「内縁の妻」は遺産を相続できるのか?

京都・向日市で、当時75歳の男性が青酸化合物で毒殺されたというニュースが世間を騒がせています。逮捕された妻の筧千佐子容疑者は、これまでに4回も結婚したものの、全員と死別、さらには内縁関係にあった男性も死亡しており、これらの男性たちから莫大な財産を相続したのではないか、と言われています。

ここで気になるのが、婚姻届を提出していない「内縁の妻」が故人の財産を受け取れるのか、ということ。内縁関係の相続について、かえで法律事務所の楓真紀子弁護士に伺いました。

そもそも「内縁」とは?

――「内縁」とはどのような関係のことを言うのでしょうか。

楓真紀子弁護士(以下、楓弁護士):「内縁」とは「婚姻の意思をもって、夫婦として共同生活をし、社会的に夫婦として認められているものの、婚姻届を提出していないため、法律上の正式な夫婦として認められない男女関係」のことをいいます。

――「同棲」と何が違うのでしょうか。

楓弁護士:夫婦同様に暮らしていく意思、すなわち「婚姻の意思」があるかどうかの違いですね。「同棲」とは、「婚姻の意思を持つまでに至っていない、あるいは婚姻の意思を持たないで共同生活をしている男女関係」をいいます。

「内縁」の場合、法律上の正式な夫婦ではありませんが、「婚姻の意思」を持ち、実質的に「夫婦として」生活をしていますので、法律上の夫婦とほぼ同様の保護を受けることができます。

つまり、「内縁」の場合、お互いに同居・扶養の義務、貞操を守る義務、婚姻費用の分担義務があります。また、内縁を解消して別れる場合には、離婚と同じように財産分与請求が認められますし、相手に不貞行為があれば、慰謝料請求も認められます。ですが、「同棲」の場合は、単なる男女の共同生活に過ぎないため、そういう保護は受けられません。

「内縁の妻」は相続人にはなれない

――「内縁」は、法律上の夫婦とほぼ同様の扱いを受けるとのことですが、では、内縁の妻と、法律上の妻との決定的な違いは何でしょうか。

楓弁護士:ずばり「内縁の妻」は「相続人にはなれない」ということです。相続においては、婚姻の届出という形式が重視されています。そのため、仮に何十年も夫婦として一緒に暮らしていたとしても、内縁の妻には、残念ながら、相続権は一切認められません。

「特別縁故者」になれる可能性がある

――では、内縁の夫が亡くなった場合に財産を受け取ることはできないのでしょうか。

楓弁護士:内縁の夫に相続人が1人もいない場合には、内縁の妻が特別縁故者であるとして、家庭裁判所に対し、「特別縁故者に対する相続財産の分与」を求めることが考えられます。もっとも、特別縁故者と認められるかどうかは、家庭裁判所の判断によりますので、必ず受け取れるというわけではありません。

「遺言書」を書いてもらうしかない!

――内縁の夫に相続人がいる場合はどうでしょうか。

楓弁護士:特別縁故者の制度は、法定相続人が1人でもいる場合には認められません。そのため、内縁の夫に法定相続人がいる場合に、内縁の妻が、死後に財産を受け取るためには、遺言書によって遺贈してもらうしかありません。

遺言を残せば、内縁の妻に財産を遺すことはできます。ただし、法定相続人の遺留分を無視して、内縁の妻に財産を遺贈しようとしたりすると、残された法定相続人との間でトラブルになるので注意が必要です。

最近では「夫婦別姓にしたい」などの理由で自ら内縁関係を選択する男女も増えてきています。夫婦の事情は人それぞれですが、詳しいことは弁護士に相談するなどしてメリット・デメリットを知った上で、自分たちに合った夫婦関係を選択していくことが大切だと思います。

取材協力:かえで法律事務所

(編集部)

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