未婚で『おひとりさま出産』を決意した理由

『おひとりさま出産』著者・七尾ゆずさん


「金も要らなきゃ男も要らぬ。私はとにかく子が欲しい」

40歳目前、年収200万円以下のバイト生活。彼は頼りにならず、親にも見放され……という境遇の中、それでも子供が欲しかったという漫画家、七尾ゆずさん。彼女が自らの体験を描いた漫画『おひとりさま出産』(集英社クリエイティブ)が先月発売されました。

そのタイトルを見ると、瞬時に“ひとりで産むなんて無謀”“先立つものがなければ子供なんて産めない”とネガティブな発想が先立つ人も多いはず。ですが、出産をためらいがちな女性にとっては、彼女の“ひとりで産むから頑張れる”という逆転の発想はとても衝撃的で、女性の生き方の選択肢を広げてくれるのではないでしょうか。

「覚悟を決めた者に世界は優しい。妊娠してから毎日が楽しいです」と笑顔で語る七尾さんに、おひとりさま出産に至った心境を伺いました。

何もないドン底の自分に絶対的なものが欲しかった

――単刀直入にお伺いしますが、独身のままでも子供が欲しかった理由とは?

七尾ゆずさん(以下、七尾):漫画家として成功したくてずっと頑張ってきたのですが、全然芽が出ないまま気付けばアラフォーになっていました。仕事もうまく行かなくて、収入もない。生きる目標がなにもなくなってしまって、自分の価値が見出せなかったんです。そのとき、せめて何かひとつだけでもいいから絶対的なものを手に入れたいと思いました。それが子供だったんです。子供を育てることを目標にしたら頑張れると。

――ひとりで産むことに不安や躊躇はなかったのですか?

七尾:自分は目標さえあれば頑張れる人間だと思っていたので、子供のことを考えたらどんなことでも頑張れる、乗り越えられると思いました。もちろん周囲からも親からも猛反対されましたが、私はやっていける自信の方が大きかったですね。“子供ができたらどんな世界が待っているんだろう”という不安はありましたが、それは同時に楽しみでもあって。

――最初から「結婚」という選択肢はなかったんですか?

七尾:なかったです。4年つき合った彼は自分よりも年下でまったく頼りにならない人(笑)。この人と結婚するメリットみたいのが一切浮かんでこなかったんです。でも“この人の子供が欲しい!”という強い思いがあったので、結婚はしなくていいので、子づくりに参加してくださいという形に(笑)。

――そして妊活をはじめて5か月でご懐妊。念願の妊婦になれたわけですが、妊婦になって何か変わりましたか?

七尾:なにせお金がなかったので、「出産までに100万円貯める」を目標に働くのに必死でした。ファミレス、コールセンターなど、時間の許す限り仕事してました。幸運なことにつわりも軽くて。でも本当に自分の健康頼みだったので、今思い返しても無謀だったと思います。

元々人に頼るのが苦手な性格なので、自分でなんとかする! という気合いで乗り切りましたね。まぁ、さすがに何もしない彼氏を見て「何もしなさすぎだろ!!」とキレたこともありましたけど(笑)。

頼れるのは政府の補助と女友達

――「出産一時金」など、自治体の補助などの勉強はされていたんですか?

七尾:全然。でもわからないことがあるたびに自治体に電話したんですが、その度に担当の方が丁寧に教えてくれました。一時金の他にも助成金というのがあるのですが、それをもらうには自治体によって色々な決まりがあって、私は適応外だったんです。だから、私が実際に補助を受けたのは「出産一時金」の42万円だけです。

検診などはチケットが利用できるので実質お金はかかりませんでしたが、血液検査などで2、3万かかることもありました。産んでからは「ひとり親医療助成」の制度や「児童育成手当」などの補助を受けましたが、これもその都度電話で教えてもらいました。

――産まれてくる子供のための支度はどうされたんですか?

七尾:ベビーカーにベビーバス、哺乳瓶に子供服……、大半のものは友達のおさがりです。“貧乏な女が一人で子供を産む!”ということをあちこちに触れ回っていたので、それを聞いた友達が色々送ってくれて。どこに行っても「不安です、困ってます」と言うと誰かが助けてくれました。保健士さんも電話をしてきてくれたり。こちらは勝手に「一人で産む!」と言っているのに、みんなが心配してくれる。ありがたいです。この感謝の気持ちも子供ができなかったらわからなかったと思います。

色んな人に支えられているんだと実感

――ズバリ、“おひとりさま出産”は世の中の女性に勧められますか?

七尾:オススメはしませんが、子供が欲しいという思いを止めることはないんじゃないかと。ただ「貯金はしとけ!」って思いますけど(笑)。あと、私は子供に父親を隠すようなことはしません。私にとって旦那は必要じゃないけれど、子供に父親は必要な存在だと思うので。なので、産まれてから会ってくれる彼の存在は大きいと思っています。

――おひとりさま出産をして七尾さんは変わりましたか?

七尾:ハイ! 子供がお腹の中にいるということが本当に幸せで。今まで焦って焦って何も手に入らず、本当に自分がダメ人間に思えて仕方なかったから“笑う”ということがなかったんです。でもお腹の子が動けば笑うし、その子のために頑張って働いている自分も好きだと思える。そもそも一人でいたら笑うことってないじゃないですか。この子が私に笑顔を取り戻してくれたんです。

またこのマンガを描くことで、読者から“自分の存在価値のために子供を産むなんて自分勝手だ”“親としての自覚がない”などの反感を買ってしまうかも……と思いましたが、逆に応援してくれるコメントばかりが届いて。“おひとりさま出産”でしたが、色んな人に支えられているんだと実感しています。

●七尾ゆず
年収アンダー200万、バイト歴24年のアラフォー漫画家。大阪生まれのAB型。ひとりで出産すると覚悟を決めてからの日々を描いた『おひとりさま出産』 (集英社クリエイティブコミックス)出版。続編は月刊『officeYOU』(集英社クリエイティブ)にて連載中。

根本聡子

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