ビジネス界も注目する「ハラル」って何?

左:カフェスタッフのアリアーさん。マレーシア出身のムスリマ(ムスリム女性)です。 右:杉山光さん

ビジネス雑誌の表紙に「人口16億人イスラム圏にビジネスチャンス」「ハラールに勝機あり」という言葉を頻繁に見かけるようになりました。どうやら、おじさまたちはイスラム圏向けビジネスに夢中のよう。一方、アラサー女性は「“ハラール”って、イスラム教の戒律で豚肉食べちゃダメってことでしょ」という知識が一般的なのではないでしょうか。

そんな中、浅草にオシャレで、イスラム教徒にも対応できるカフェがオープンしたとのこと。これは話題の「ハラール」(ハラル)を知るチャンス! ということで、「セカイカフェ」を運営する日本SI研究所の杉山光さんに話を伺いました。

ビジネス界が注目する「ハラール」って何?

オシャレな雰囲気の「セカイカフェ」

豚肉、お酒だけじゃない。醤油、味噌、白砂糖、塩にも注意

――「セカイカフェ」では、イスラム教の方にどのように対応しているんでしょうか。

杉山光(以下、杉山):イスラム教徒は「ムスリム」と呼ばれているのですが、彼らは宗教上の禁忌があり、豚肉、アルコールなど食べられないものがあるんです。許されているものを「ハラール」、禁止されているものを「ハラム」と言います。「ハラール=食」と捉えがちですが、 この言葉は生活全般に及びます。

うちでは店内に豚肉を一切置かず、料理にアルコールは使っていません。鶏肉、牛肉、羊肉は、イスラム教の作法に沿って屠殺された「ハラール認定」されたものだけを使用しています。お客様はムスリムの方だけではないので、夕方5時以降はお酒も提供しているんですが、冷蔵庫は専用、お酒のグラスは他と分けて専用スポンジで洗っています。

醤油や味噌、みりんやお酢といった日本を代表する調味料にも、アルコールが含まれているので、これも注意が必要です。今はハラール認証を取得したこれらの商品も増えてきました。

それから塩も岩塩か天日塩のみ。白砂糖は、精製・漂白段階で骨炭(動物の骨を炭にした物)にて濾過させたるため、ムスリムにはNGです。またベジタリアンは上白糖を嫌いますのでオーガニックシュガーなど天然由来の砂糖を使います。

パンやお菓子などによく使われるショートニングは動物油脂を使用していないものを選ぶ、チーズも凝固酵素のレンネットがダメなど、気を付けなければならないことは細かくありますね。

ビジネス界も注目する「ハラル」って何?

セカイカフェのメニュー、「ラムステーキセット」

ムスリム対応料理は、自然とヘルシーでおいしくなる

――通常のカフェ経営よりも、コストがかかりそうですね……。

杉山:そうですね。でも、ムスリムやベジタリアンなどに対応できるメニューにすると、自然とおいしくて体にいい食材を使うことになるんですよ。野菜もたっぷりになりますし、加工品を使うことがほぼ無くなります。さらにグルタミン酸ナトリウムの添加物を使わない、遺伝子組み換え食品も避けるなど、結果、ムスリム以外の方にも、喜んでいただけるメニューになりました。ムスリム対応のノウハウでベジタリアンやアレルギー対応もできますので、お子さん連れのママさんもよくいらっしゃいます。

――それは美容にもよさそう! どういったメニューがあるんですか?

杉山:ハラールミートを使った「ラムステーキ」、野菜たっぷりの「グリル野菜ピザ」、「ソイミートの塩焼ソバ」がムスリムの方にも人気があります。果物そのままの美味しさが味わえる「カジュッタ」などドリンクも色々ご用意しています。

――イスラムに寄りすぎないので、アラサー女性も入りやすいですね。ところで、飲食店向けの「ハラール認証」は取得しなかったんですか。

杉山:ハラール認証取得については何度も検討をしましたが、結果、取得せずにオープンしました。やはり取得となると、サービスに制限が出てくるんです。

運営会社は2012年からハラールフード通販事業行っています。私自身、NPO法人「日本ハラール協会発行」のハラール管理者講習を修了しています。認証取得より、ムスリム本人達との信頼で繋がっている方がいいと思いますし、今では毎日のようにムスリムの方にも来ていただいています。

ビジネス界も注目する「ハラル」って何?

「グリル野菜ピザ」

東南アジアからのムスリムが急増

――お店は日本を代表する観光地の浅草にありますが、ムスリムの外国人観光客が増えている実感はありますか?

杉山:インドネシアのビザ緩和と増便するLCC(格安航空会社)の影響もあってか、東南アジアのムスリムの方を多く見かけるようになりましたし、何よりお店にたくさんいらっしゃいます。東南アジアは経済状況が向上しているので観光客が増加しているんですよ(参照:日本政府観光局)。

マレーシアは60%、インドネシアは88%がイスラム教です。浅草に観光に来る方にも、髪を覆う“ヒジャブ”をつけている女性がかなりいらっしゃいます。男性は見た目ではわからないので潜在的にかなりいるんじゃないでしょうか。

――イスラム教というと、中東の過激派やテロというイメージもありますが。

杉山:メディアだとそればかり取り上げられますもんね。自分の周囲にいるのは、東南アジアやバングラディッシュのムスリムの方が多いのですが、みんな熱くて優しい人ばかりです。

彼らも日本が好きで観光に来てくれるのに、ムスリムに対する整備が遅れています。例えば、1日5回お祈りをするのに、そのための場所がない。「東京オリンピックまでに訪日観光客を2,000万人」を目標に掲げていますが、それより早く目標を達成しそうな勢いだと実感しています。早くしないと間に合わないかもしれないと思いますね。

●取材協力:セカイカフェ

(穂島秋桜)

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