ネット民が名誉棄損で訴えられる可能性

お笑い芸人のエド・はるみさんへの根拠のない誹謗中傷に対して法的措置を講じていくと、代理人弁護士が公表したことが報道された。ネットでの匿名の書き込みも対象になるので、一般のネットユーザーも名誉毀損で訴えられる可能性もある。

ひと昔前は、名誉毀損裁判は著名人や企業と週刊誌やテレビなどのマスコミの間で起きるものという印象があった。だが、ネットの普及で最近は一般人が名誉毀損裁判の被告となるケースも目立つようになってきた。

そこで、一般の私たちがネットの発言で、名誉毀損で訴えられる可能性についてみてみよう。

事実であっても名誉毀損になる場合も

まず、どういう場合に「名誉毀損」にあたるのか。

刑法230条第1項にはこうある。

「公然と事実を摘示し、人の名誉を毀損した者は、その事実の有無にかかわらず、3年以下の懲役若しくは禁錮又は50万円以下の罰金に処する」

「事実であっても名誉毀損になるの?」と感じる人もいるのではないか。名誉毀損裁判のニュースをみていると、「真実か否か」が焦点になっているからだ。

たとえば、今年の6月に東京地裁が出した判決をみてみよう。

『週刊文春』(平成24年9月20日号)で、当時の宮城県知事・東国原英夫氏は興味を持った女性職員を知事室に呼び出していたなどと報じた記事を、東国原氏が訴えた裁判だ。東京地裁は記事の一部について「裏付け取材が不十分で、内容が真実だと信じる証拠はない」とし、東国原氏の社会的評価を低下させたとして名誉毀損を認めている。

ここでは「真実か否か」が焦点となっている。仮に『週刊文春』が真実だと裁判所を説得できるデータを出せば名誉毀損と認めらない。

著名人に関する報道は名誉毀損にならないことも

名誉毀損では、先に書いた要件にあてはまっても、言論の自由の観点から、公共性、公益性のある事項については、真実性が証明されれば免責される(刑法230条の2)。つまり、週刊誌などが著名人について報道するのは、社会全般の利益になるとされる。

県知事が興味をもった女性職員を呼び出していたことが真実であれば、セクハラ、パワハラを告発する報道は社会全般にとって意味があるからだ。この場合は裁判の争点は「真実か否か」になる。だが、一般人の情報を不特定多数に対して伝えても、公共性はまず認められないので、事実であっても名誉毀損になるのだ。

SNSでの発言が名誉毀損に?

「同級生が整形をしている」とフェイスブックに書き込むと名誉毀損になる?

こんなケースの場合はどうなるのか。

女子校の同窓会に出席したサトウさんは再会した同級生スズキさんの顔が全然変わっていることに驚いた。スズキさんは看護師として美容クリニックで働いているという。サトウさんはフェイスブックで「スズキは整形していた! 昔と顔が全然違う」と書き込んで、友達限定で公開した。これを知ったスズキさんがサトウさんを「名誉毀損で訴える」ことはできるのだろうか。ポイントはフェイスブックなど公開範囲を限定できるSNSでの発言は「公然(不特定多数または多数の人が認識しえる状態)」となりうるのか、というところだ。

立川ニアレスト法律事務所の米村哲生弁護士はこう答える。

「フェイスブックなどのSNSですと、友達の数自体が多かったり、見知らぬ相手とも気軽に友達になっているケースもあります。友達限定あっても、そのような状態なら“公然”と言えるでしょう。また、公開するメンバーがごく少人数で相手が限られていても、そこから他の人たちに広く伝わっていく可能性がある場合には、“公然”と考えてよいでしょう」

フェイスブックやツイッター、LINEなども「公然」と考えて発言は慎重にしたいところだ。

(編集部)

●取材協力 米村哲生弁護士
弁護士法人TNLAW支所立川ニアレスト法律事務所

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