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2015/01/22

助成金と情報の周知で防ぐ「飛び込み出産」

東京都北区は平成26年12月1日より、区内の妊娠検査薬を販売する薬局・薬店147か所(平成27年1月現在)で「妊婦向け相談カード」の配布を始めた。このカードは、妊婦・出産について不安が強い、妊婦健診を受けてない、出産時に初めて医療機関にやってくる飛び込み出産、一人で自宅出産するなど、リスクが高い妊婦等に支援の情報を届けようと始めたものだという。出産時の妊産婦・新生児の健康リスクが高いだけでなく、出産費用踏み倒しなども起こりうる「飛び込み出産」。背景に何があり、なぜこうした支援が必要なのか、妊娠・出産の仕組みと共に考えてみた。

なぜ出産前からの支援が必要なのか

助成金と情報の周知で防ぐ「飛び込み出産」

東京都北区が配布する「妊婦向け相談カード」と医療機関に配布されている「特定妊婦等の支援マニュアル」

北区でこの取組みを行っているのは児童虐待対策担当課だ。というのも、妊婦健診未受診や飛び込み出産に至る妊婦は、児童虐待につながる恐れがあると考えられているからだ。ウートピ編集部が北区に取材したところ、北区では平成25年に区役所にへその緒がついた女児が置き去りにされる事件が発生、それをうけて今回の取組みを始めたそうだ。産院や区役所に来ない人も妊娠検査薬は買いに来るだろうと予測したという。

全国的にも出産前から支援を行い、虐待を防ごうという動きが、児童虐待分野に浸透しつつあるようだ。例えば、大阪府は現状や背景を探ろうと調査を行っている(参照:未受診や飛び込みによる出産等実態調査報告書)。それによれば妊婦健診を受けなかった理由として最も多いのは「経済的理由」で約3割を占め、次いで「知識の欠如」、「妊娠に対する認識の甘さ」、「精神疾患の悪化や犯罪で収監されている間に受診機会を消失した」と続き、これらは児童虐待の背景要因と重なるという。

申請しなければ利用できない「出産一時金」

そもそも、出産前の妊婦の健診には国が助成を出しており、出産時の費用も「出産一時金」として健康保険から約42万円が支給される。出産費用がそれより安くおつりが来るケースもある。つまり、あまり自腹を切らなくても出産をできるようにはなっているのだ(健康保険に加入していない場合でも特定の助産施設で出産できる助産制度や、生活保護受給者なら生活保護から費用が出ることになっている)。

しかし、問題はこれらの制度が「申請したら」利用できるものだということだ。病院を受診し、出産予定日が確定したら住んでいる自治体に妊娠届を出すことで妊婦健診の助成を受けることができる。出産一時金も加入している健康保険か出産する病院窓口で申請の手続きをしなければもらえないものだ。つまり、知らなければ使えないのだ。そこで、情報を届ける北区のような取組みが重要になる。

制度を活用しても、自費負担の可能性も

いくら制度を使ってもカバーしきれない費用は発生する。まず、妊娠届を出す前の医療機関の受診は自分で払うことになる。また、妊婦健診も助成でカバーしきれない部分は自腹になる。国は妊婦一人当たり12万円を地方自治体に交付金として交付しているが、実際に妊婦に使われる助成金額は自治体によってばらつきがある。厚生労働省の調べでは全国で最も助成金額が大きい都道府県は岐阜県で118,042円、最低は神奈川県で63,455円と岐阜県の半分程度になっており、助成金額が低い自治体ではその分自腹で負担する金額が増える。

さらに、出産費用も産院によってまちまちである。厚生労働省の資料では概ね都市部など所得が高い地域では出産費用も高い傾向にある。都市部でも医療機関によって金額は異なるが、公立病院等の費用が安く抑えられる産院では予約が集中し、早めに予約しないと受け付けてもらえないこともあるようだ。(参照:妊婦健康診査の公費負担の状況にかかる調査結果について

すべての妊婦に情報を届けることの重要性

まず大切なのは知識を周知する取組みをして、制度を活用してもらうこと、妊婦健診の自治体間格差がなくなること、そして安い産院が選びやすくなることではないだろうか。これで経済的問題や知識の欠如をクリアしやすくなるだろう。周知は北区のように役所や産院にこない妊婦にどう情報を届けるかに取り組むだけでなく、教育段階で育児の学習等と共に学んでいくことも必要ではないだろうか。

また、妊婦が病院を選びやすくする仕組みがあってもいいのではないだろうか。一般的に病院というところは会計をするまでいくらかかるか分からない。しかし、それでは、経済的に困窮している人にとっては敷居が高い。各産院の平均的な出産費用や出産可能な方法、助産施設か否かなどが地域ごとに一覧になっているなど、産院を選びやすい仕組みを作ってはどうだろう。

さらに、リスクを抱える妊婦は経済的のみならず、望まない妊娠であったり、産後の不安などさまざまな課題を抱えている。こうした気持ちを受けとめ、必要な時には一緒に産院に行く等、寄り添った支援を充実させていくことも必要だろう。

こうしたユーザー目線の使いやすい仕組みや体制が整えば、実はリスクの高い妊婦だけでなく、妊娠出産をする全ての女性にとってメリットがあるのではないだろうか。いつかは子どもが欲しい、そんなアラサー女性こそ、今からこうした問題に関心を持ってみてはどうだろう。

鈴木晶子

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