清少納言は平安時代の“アラサー女子”

『枕草子』と言えば、教科書に載っている代表的な古典作品です。旧仮名遣いや聞き慣れない言葉の意味に戸惑いながら勉強した覚えのある方もいるのでは? 「春はあけぼの〜」のフレーズが有名な『枕草子』ですが、実は現代の女性も共感しそうな、毒舌エッセイとも言える内容の読み物だった!? ということで、11月5日、十文字学園女子大学にて、『本日もいとをかし!! 枕草子』の著者、イラストレーターの小迎裕美子さんと、監修を務めた赤間恵都子教授(十文字学園女子大学)、編集を担当した関由香さん(KADOKAWA メディアファクトリー)による特別講義「女子大生が清少納言になって現代の『枕草子』をつくる」に、足を運んできました。

清少納言は平安時代の“アラサー女子”

「春はあけぼの〜」は「春は明け方が超最高じゃん!」

関さんと小迎さんが二人三脚となって作成した『本日もいとをかし!! 枕草子』。この本によると、清少納言はバツイチの子持ち、中宮に遣えて枕草子の執筆を始めたのは28歳の頃だそうです。そう思うと、『枕草子』は、アラサー女性の心をがっちり鷲掴みする読み物と言っても過言ではなさそうですね。まずは、編集担当の関さんと、著者の小迎さんが、『本日もいとをかし!! 枕草子』を作成するにあたってのエピソードをお話していただきました。

編集担当の関由香さん:『本日もいとをかし!! 枕草子』を作ったきっかけは、中学生の頃、古典の授業で『枕草子』を勉強した際、「春はあけぼの〜」という、おもしろいのかおもしろくないのかよく分からないような文章を、先生が「春は夜明けが超最高じゃん」って訳してくれたんです。それで、古典ってちょっとおもしろいかもと思って調べてみると、清少納言が文中で「子どもがうるさいのに注意しない母親が超ムカつく」とか、「彼が元カノのことを話題にするのは意味が分からない」とか、つらつらと書いてあって、やはりおもしろいなぁと。

そして、大人になって編集者になったとき、このおもしろさを共有したいと思いました。でも、現代の人たちは長々と文章を訳したものは読んでくれません。また、清少納言は短い文章で人を引きつけます。それを表現できるのは現代だと漫画じゃないかと。それも、少女漫画テイストで描くのは清少納言には合わない、一枚の絵で人を引きつける作家さんは誰だと探したときに、小迎裕美子さんが浮かび、執筆を依頼しました。制作には4年半もかかりました。

清少納言は容姿にコンプレックスがあって人の悪口が大好き!

小迎裕美子さん:依頼をいただいた当初、清少納言については、「春はあけぼの人」という印象しかなかったのですが、勉強して、この本の制作にとりかかりました。当時の女性というと、ストレートのロングヘアというイメージですが、実は清少納言はクセ毛で容姿コンプレックスを持っており、憎い人が不幸な目にあうとうれしい、人の悪口が大好きという面もあるということを知りました。いろんな共感ポイントや、親近感を引き出せる部分をチョイスしたのがこの本です。

その中で一番びっくりしたのが、『正月の大根はムカつく』という章です。「たいしたものでもないのに調子づくもの」という、タイトルからして最高だなと思いました。大根のくせにおせち料理のきれいな箱に詰まっちゃってさっていう。そんな毒舌をはく章もあれば、ロマンチックな部分やセンチメンタルな部分もあるんです。

そして、私が大好きなのが「ゲス三部作」。赤間先生の解釈によりますと、「ゲス」とは現在の下劣という意味ではなく、階級のことを表しているそうです。その、「ゲス三部作」の完結編で「みなりの卑しいゲス共をどついてやりたい気持ちだった、しゃくに障った」という文章があります。これは納言が苦労して仏様をお参りしに、奈良の長谷寺に行ったのに、ゲス共(階級が下の人達)が、ずらっと前にいて、せっかく行ったのに自分は仏が見えなくてムカついたっていう話なんです。

私、こないだ葵祭に行ったんです。早起きして行ったんですが、すでにたくさん人がいて、立ってはいけないという注意事項があるのに、前に座っていた年配の男性が立ってしまって、全く何も見えなくなって、正にその気持ちを体感しましたね(笑)。

清少納言は平安時代の“アラサー女子”

清少納言の外見やキャラに関してイラスト付きで説明する関さんと小迎さん

アラサー女性が共感する『現代版枕草子』

さて、講義はいよいよ、女子大生による『現代版の枕草子』を作成するワークショップへ。みなさんそれぞれ、自分が思う「うれしきもの」「心ときめきするもの」「にくきもの」「ねたきもの」「ありがたきもの」を紙に書いていきます。「ありがたきもの」に「休講」、「とくゆかしきもの」に「試験の結果」など、大学生ならではの意見も並びましたが、アラサー女性も思わずうなずける、日常の現代版枕草子を筆者が選んでみました。

清少納言は平安時代の“アラサー女子”

赤間先生による解説と、小迎さんの感想が入ります

とくゆかしきもの……一刻も早く知りたいもの。
・コンサートチケットの当選結果
・景品の中身

ねたきもの……腹立たしいもの。癪に障るもの。
・電車で同じ車両の人と服が被ること
・自分の探し物をみんなで捜していたとき、自分の周辺から見つかること

心ときめきするもの……胸がドキドキするもの。心がわくわくするもの。
・何年かぶりのクラス会で、当時好きだった男子に会えること(しかし、実際に会ってみるとがっかりする風貌になっていることが多い)

うれしきもの……喜ばしいもの
・給料日
・夜中に友人にメールを送ったら、すぐに返信が来たとき

にくきもの……いやなもの。不快なもの。気に入らないもの。みっともないもの。(現代語の「憎い」のような、個人的な恨みの感情は含まない。)
・電車内で、マスクをつけずにゴホゴホと咳をしている人
・格好をつけているのか、レジで小銭を投げてくる客

ありがたきもの……めったにないもの
・電車で隣にイケメンが座ってきたとき
・飲むだけで痩せる薬

最後は、小迎さんが気に入った『現代版枕草子』をイラスト化してくれました。

清少納言は平安時代の“アラサー女子”

現代のアラサー女性のあるあるネタを自分でも思い浮かべてみるのも楽しそうです。清少納言の個性的キャラがあふれつつも親近感のわく『枕草子』に関してもっと知りたい方は、ぜひ『本日もいとをかし!! 枕草子』をお手にとってみてくださいね。

●取材協力 十文字学園女子大学|文芸文化学科

姫野ケイ

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