女性活動家が語る、いま日本女性がやるべきこと

パキスタンの激しい女性差別に立ち向かう女性活動家・ルクシャンダ・ナズさんにインタビュー。強い信念を持った女性運動への取り組みを通して、日本女性がつらい現状を打破していくためのヒントを探ってきました。


【前半はコチラ】女性の価値が”男性の半分”しかない国 現地の女性活動家が語る、パキスタンのリアル

社会を変えるためには、男性との協力が不可欠

――今後のルクシャンダさんの活動の目的はなんですか?

ルクシャンダ:
私が活動を始めてから20年、非常に活動的に過ごしてきました。そして今は2年間、勉学のため、個人的な静養期間としてイギリスにいますが、再び働く時だと感じています。パキスタンに戻ったら、若者たちと働きたいと思っています。フェミニストや人権活動家が少なくなっているので、若者たちに手を伸ばすことが必要なのです。そして、将来のリーダーを育てることが、女性も男性も両方です。なぜなら、男性なくして女性運動は成功しないと考えているからです。

女性がもし社会を変えたいと思うのなら、もし性別の問題について敏感な社会を作りたいと思ったら、男性ともいっしょに働くべきです。なぜなら、最終的には、オフィスでは男性の隣に座り、家庭では共に生活するのです。男性と女性をわけることはできないのです。

――男性と、どのように協力関係を築いていきたいと考えていますか?

ルクシャンダ:最近では私は「女性に対する暴力」という名前のグループの一員ですが、私が保護シェルターを始めたときにラジオで流した「被害者は保護シェルターに来るべきだ」という広告は、男性メンバーの協力があって放送できました。社会では、男性から「この男は女に暴力を振るっている」という証言があったほうが、女性だけで同じことをいうよりも、多くの人に受け入れられやすいという面があります。そういう理由で私は男性をメンバーに数人加えています。

もちろん、男性を取り込むことでネガティブな影響もあります。最近も、大きな女性の組織が男性のみで運営されていますが、それは男性が上層部の女性の割合を減らしたからです。私たちは、そうしたパキスタンのネガティブな側面に対しても戦っています。

――なぜパキスタン男性は“女性差別的”な振る舞いをしてしまうのでしょうか?

ルクシャンダ:「自分の女」が自分の意思に反することに我慢できない、という個人的なエゴが、「女性」が「男性」の意思に反することは不道徳である、という価値観を作ったのかもしれません。まだ多くの地域で「男性が女性をコントロールできなくなるから、女性に高等教育を受けさせたくない」という考え方が、男性たちにとって妥当なものとされています。

もうひとつは、社会的な圧力です。たとえ進歩的な考え方をする男性がいても、保守的で家父長的なコミュニティの中で女性の権利について言及することは非常に難しいのです。イスラム過激派に「反イスラム的だ」として狙われる危険性もあります。

日本女性はDVを受けても逃げられるだけ恵まれている

――日本滞在は短かったと思いますが、日本女性についてどう感じましたか?

ルクシャンダ:徳島で講演を行なったとき、3人の女性で経営しているレストランがあることに驚いて、私は友達に言いました。

「パキスタンだと、こんなふうに3人の女性がレストランをやっていたとしたら、やってきた男性客にその女性たちが敬意を払われることは決してないわ」

なぜなら男性との交流のある場で女性が働くと、その女性は道徳的に健全でないとみなされて、尊敬されないのです。日本の女性が享受しているのは、レストランで働こうが、他の公共の場で働こうが、人々は彼らを不道徳だとは思わないことです。日本女性はパキスタン女性に比べ自由な活動スペースがある。経済的にも強く、DV被害を受けても、家を出る自由があります。それはパキスタン女性にはない自由です。経済的に自立しておらず、また、離婚は社会にとって不名誉なことです。ですから良くない結婚生活にしがみつかざるを得ないのです。

日本女性の地位もまだ”十分”ではない

――日本女性の基本的な人権は守られているので、パキスタンのように深刻に女性の地位向上に取り組む必要性を感じることは少ないと思います。

ルクシャンダ:日本女性の人権は守られているという点ではあなたに賛成です。でも、他の権利はどうでしょう。日本や西洋の基本的人権は、現代の産業が、女性が公に活動することを必要としたからだと考えています。女性の家庭生活は、日本だろうと西洋だろうと同じです。社会と家庭において、二つの負担を背負っているのです。だから日本の女性は基本的人権があるからといって「それでいい」とは言えません。

日本女性ももっと政策決定の場に参加しなければ。なぜなら世界中にまだ差別は存在するからです。日本女性の状況が良いということは疑いようがないですが、日本女性の地位に関してはもっと努力が必要です。

――パキスタンの女性差別について、日本の女性ができることはありますか?

ルクシャンダ:一つは、パキスタンの人々ともっと交流を持って欲しいということです。パキスタンに来ていただければ、日本女性の温和な文化、礼儀正しさ、などがパキスタンの人々に伝わると思います。もう一つは、日本政府はパキスタンに資金援助をしていますが、その使い道を納税者として監視することができます。そのお金がどのように女性の地位向上に役に立っているのか尋ねることができます。三つ目は、国連で重要な地位にある先進国として、日本は、地域の平和のために、より大きな役割を果たすことができます。日本の女性ができることはたくさんありますよ。

●ルクシャンダ・ナズ
1966年、パキスタンでも伝統的な部族社会が強いハイバル・パフトゥンハー州に生まれる。ペシャーワル大学の法学院を卒業し、弁護士実務の傍ら女性の権利に取り組み始める。1993年から、現地NGOで女性のためのプロジェクト責任者として活躍した。同時に、名誉殺人を禁止する法を実現する運動にも積極的に参加。2010年9月からUN Women(国連女性機関)パキスタン委員会で女性のためのプロジェクトを推進。
現在、イギリスのコベントリー大学で国際法を勉強中