただけそうですね。

瀧山:めったにないことですが、痔だと思って放っておいたら、実は癌だったという方もいました。また、今回ご説明した以外にも、突然の痛みと腫れが出る血栓性外痔核などお尻には様々な疾患があります。診察してみないとわからないこともありますし、適切な薬や処置で早く楽になれることも多いので、不安を感じられたら診察に来ていただくことがおすすめです。都内には肛門科の女医さんもいますので、安心して来院していただきたいです。

(笹崎ひかる)

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