派遣法が改正すると働き方がどう変わる?

篠原涼子がスーパー派遣社員を演じたTVドラマ『ハケンの品格』から7年。

“ハケン”はライフスタイルに合わせて雇用形態が選べ一般化しました。しかしその反面、正社員を希望している人が、やむなく派遣社員として働いていることも事実です。2013年、パート・アルバイトを含む女性の非正規雇用者は1,296万人、そのうち14.1%の約183万人が正社員を希望しています(2013年労働力調査)。

現在、行われている第187回臨時国会にて、「労働者派遣事業の適正な運営の確保及び派遣労働者の保護等に関する法律等の一部を改正する法律案(=通称:労働者派遣法改正案)」が検討されています。

この派遣法改正が可決すると、“ハケン”はどう変わるのでしょうか。労働問題に詳しい佐々木亮弁護士に聞いてみました。

    「正社員」枠が減る!

――現在の法案が通ると、派遣社員にどのような変化があるのでしょうか。

佐々木亮弁護士(以下、佐々木弁護士):将来的に正社員を希望している派遣労働者に不利になります。

例えば事務の人手が欲しいA社が、派遣会社から事務の仕事でB子さんを2年受け入れたとします。そのあと同じ仕事を引き継いで、ハケンのC子さんが1年。A社は「派遣社員を継続して3年間受け入れた」ということになります。受け入れの上限は3年なので、さらに同様の事務仕事で人手が必要になったら、次は派遣ではなく、A社自らが社員を採用しなくてはならない。「派遣労働は臨時的・一時的な働き方」という原則があるからなんですね。

しかし、今回の改正法案が採択されたら、3年の上限が廃止されます。そうなると、A社としては「事務には人件費の安いハケンを使おう」と、これまで正社員の枠があったところをすべて派遣労働者に置き換えるということができるんです。

    誰トク? 少子化が進み社会が衰退

――「ハケンの枠が増えてラッキー!」ということではないのでしょうか。

佐々木弁護士:ハケンは収入が正社員に比べて低いですよね。現行法では「同種の業務を行う正社員と派遣社員の賃金水準の均衡を配慮」という一文がありますが、「配慮」ですので、やはり派遣社員は昇給せず、賞与・退職金も少ない。正社員が減少してハケンが主流になると、収入が少ないため家族を持つことが困難になったり、国としても税収入が減少して、社会全体が衰退することにつながります。

――ということは、労働者にはメリットがない法案なんですか?

佐々木弁護士:はっきり言って、ありません。得をするのは派遣業者と企業側です。派遣業者は派遣枠が増える、企業側は安く雇えていつでも派遣を打ち切れますから。派遣労働者は一生派遣、ということも起こりかねません。

    ドイツでは派遣社員が倍増。ワーキングプアが社会問題化

――過去にこのような法律を採用した国はあるんでしょうか。

佐々木弁護士:2002年にドイツでは「最長24か月の派遣期間制限」を撤廃したんです。すると2003年に33万人だった派遣労働者が2011年に88万人に倍増。ワーキングプアが社会問題化し、再度、18か月の上限を設けようという動きが出てきます。

佐々木弁護士のお話から、派遣法改正は当事者である“派遣社員”だけの問題ではなく、社会全体の問題ということがわかりました。現在、国会にて自民党と野党で激しい論争が繰り広げられています。今後どうなるのか、成り行きに注目しましょう。

●取材協力:旬報法律事務所
佐々木亮弁護士ブログ「弁護士 佐々木亮の労働ニュース

(編集部)

この記事を読んだ人は答えてね!
人が回答しています