「意外と面白い!」と、好意的な声が挙がっているのが、1月4日からスタートしたNHK大河ドラマの『花燃ゆ』。「面白い!」に、「意外と」と付くのがひと言余計な気もするが、視聴者がそのように感じるのも無理はない。井上真央が演じる主人公・杉 文(すぎ ふみ)の名前を元から知っていた人が、一体どれだけいるというのだろう。

杉 文(すぎ ふみ)って誰?

杉 文(すぎ ふみ)は、幕末から大正時代に実在した女性。明治維新の精神的指導者・吉田松陰の妹で、長州藩における尊王攘夷派の中心人物・久坂玄瑞の妻と聞けば、なんとなく人間関係が見えてくるだろう。だったら吉田松陰や久坂玄瑞を主人公にすれば良いではないかとツッコミたくなるが、両名共に20代で早逝しているため、1年かけて描くには無理がある。また、今年で54作目となるNHK大河……歴史的にメジャーな人物ばかりを主人公にし続けると、どうしても「ネタ切れ感」が出てしまうという事情も関係しているのだろう。

妹キャラブームの現代にピッタリ!?

では、マイナー人物である杉 文(すぎ ふみ)を主人公にした『花燃ゆ』が、意外に面白く感じる理由はどこにあるのだろう? ここでは「妹」というポジションに的を絞りたい。時代はいま、空前の「妹萌えブーム」である。ゲームや漫画、アニメーションなど、いわゆる「二次元」と呼ばれるジャンルにおいて、妹キャラが圧倒的人気を博しているのだ。この現代文化に、『花燃ゆ』はうまいことマッチしたのだろう。

「兄」という上の立場で、妹からワガママを言われたい

現代男性はなぜ、妹キャラに萌えるのだろうか? まず考えられるのが、上下関係が明確であるという点。兄ポジションという上の立場から、あえてワガママを聞いてやるシチュエーションがたまらないのだろう。肉食系女子と呼ばれる、自己主張強めの女性には決して抱くことのない、「しょうがないなあ」という感情が、妹キャラに対しては自然に湧き上がるのだ。

庇護欲が満たされ、罪悪感に興奮

ドラマと同様に、「妹キャラ」は兄に対してどこまでも純粋なものである。実際の兄妹関係では、必ずしもそうではないのだが、「妹萌え」というジャンルにおいては、そういうものなのだ。そしてそこから、庇護欲が生まれる。その庇護欲によって、男としての己の強さを実感できる。「お前は、俺がいなくても大丈夫だろ?」と言いたくなるような強い現代女性とは、対極の位置にあるのが妹キャラなのだ。

そして、「お兄ちゃん」という言葉の持つ圧倒的破壊力! 近親姦をも連想させるような、何ともいえない罪悪感がそこにはある。実際の近親姦には強い嫌悪感を持っていても、マスターベーションの興奮材料として妹キャラが重宝されることはたびたびある。

意中の男性を「お兄ちゃん」と呼ぶ女性たち

ところで、女性側が「お兄ちゃん萌え」の感情をもつことはあるのだろうか? 答えは、「イエス」。意中の男性を、苗字でもなく名前でもなくニックネームでもなく、「お兄ちゃん」と呼ぶ女性が、ごく少数ではあるが、確かに存在する。筆者の見た限り、友達以上恋人未満(肉体関係アリ)で、なおかつ女性が男性にベタ惚れしている関係性において見受けられる呼び方だ。

本命志願者ではなく別枠ポジション

彼女たちはおそらく、自分が本命ポジションにつく可能性は薄いと、頭のどこかで理解しているのだろう。正式交際への期待に自ら蓋をすべく、「カノジョにしてくれなくてもいいもん」という、いじけた気持ちを、「お兄ちゃん」という呼び方で表現しているのではなかろうか。本命志願者ではなく、「妹キャラ」という別枠に収まったほうが、後々傷つかずに済む。負け戦はしたくない、片想い女性のプライドなのかもしれない。想い人を何と呼ぼうと個々の自由ではあるが、筆者個人の考えでは、いい歳した大人の女性が、「お兄ちゃん呼び」には違和感を覚えてしまう。わずかな可能性でも正式交際への望みに賭ける気持ちがあるのなら、「お兄ちゃん呼び」は封印すべきであろう。

始まったばかりの『花燃ゆ』が、現代の妹萌えブームに拍車をかけるのか、ドラマの進行によっては全く別の影響を視聴者にもたらすのか、年末まで楽しみに見守りたいところである。

菊池 美佳子

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