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2014/12/22

芸能人にも多い「自宅出産」は危険?

女性にとっては人生の一大イベントと言っても過言ではない「出産」。人生の一大イベントだからこそ、より自分らしい出産をしたいと望む女性が増えてきているようです。

例えば自宅出産。石田ひかり(当時32歳・第2子)、ともさかりえ(当時24歳・第1子)、高岡早紀(当時24歳・第1子から第3子)、相川七瀬(当時32歳・第2子と第3子)などの女性芸能人が自宅出産の経験を公表しており、最近では多くの妊婦さんの選択肢の一つとなってきているようです。「過ごし慣れた自宅で家族に囲まれてお産できるなんて素敵」と自宅出産に憧れを抱く人も少なくないのではないでしょうか。

しかし、先日、イギリスのメディア『デイリーメイル』に自宅出産に関する気になる記事が掲載されました。

自宅で出産しようとしたが、緊急帝王切開により何とか出産

アンナさん(当時35歳・第1子)は非常に健康な妊婦さん。周囲の勧めもあり、2名の助産師を雇った上で、北ロンドンにある自宅で出産することにしました。妊娠期間中も母子共にいたって順調だったので、アンナさんには自宅出産への不安は全く無かったそうです。

ところが、いざ分娩となった時に大きな問題が生じてしまいました。50時間にも及ぶ長い陣痛のせいで母子ともに衰弱し、母親の血圧低下に伴って、赤ちゃんが深刻な酸素不足に陥ってしまったのです。助産師による懸命の介助の甲斐もなく、最終的には自宅での出産は危険すぎると判断した助産師が救急車を要請。アンナさんは搬送先の病院で、様々な処置を受けた後、緊急帝王切開により何とか出産できたのだそうです。

ただし赤ちゃんは1週間以上も保育器の中で生死の境を彷徨い、その間、先に回復したアンナさんは自分が安易に自宅出産を選んでしまったことで、大切な赤ちゃんを失うかもしれないという恐怖心と罪悪感に苛まれました。

基準を満たした健康な妊婦でなければ自宅出産の許可が下りない

この記事には結果として死産になるリスクがあったというだけでなく、自宅出産に関する多くの示唆が見受けられます。イギリスの例と日本での現状を踏まえて考えてみましょう。

1)アンナさんは非常に健康な妊婦さんだった

そもそも、イギリスでは一定の基準を満たした健康な妊婦さんでなければ自宅出産の許可が下りません(英国国立医療技術評価機構のガイドラインより)。

日本には母子が自宅出産に耐えうるかどうかを判断する一定の基準は存在しません。また、自宅出産にあたって医師や専門家の許可も必要ありません。つまり、第三者による判断や許可の機会が全くなく、完全なる自己判断、自己責任で自宅出産することになります。

2)アンナさんは2名の助産師を雇った

イギリスでは単独での自宅出産は認められておらず、お産に際して必ず2名以上の助産師の介助が求められます(同機構のガイドラインより)。

日本では介助人に関する決まりは一切ありません。介助人が助産師の資格を持っているか否かさえ問われないので、家族の介助の下で単独出産する妊婦さんもいます。

3)アンナさんの助産師は懸命の介助をした

イギリスでは自宅出産を介助する助産師には新生児蘇生のための徹底的な教育が行われています(同機構のガイドラインより)。アンナさんの時も病院に搬送される前に自宅で助産師が持参した酸素ボンベによる処置が施されました。この処置があったからこそ、死産を免れたとさえ言えるようです。

介助人に関する決まりさえ存在しない日本では、酸素ボンベの用意を含む新生児蘇生のための準備が万全とは言い難いのは言わずもがなです。

4)アンナさんは搬送先の病院で何とか出産できた

イギリスではすぐに搬送可能で緊急帝王切開にも対処できる病院との強い連携が義務付けられています(同機構のガイドラインより)。

日本では助産院であっても、緊急帝王切開も可能な病院と連携している所は稀。ましてや自宅出産となると緊急時の受け入れ態勢が整っているか否かなどは考慮されず、とりあえず最寄りの産科病院に担ぎ込まれるだけ、ということが多いようです。

出産に際して何よりも優先するべきは、赤ちゃんの安全

無事に2歳の誕生日を迎えたお子さんを抱いたアンナさんは今、当時を振り返ってこんな風に語っています。生まれてくる子を危険に晒すような自宅出産を選んだのは、自分勝手な行為以外の何物でもなかったと。

出産に際して他の何よりも優先して考えられるべきは、赤ちゃんの安全であって、お母さんの産み方ではない。そんな忘れがちだけれど、すごく当たり前で、とても大切なことを考えさせられます。

この一件だけをもって自宅出産を否定しようというわけではありませんが、ただ、憧れているというだけで自宅出産を選ぶのは、特に日本においては、あまりにも短慮に過ぎてリスクが高いでしょう。イギリスと比較してみると、日本の自宅出産の現状は、あまりにも心もとないことは明らかだからです。

リスクとその回避方法を十分に学んだ上で、出産に臨むこと。それが自宅出産を選択する女性が、新しい命に対して持たなければならない最低限の良心、義務なのではないでしょうか。

チキティータ千賀子

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