ネットは現実に変化を起こせるのか?

>>【前編はこちら】10代から女子大生まで、SNSで世界に広がるフェミニズム―彼女たちが自撮り写真をアップする理由とは?

前編では「“私”がフェミニズムを必要としている理由」を書いた看板を参加者が掲げ、SNS上で宣言するフェミニズムキャンペーン、「Who Needs Feminism?」について、発起人のイヴァナ・ゴンザレスさんに伺いました。後編は、そんなゴンザレスさんが見る、SNSにおけるフェミニズムキャンペーンの課題を伺っていきます。

惨殺写真の送りつけに殺害予告……過激な「バックラッシュ」

「キャンペーンは初日から大きな盛り上がりを見せた」と話すゴンザレスさんですが、同時にその後ずっと悩まされる問題に直面したといいます。それは、インターネット上の「荒らし」。

「非常にポジティブな反応がたくさん寄せられた反面、世界中の人から私たちの活動についてひどいことを言われるのは恐ろしい体験でした」

キャンペーン開始後しばらくは、フェイスブックページには男性器などを写した卑猥な写真や、女性の惨殺写真などが投稿され続けたため、関係者でフェイスブックページを24時間チェックする体制をしいていたとのこと。また、殺人予告などを送りつけられることもあり、「私たちのうちの誰かがひどい目に遭うのでは」と気が気でなかったそう。

こういった女性運動に対する反発は「バックラッシュ」と呼ばれ、決して今に始まったことではありません。しかし、昨年10月、米国で女性ゲーム評論家の大学講演が銃乱射予告によって中止になった事件に見られるように、近年「バックラッシュ」は「荒らし」と結びつき、過激さを増しています。

オンライン・キャンペーンは現実を変えられるのか?

加えて、ゴンザレスさんがキャンペーンに関して懸念しているのは、「キャンペーンが現実のアクションへつながらないのでは」ということ。女性問題の認知向上の重要性は熟知しているものの、「それだけでは足りない」と彼女は話します。

「問題は、苦しんでいる女性の人生に具体的な変化を起こすことができるのか、ということなんです」

この「オンライン上のキャンペーンは現実を変えられるのか」という問題には、SNS特有の性質も絡んできます。フェイスブックやツイッター、インスタグラムやタンブラーなどの人気SNS上では、フォローしている人や友人、リンクへのクリックなどから分かる個人の嗜好などによって、閲覧することになる情報が変わってくるからです。

こういったことを踏まえると、SNSを利用したオンライン・キャンペーンの最大の弱点は「情報発信をしても、すでにそのトピックに興味を持っている人にしか情報が届かないこと」だといっても過言ではありません。

ゴンザレスさんはすでにフェミニズムに賛同している人にメッセージを届けても、このキャンペーンの目的は達成されない、と話します。

写真撮影会をきっかけに、フェミニズムに縁がなかった人と接点を

上記のような問題を克服するために、ゴンザレスさんらが現在取り組んでいるのは、「Who Needs Feminism?」の写真撮影会を世界各地で実施すること。オンライン上で閲覧できる資料「How to Start Your Own Campaign Guide」(“自分でキャンペーンを立ち上げるには”ガイド)の開発のほか、メールのやり取りなどによる、現地有志のサポートも行っています。

「これらの撮影会がなければ、今までフェミニズムと何ら関わりを持ったことがない人が“フェミニズム”という言葉と出会う機会はありません。私たちの団体にとってはこれらの撮影会が非常に重要なのです」

上述のゴンザレスさんらの努力もあり、イギリス、フランス、ドイツ、カザフスタン、インド、シンガポールなどの国々で有志が「Who Needs Feminism?」と提携し、撮影会を実施しているのだとか。今後も活動をより幅広い層に知ってもらうため、写真撮影会に力を入れていくのだそうです。

欧米で広がる、ネットからリアルへの潮流

このように、ネットからリアルへフェミニズムキャンペーンの影響力が波及した事例は徐々に増えつつあります。

2013年には、英国の女性活動家キャロライン・クリアード=ペレズさんがツイッター上で「英国紙幣に女性の顔を」と呼びかけ、結果、女性作家ジェーン・オースティンの肖像が10ポンド紙幣に刷られることになりました。

同年、同じく英国の女性活動家ローラ・ベイツさんらが、「次は妊娠するなよ」などといったおぞましいキャプションとともに、身体的暴力に遭っている女性の写真を多数掲載していたフェイスブックコミュニティに対する検閲をフェイスブックに要求。ベイツさんらによるフェイスブック上のキャンペーンの結果、同社がヘイトスピーチに対するガイドラインの改善や、同社モデレーターの研修強化などへの合意を示す、異例の声明を発表する事態にまで持ち込むことができました。

SNS上のフェミニズムキャンペーンのトレンドは、まだ始まったばかり。今後日本をはじめとする、他の地域でも広まるのか、ネットにおける盛り上がりにとどまらず、現実に変化を起こせるのか……これからもこの動きから目が離せません。

ケイヒルエミ

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